XLIX.阻む者 ルネティア視点
短めです。
(ついに、決戦ですか……)
前回のいつ、結界が壊されるか分からなかった状況と違い、今回は明後日の今頃には戦っていることが決まっている。
ルネティアは両親や師匠のような関係だったヤトールを思い出した。
(絶対、仇は取ります、お父様、お母様、ヤトール様)
ボーッとしていると、目の前の机に現れたのは、掌サイズの動物――アレクシアだ。
『ねぇ、ルネ。大丈夫?』
「多分ね」
『何? その不安になる答え』
「知らないわ」
これ見よがしに、アレクシアはため息をつく。
『絶対、死ぬのだけは避けてよね』
「なんで」
『人間はね、生きてさえいれば勝ちなのよ』
「死んだら?」
『全部が全部、負けだとは言わないわ。でも、悲しむ人がいるでしょう?』
「そうかな」
『いつまでも自己評価が低いわね、我が主ながら』
またため息をつくアレクシア。
『……だから、お願い。自己犠牲なんて、しちゃ駄目。あたしが悲しむわ。……絶対、怒るんだからね』
「……そ」
すると――
「ルネ! 封印方向から救援信号が!」
「向こうで、何かあったのかもしれぬ!」
ルネティアの部屋に来たのは、シモンとスチュアートだった。
(救援信号……)
「分かりました。すぐ行きます」
屋敷にいたルネティア、アンジェリーネ、シモン、スチュアートはすぐに準備を整え、屋敷を出ようとした。
「アレクシア、トイフェル様を探しに行って」
『……あいよ』
いつもとは違う気乗らぬ顔で、アレクシアは飛んでいく。
(どうして……?)
◇◆◇
「あらあら、出陣がお早いことね。お父様の懸念が当たっちゃうなんて。勘も外れてくれたら良かったのに」
「……!!」
「くそ、もう来たのか。お早いこった」
シモンが少し先にたたずむ女を見る。悪趣味な紫紺のローブを羽織っているが、フードまで被っているわけではなく、顔は見える。
(どうして。どうして――どうしてっ)
「やぁ、〈ヴェヒターの結界〉ルネティア・ロード・ロデス」
「……ミーナ・ジョルダンっ!」
侯爵令嬢、ミーナ・ジョルダン。ルネティアの同級生であり――友達である。
「ルネ、知り合いですか?」
「……」
「同級生だよ! そして、あたしが唯一友達と呼べる存在が、ルネティア」
ミーナはニコニコと楽しそうに笑う。
「どうして……貴女が……っ」
「え~、やだなぁ。あたしは悲しいよぉ」
眉を下げて、ミーナはそう言う。
「一応、自己紹介でもしてあげようかな。初めましての方は初めまして。〈魔王信教〉司教が娘、ミーナ・ジョルダン。どうぞよろしく?」
微笑みつつ、ミーナは美しく礼をした。
(ミーナが、〈魔王信教〉司教の娘? なんで……どういうこと?)
「どうして……第一師団は……?」
「第一師団は関係ないよぉ。たまたま、あたしが配属されたのが第一師団だった、ってだけで。……あぁ、でも秘密を隠すの、結構大変だったね。だって〈英雄〉関係の話多いし。それに、〈魔王信教〉のことも」
「……第一師団でも、団員の調査が行われているはずだ。どうやってそれを潜り抜けたんだい?」
第二師団に所属しているシモンが問うた。
「えぇ~、簡単な話だよ? 嘘。嘘をつくだけ」
「そんなわけない。〈英雄〉関係で〈魔王〉の調査を行う第一師団ではかなり厳格な――」
「だからぁ、嘘だって。あたし、嘘つくの得意なんだ」
ふふふ、と楽しそうにミーナは笑った。
「……彼女の相手は私が。皆様は先に。それと、武官団に応援要請をお願いします」
「分かりました」
「えぇ~、一応足止めするように言われてるんだけどなぁ」
シモンが先陣を切ると、後ろにスチュアートとアンジェリーネが続く。
「そんなに簡単には行かせたくないんだけど! ……カルス・ブローヴ!」
何個かの風の刃をシモンたちに向けるが、彼らはあっさりと切り裂いていく。
「……やっぱり強いね。まぁ、いいや。あっちにもいるはずだし」
ミーナは一度目を閉じ、真っ直ぐルネティアを見据えた。
「ははっ、君と戦うのは、嫌だなぁ」




