肝試し
詩乃さんが海で言っていた通り、肝試しをするため俺達は今、山道の入り口に集まってる。しかし、この山は、なだらかな山であり、良くハイキングやトレッキングで楽しまれているらしい。実際に道を見ると整備されているらしく、獣道を歩くような物ではない。
まぁ夜だしそんな整備もされていないコースを歩いたら、遭難する危険もあるだろうし、そんな無茶なコースは選ばないか……。俺は少しホッとしたが、いくら整備されていると言っても、夜の山は暗く不気味な雰囲気を漂わせている。実際に幽霊が出ると聞いてしまったからか、より一層、不穏な印象を抱いてしまう。
とは言え、とは言えだ……。幽霊に怖がる人、これは男性も女性も等しく怖がってもおかしくない。女性陣もワイワイキャピキャピと騒いで、いかにも怖くありませんよ。と言った体で過ごしているがチラチラと山の奥を見ている事から怖い気持ちを我慢しているのだろう。
今の彼女達の心理としては、男性の……今の場合は俺だが、に幽霊に怖がるような情けない姿を見せないように頑張っているのだろう。……その気持ちは良くわかる。誰だって好意を抱いている人の前ではかっこを付けたくなるものだ。
俺も前世は幽霊なんて信じていなかったが、現実問題として俺が前世の記憶を取り戻したのだから、魂なんていうものがあって、幽霊が居たとしてもおかしくはないだろう。……そう考えると俺と幽霊もそう違いが無いのでは無かろうか? などと少し現実逃避をしているが、今現在俺が一番怖いのは、暗く不気味な山でも、そこに現れると言われている幽霊でもない。
……俺が今一番怖いのは、詩乃さんが呼んだ霊能者達である。東華院家が呼んだ人達だ、やはりオカルトの世界では一家言ある有名な人達なのだろう。俺はチラリ集められた霊能者達を見てすぐに目を逸らした。……どいつもこいつも一目見ただけでヤバい人間だと言うのがわかる。前世のように普通の格好をして霊能力者ですと言う人よりも、よっぽど雰囲気がある。
ある霊能力者は尼さんの格好をしている。それだけ見ると普通の格好だと思えるが彼女は顔の全てを黒い布でグルグル巻きにしている。……あなたそれ、前見えてませんよね? 前も見えてないのに幽霊は見えるんですね? 勉強になります。でもキチンと息できていますか? 俺はそれが心配です。
尼さんの少し後ろに立っている女性は、チャイナ服を着ている美女だ。彼女の服は普通だ。まぁ山に来る服装としては不適切かも知れないが、まだ一般的な服装である。……しかしそんな彼女に横にはお札を額に張った顔色が悪い女性が微動だにせずに立っているのだ。しかもそれが五体もいる。超怖い。お札を貼った顔色の悪い人間……俺知ってるよ、だって懐かしの映画特集で見たことあるもん。それキョンシーだよね? ぶっちゃけ、それ死体ですよね? 死体を連れ歩く女性……マジヤバい。と言うかどこから調達して来たんですかね? この現代で。
そして最後の一人が一番ヤバい。黒い服を着ている女性である。髪が長くその顔は見えない。そんな彼女は一体の西洋人形を連れており、常にその人形に話しかけている。ブツブツブツブツと絶え間なく話しかけているのである。……なにアレ超怖い。なにかヤバい薬でもやっているのではなかろうか? と言うか彼女はアレで日常生活をキチンと遅れているのだろうか? 正直、幽霊より彼女達と居る方が呪われそうだ。
「琥珀君」
俺が心中で霊能者品評をしていると、詩乃さんが話しかけて来た。
「やっぱり、夜の山って少し怖いよね? でも肝試しっていっても、そんなに深い場所までは行かないから。はいこれ地図」
「ありがとう」
詩乃さんはそう言うと、簡単なイラストが描かれた地図を渡してくれた。お礼を言いそれに目を落とすと、確かにそんな長い距離を歩く訳では無さそうだ。山道を考慮しても往復三十分ぐらいのコースだろう。
「最初は全員で行くつもりだったんだけど、それだと大人数になりすぎるから、三つのグループに分けて行く事になったからね」
「へー」
「後で正真正銘、イカサマ無しのくじ引きして、グループを分けるからね」
……何故それほどイカサマ無しを強調するのか? 俺は疑問に思ったが取り敢えず頷いておく。
「うんわかったよ」
「あ、それと呼んだ霊能者さん達にはそれぞれのグループに一人ついて行って貰うから、安心してね?」
詩乃さんはフフッと笑い、これだと肝試しの意味ないかな? なんて笑った。俺はそんな詩乃さんの言葉を聞き、もう一度、霊能者さん達を見る。
……前が見えているかわからない尼さんに、死体をつれた美女、それからヤバい薬をやってそうな人。
どうしよう、どの人と一緒に行っても超怖い。
だから俺は詩乃さんに言ってあげた。
「そんなことないよ。超怖いから」




