動く者と休む者
「……足がとても痛い」
「もう自業自得だよ。一人で敵陣に乗り込むなんて」
「でもやっぱ秦野さんは凄いですわね! 一人で勝利を奪ってくるなんて!」
「……話せばわかってくれる人だったよ」
話した後に起きた出来事は不幸な事故だったので割愛する。結果として現在、宝石三つそれに伴いモニターには同色の地域が三つある。他の陣地の奴が朝起きてこれを見たら、さぞかし面白いリアクションをしてくれるだろう。
様子見など猪口才な事を考えるから出し抜かれる羽目になるのだ。今世の男達の中でもプライドが高そうな奴等だ。自分を差し置いて目立つ輩は許せないだろうな。
「さすがにこれだと、余所も動いてくるね」
「でも俺達には攻撃してこないと思うよ」
「そうですね。私達は左右の敵を倒したので他の陣地とは少し距離がありますから」
「その私達に仕掛けようとすると、逆に自分達の陣地が遠くなる。……その隙を近場の敵に狙われたら厳しいもんね」
「うん。だから明日は休息と情報収集に当てようと思う」
つまり、この安全な日を使い敵方の戦力把握と体力回復に努めようと言う事だ。……結局の所、この男子王で重要な所は男子と男子の戦いにある。女子の戦闘力は高いが彼女達は男子に物理的に攻撃を加える事は無いと言える。要は賑やかしなのだ女子達は、男子十人では足りないテレビ的な盛り上げ役と言う事だ。
仮にみのりさんに筋肉バカの首を取って来て、とお願いしたら特攻して女子達を蹴散らしたとしても、大空寺にその刀を振るえるかと言うと断言できない。仮にできたとしても女子が男子相手に暴力を振るうなど、例えそう言う趣旨だとしても視聴者からクレームが来る。
だから、このか弱い俺が筋肉バカや太陽王、副会長の相手をしなければいけないと言う事だ。まったく考えただけで気が重くなる。もうこの際だから、全員腹でも壊してリタイヤしてくれないかな。
……食事にその辺のキノコ仕込むとか? イヤイヤ、さすがに無理か。明日お互いに潰し合ってくれないかなぁ……あの変な人達……。
◆◆◆◆◆
「ウーム……」
男子王決定戦、二日目の朝を迎えた大空寺豪はあまりに平穏な時を過ごした事に気が抜けていた。
(夜に襲撃でもあると思っていたが何もなかったなぁ。……じゃあ仕方ない、こっちから行くかぁ)
誰も戦わないのなら自分が火種を起こす、と考え豪は凶悪な笑みを浮かべた。それで他の参加者がやる気になれば良い、ならなければその程度の器だと一つ一つ潰して行くだけだ。何処から潰して行くか考えながらリビングに入ると、女子達の様子がおかしい事に気が付いた。
「ううん? 何かあったかぁ?」
「あっ、だ、大空寺君おはよう」
豪が来た事に気が付いた女子達が朝の挨拶をしてくる。しかし逆に言えば先程まで大空寺が来た事にすら気付いて居なかった。つまりそれだけの事が起きていたと言う事である。
豪はふと、リビングに設置されているモニターを見、その目を大きく見開いた。
「これは……どういう事だ……」
モニターには既に二組のグループが墜ちた事が示されていた。
「そ、それが……夜中に急に……」
「夜襲、もしくは昼に手に入れて宝石を夜中に嵌めたか……」
「どちらにせよ遅れをとったな」
女子達が推測を立てているのを聞きながら、豪は自分が笑みが浮かんでいるのに気が付いた。
「……なるほど……なるほどなぁ」
「だ、大空寺君……?」
「大丈夫?」
「心配しないで下さい。まだ勝負はこれからです!」
クックックッと面白いそうに、しかし凶悪な笑みを浮かべる大空寺に彼のメンバーは心配そうに声を掛ける。
「ああ心配するな。いやなに、この俺が待ち構えるなんて合わない事をしたからこうして無様に驚く事になった、と思っただけだ」
「合わないなんてそんな! 王者はドッシリと構えていても問題は無いです!」
メンバーから擁護の声が出るが、豪にはこれをやった奴の考えがわかった。
「これをやった奴は、俺を……いや、俺を含めての参加者をバカにしてんだ」
お前達は巣で縮こまった臆病者だと。王には相応しく無いと……!
「ハハハッ! 良いじゃねえか乗ってやろう! 俺をやる気にさせたんだ思い知らせてやるよぉ! おい、早速だが出撃るぞ手始めに近場の奴を潰す」
大笑いしながら豪はメンバーに襲撃の準備をさせる。彼のメンバーはその最初は戸惑ったが、直ぐに彼の意思を受け取った様に獰猛な笑みを浮かべ準備を始めた。
他の参加者も豪と同じ様に現在の戦況を把握した。その上で動く者、それでも動かない者に別れる事になる。しかし、動く者が増えたと言う事は抗争が激化すると言う事である。そしてその逆に、この状況を作り出した者は『二日目はゆっくりしよう』と考えてはいる事は彼等には知られていない。




