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旧友

 朝の騒動が終わり、俺は遅めの朝食を食べている。

 用意された朝食を食べていると、マリアが話しかけて来た。


「そう言えば琥珀様、私達がよく買っているパン屋さんが雑誌に載っているのを知っていますか?」

「え、知らない。最近のやつ?」

「はい、この前発売された物です。拝見されますか?」

「うん、見たい見たい」


 マリアは俺の言葉を聞き席を立ち、少ししてから戻って来た。

 その手には一冊の本があり、俺の所まで来てその本を差し出してくる。


 本のタイトルは"ぐるめぐり"グルメ雑誌として結構有名な雑誌であった。ありがとうと感謝の言葉を述べながら、本を受け取り表紙を改めて見ると、見出しに今人気のパン屋二十選とあった。

 ああ、だから選ばれたのかと感心しながらページをパラパラと捲ると件のページが見つかった。


 そこには良い顔をしてカメラマン目線で写っている店員さんがいた。擬音をつけるとすれば"キラン!" だろうか。決め顔というヤツである。その写真の下に書かれている記事を読んで行くと簡単なお店の紹介と店員さんのインタビューが載っていた。


『このお店で作られているパンは材料を厳選しているとか?』

『全て国産の材料で、その中からパンに最適な材料を選びました』


 最初はこのような真面目な話をしていたのだが、徐々に話がおかしな方向へ向かい出す。


『そう言えば、こちらのお店は美少年が来店するとか?』

『ええ、来ますね』

『どの時間帯に美少年は来店されるのですか?』

『それは美少年の迷惑になるので言う事は出来ませんね』


 ……何でパン屋の記事で美少年って単語が何度も出てくるんだよ。バカじゃ無いのかコイツら真面目にやれよ! しかし俺の思いとは別に話は更に可笑しな方へ行く。


『それは残念です。美少年を惹き付ける魅力は、やはり美味しいパンでしょうか?』

『そうですね。味もそうですが、このお店のパンを食べた人は男性と縁ができると評判なので、もしかすると不思議な力が美少年を引き寄せているのかもしれません』

『……このお店のパンを食べると男性とお近ずきになれる……、と

 ?』

『いえいえ、そういう話もあると言うことです。まぁ縁起物みたいな物ですね。ただそう言う人が多いと言うだけで……』

『……多い』


 おかしいな……、後半パンの話じゃなくオカルトの話になってる。まるで新聞に入ってる幸運アクセサリーのチラシみたいな胡散臭さである。


 俺はパタンと本を閉じて、本を渡してきたマリアに言う。


「これは……、ダメだ」

「しかし琥珀様、そのパン屋今迄も繁盛してましたが、雑誌に載ってから一段と人気になっていますよ」


 ……そう言えば学校から帰る時、行列を見たことがあるな。あんまり気にしなかったけど……。俺が買うのはランニングの時だから朝早いので、お客さんはあんまりいなかった。

 でも、そんなに人気が出ているんだったら開店前にも行列が出来るかも……。


 確かに俺は美少年だが、集まっている人の期待値を越えるかわからない。もしも人が集まっているなか買いに行ってガッカリされたら……、なんて事が頭に浮かぶ。……とても腹が立つな!


 しかし悔しい事にここのパンは確かに美味しいのだ。店員がちょっとアレだが……。




 今日は朝のランニングをしていないので、ご飯を食べた後散歩をすることにした。

 春の心地よい気温と時折吹く風がとても気持ちが良い。俺は春を感じながら近くにある自然公園を目指して歩いていく。その公園は自然公園と言うだけあって自然が多く遊歩道も整備されているので散歩するにはうってつけなのである。


 しかしその公園に向かう途中で声を掛けられる。


「秦野君!」


 その声は珍しいことに女性の声では無かった、俺は声のした方へ顔を向けるとそこには見知った顔があった。


「久しぶり、前頭。……少し痩せたな」


 そこにいたのは中学で一緒だった前頭その人だった。卒業してから会っていないとは言え、前頭は以前とは違い背が伸びており、ふっくらしていた身体もスッと細くなっていた。


「そうかな? あっ! でも背は伸びたね」

「卒業してから、まだそんなに時間が経っていないのに結構伸びたよな?」

「うん、好き嫌いなくしたのが良かったのかも」

「へぇ、嫌いな物克服したのか?」

「克服って言うか、残してるの見つかったら先輩に怒られるからね」

「ああ……、清明高校は指導係として先輩が付くんだったよな」

「うん、それでお弁当とか一緒に食べるんだけど、嫌いな物残してるの見つかったら、こう……」


 前頭はそう言いながら、軽く拳を握ると顔の前に持ってきて、軽く振る動作をする。


「残したら駄目じゃないかって、おでこをこつんと叩かれるんだよ。そんな心配をしてくれる先輩を見てたら嫌いな物でも頑張って食べようって気持ちになってきて……、それで食べるようになったって感じかな」


 その話の後も、その先輩を巡って同級生とケンカしたとか、勉強を教えて貰ったとか色々話を聞いた。

 俺は嬉しそうに高校の事を話す前頭を見て、清明高校に行かなくて心底良かったと安堵した。

 正直、俺の脳内では前頭が語る内容は地獄絵図となっている。

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[気になる点] >お近ずき お近づき
[気になる点] >カメラマン目線 えーと、これだと“カメラマンの目線”ってことになりませんか 普通は「カメラ目線」では? あーでも、“カメラマンからの被写体を見る目線で撮った写真”と考えれば間違いで…
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