勝利2
戦闘が終わり、襲撃者達が帰って行く。その姿を日向は静かに見送る。
「嵐の様な夜だったわね……」
隣で同じ様に去っていく襲撃者を見ていた仲間の言葉に日向は同意する。実際に争っていた時間は長くなかったはずだ。それを確認する為、時計を見ると、ここで夜の番をしていた仲間と話していた時から三十分も経って無い。
「夜間の襲撃も考えてはいたが、本当に仕掛けてくるグループがあるとは思わんかったのぅ……」
「ホントにねぇ。今まで男の子の生活リズムって知らなかったけど、王様、早寝早起きだったしねー」
まさにその通りだ。テレビの情報だと十時だったが自分の所の男子を考えるとあながち間違いでは無かったかも、と思っていたが夜中に元気一杯で仕掛けてくる。秦野君を見るとやはり、自分が見た番組は怪しい物だと再度考え直した。
「とは言え、もう負けてしまったからのぅ。後は負かされた奴等を応援するか、負けを祈るかのどちらかじゃが」
「私は応援するよ!」
「お、おぅそうか……。なんでか気合い入っとるのぅ……なんか有ったか?」
「!? 何もないよ!」
「……なんでそんな焦っとるんじゃ」
「そ、そんな事より! 王様解放してベッドに運ばなきゃ!」
「そうじゃのう。それにしても見事に簀巻きにされとるなぁ」
自分の所の王様がこんな姿にされているのを見て、自分達の不甲斐なさを感じると共に、男子がこうも無防備な姿を晒していると言う事実に少し嗜虐心をそそられる。日向はそんな自分の心を追い払う様に頭をフルフルと振り、気分を変える。
「取り敢えず縄を解くか……って何しとるんじゃ?」
煩悩を払い、行動に移そうかと仲間を見たら、そこにはスマホを哀れな男子に向けている女子がいた。
「……いやこんな簀巻きにされている男子なんて珍しいから、……つい」
「はぁ、まったく何をしとるんか……」
………………
「……まぁせっかくじゃしのぅ」
取り敢えず男子王の記念にと日向も簀巻きの男子にスマホを向けた。
◆◆◆◆◆
「とうちゃーく!」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
皆の元気な声がコテージに響く。勝負に勝った為かみんな少し興奮しているみたいだ。恐らく先程の戦闘の余韻が残っているのだろう。
「おかえりー」
「おかえりなさい。……どうだったと聞く迄も無いようですわね」
留守番役の二人が出迎えてくれる。二人は俺達の明るい表情を見て勝利したとわかり喜んでいる。
「敵さんは手強かったですの?」
「いやー装置前にいるって子は強かったねー」
「本当に……」
柚香さんがホゥと息をつきながら感慨深げに感想を言う。
「こちらの攻撃をそらしながら、隙を見つけては腕を折りにくるから大変でした」
「少しづつ削って行かなかったら、こっちもケガしてたよね」
「私の所も手練れでした。……まぁ約一名、再戦して切りたい人ができましたが……」
チャキチャキと鯉口を弄るみのりさんには触れずに置く。
「まぁ何にせよ。こうしてみんな無事に戻ってこれた上に宝石も手に入れる事ができましたー!」
俺がポケットから宝石を取り出して皆に見せると、オーっと言う声と共にパチパチと拍手がなる。俺はイソイソと装置の前に移動する。
「じゃあこれを装置にセットするね」
俺は手に入れたばかりの宝石を空いている窪みに嵌め込む。宝石はキラリと光り、それと連動するようにモニターに移っていた地図の一部の色が塗り変わる。
「こういう風に変わっていくんだね」
「過半数の六個を手に入れたら、後は守ったら勝てるけど……」
「まぁ、そうなったら余所は組んでこっちを落としに来ますよねー」
「どちらにせよミーティングで話した通り、私達は全部倒して琥珀君を王様にするんだから、見敵必殺で行こう!」
「……凄い物騒ですわね。もっと華麗に……サーチアンドデストロイと言うべきでは?」
同じじゃねぇか……!
「朝起きて、地図が変わってたら他のグループ驚くでしょうねー」
「そうですね。これで他のグループも派手に動きだしたら面白いですが……」
「やっぱり一つだけじゃ、まだ余所も動かないかな?」
「……脅威だとは感じないだろうね」
女の子達がこれからの戦局予想は、他のグループはまだ動かないである。そこで……と俺は昼間、手に入れていた宝石を皆に見せる。
「うんうん、俺もそう思う。だから昼間にもう一つ手に入れておいたよ」
もう一つの宝石を見せた時の皆の顔は、揃って不思議そうな顔をしていた。その後、俺が単独で他のグループに殴り込みを掛けた事がわかると正座させられ一人で危険な事はやめろと叱られた。
オノレ眼鏡君め……! 時限式の罠を仕掛けて置くとはなんて奴だ!
あっ、ここカットでお願いします。




