ある朝の日
天気が良い。雲一つもない晴天である。
心地よい風が吹き抜け、気持ちの良い朝だ。
俺がいつもの様に学校への道のりを歩いていると、今日は途中で声を掛けられた。その人物は扇子をバサッと広げて、俺に話しかけてきた。
「王子様、おはようございますですわ」
今日も金髪巻髪が綺麗にセットされている舞澄さんである。
……しかしですわの使い方おかしくないか?
「おはよう舞澄さん。扇子格好いいね」
「オホホ、そう言って頂けるととても嬉しいですわ。私もとても気に入ってますの」
「うん、とても似合ってると思うよ」
「オホッ! オホホ、オホホホホ!」
俺の言葉に気をよくしたのか、顔を赤くしながら高笑いを始める。
しかし、今は登校途中なので周りにも絢爛の生徒が大勢いる。となると自然の摂理ですごく注目が集まる。
まぁ何が言いたいかと言うと、恥ずかしいから止めろと言うことなんだが……。
「あの、舞澄さ……」
「オホッ! ゴフッ!」
俺が高笑いをしている舞澄さんを止めようとしたら、後ろから何かが当たったらしく、高笑いが止まり、前に転びかけていた。
「おっはよーございまーす」
キャハ! っとポーズを取りながら良い笑顔で、朝の挨拶をしてきたのは八千草さんである。可愛いポーズで挨拶してくるのは良いが、この子高笑いをしていた舞澄さんにタックル決めてからの、この態度だから恐ろしい限りである。
しかし、朝から舞澄さんと八千草さん、濃い面子である。例えるなら、朝食にステーキと焼き肉を食べる様な感じだろうか……。胃がもたれそうと思うのは俺の精神年齢故か……。しかし、良い笑顔で挨拶されたのだから、こちらも返さないといけないだろう! 俺も負けじと良い笑顔で返す。
「おはよう、八千草さん。今日も元気だね」
ニコリと笑顔を決める。その笑顔を見た八千草さんは、更に笑顔を輝かし嬉しそうにする。
「朝から秦野さんと会えたからですよ~」
と言いながら隣に並び、登校モードに入る。がしかし、ここにはもう一人いるのである。
「ちょっとお待ちなさい! 人にタックルぶちかましておきながら、何しれっと登校しようとしてますの!」
……ぶちかます。おおよそお嬢様が使う言葉では無い。
「え~、だって変な高笑いしてたから、秦野さんが変質者に絡まれてると思ったんだもん」
美羽悪くないもん。と八千草さんは言い放つ。……こちらはこちらで欠片も悪びれて無い。
その言葉を聞いた舞澄さんは、当然怒り出す。
「まぁまぁ! なんて言い草でしょう! そんな子供みたいな事を言っているから、胸もお尻もペタンなのですわ!」
「かっち~ん」
口に出さなくても良い。
「せっかく、二人っきりで一緒に登校できるはずでしたのに」
「それは美羽のセリフだよ! あのまま静かにしてくれれば良かったのに」
「む~」
「ム~」
二人が頬を膨らませて言い争いを始め、注目がさらに集まってきた。俺の耳には周囲の人の話し声が聞こえてきた。
「あの男の子を取り合ってるみたいよ」
「なんでも一緒に登校できるのは一人だけみたい」
「えっ? つまりあの二人はここでお互いを亡き者にしようとしてるって事?」
「つまり、あの二人を倒したら私も、あの男の子と登校できると言うことなの?」
ゴクリと喉が鳴る音が聞こえてくる。
なんだか周囲の人たちの気配がおかしくなってきた。なんと言うかここだけ修羅の国っぽい雰囲気だ。
すがすがしい朝だったはずなのに……。
どこでおかしくなったのだろうか……? いや、原因は目の前にいる二人と言うのはわかっているのだが。とにかく、この場から離れよう。
「二人とも、そろそろ行かないと遅刻するよ」
俺はそう声を掛け、学校へ向け歩き出す。
「あっ、待ってくださ~い。美羽も行きます~」
「えっ! ちょっ! お待ちになって下さいませ!」
俺が歩き始めたのを見て、二人とも言い争いを即座に止め、隣に並んで一緒に登校する。そうすると、先程までの言い争いが嘘の様に仲良く話し出す。そして、その話題は昨夜のドラマの話である。
「昨日のドラマ見ましたかー」
「はい、私小説も大好きなのでとても楽しみにしてましたわ。」
「面白かったですよねー、次の放送も楽しみですー」
「……」
やはり、あれを微妙だと思っているのは俺だけか……。
二人は次回はこの俳優が出てドキドキだの、ドラマオリジナルのキャラが出てくる予定だのと、キャッキャッと話が弾んでいる。そんな話をしながら登校していると、舞澄さんが部活を決めたと言い出した。
「へー、何にしたの?」
「演劇部ですわ!」
この子絶対ドラマに影響受けただろう……。
大丈夫だろうか? 夢は女優とか言い出さないかな……。
「夢は大女優ですわ!」
そう言いながら、グッと拳を握りしめる。
大がついてしまった……。
そんな舞澄さんをホーという顔で見ていた八千草さんは、納得した様な声を出し、
「じゃあ、美羽も演劇部に入部します」
なんか楽しそうだし、と言い出した。
……うん、君は演技うまそうだし大丈夫だとおもうよ。




