LIV.ここにいるはずのない友達
「残ったみんなも教えてね。お名前も、好きなことも、嫌いなことも……全部」
〈魔王〉はうふふ、と声を上げて微笑んだ。
それをルネティアが睨む。
「貴女に何を教えることがあるのです?」
「えぇ~、皆さんのこと全部教えてくださればいいのですよ? 貴女はまずお名前から……」
「教えたくありませんね」
面倒くさそうに「ハー」とため息をはいたルネティアは〈光明の英雄〉を一瞥してから言う。
「アンジェリーネ様はすぐに下がってください! ベティー、お願いします!」
ルネティアの指示に、ベアトリスは即座に動いた。ルネティアの後ろで守られている〈光明の英雄〉を連れて離れて行った。
「あぁ~、なるほど。お二人は光の属性も持っているのね。だから離れる。賢明な判断だわ。あの子は最後の方に出てきちゃってたものね。無力なのに」
〈魔王〉はクスリと笑う。
(まぁまぁ無防備だったベアトリスや〈光明の英雄〉様を何故見逃したんだ……?)
アダは疑問に思いつつも、一旦なぎ払って〈魔王〉に集中する。
今、ここにいるのはアダ、ルネティア、フェリシアン、シモン、スチュアートだ。
(訓練でもよくあった組み合わせだ)
多忙な〈光明の英雄〉やトイフェルは参加日数が少なかったし、ベアトリスは治癒士として動く予定だったので、攻撃系の訓練の参加は少ない。
「B!」
それだけを、スチュアートが叫ぶ。全員が一斉に魔法を発動させた。今の状況、〈魔王〉を全員が取り囲んでいるのだ。この状況に落とし込めるのはこれが最後かもしれない。
(〈魔王〉は全属性。逆を言えば、全部に弱い)
「カルス・ブローヴ」
「シャル・フォーマカードゥ!」
「カルス・ゲルティン」
「シャル・ダーカニール!」
「ウィク・ドゥルーエノ」
ルネティアが風の刃を。アダが業火を。フェリシアンが岩石を。シモンが深淵を。スチュアートが疾雷を。
全員の攻撃が放たれ、爆発が起きる。
しばらくして、砂埃が収まると、一人の少女の姿が見える。
「今のは効いたわぁ~。防御魔法を使わなきゃならないくらいには」
うふふ、と声を上げて〈魔王〉は笑う。
(くそっ、やっぱ強すぎるだろ!)
そして、ゆったり手を空高くにあげる。
〈魔王〉を含め、魔族や魔獣は詠唱なしで魔法が使えるのだ。少しでも兆候があったら逃げなければならない。
「マジェディっ!」
アダとフェリシアンは一緒に防御魔法の結界を前方に張った。
すると、黒い雷が〈魔王〉を中心に周囲に広がった。
「ピルツィー」
フェリシアンが即座に感電を防ぐために、土の量を増やした。多分、絶縁体である砂だったのだろう。
全て防ぎきれたのを確認して、アダは防御魔法を解除する。
「A!」
アダはそう叫ぶ。アダとフェリシアンの共同作戦だ。
「カルス・ゲルティン!」
「テペラドゥーラ!」
フェリシアンは小さい岩石をつくり、アダはその岩たちの温度を超高温に上げる。
そして、そこからフェリシアンが岩石を〈魔王〉に高速で向かわせ、〈魔王〉に当たった。
(よしっ)
肌を注視すると、火傷のような跡がついている。そこから血が垂れた。
「痛い……ついでに熱いわねぇ。でも、好きよ。魔法を協力して組み合わせる。素晴らしいです」
〈魔王〉は鮮血色の猫のような目を細めて、笑う。
「うーん、でも、気になることがあるのよねぇ。やっぱりもっと聞きたいわぁ。じゃあ、ちょっと失礼しま~す」
ニコッと笑った〈魔王〉はジャンプするように飛んで行った。
(あんのっ……!!)
恐らくだが、ベアトリスや〈光明の英雄〉のところに向かったのだろう。〈魔王〉は〈光明の英雄〉に異常に興味を持っていたので、目的は彼女だろうか。
「行くぞ! フェリシアン」
「うん」
フェリシアンと共に、〈光明の英雄〉の元に向かおうとしたとき。
「アダっ」
「え」
聞き慣れた声が聞こえた。ここにいるはずがないのに。
「レミリア……!?」
そこに振り向けば、そこにはレミリアとベアトリス、後ろにはミーナがいる。
(な、何この組み合わせ……)
初めて見る組み合わせにアダは混乱した。




