表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/44

XXXVII.わたくしはお暇なのです エルネスタ視点

「オティーリエ、何が楽しいことはないの?」

「……お嬢様、危ない言い方に聞こえましてよ。というか、お暇ならお勉強をなさってくださいな」

「嫌です。折角試験が終わったのに、お勉強なんてしたくありませんっ」


 セルベル男爵令嬢、エルネスタ・セルベルはむぅ、と頬を膨らませる。


「アダもこのところ一週間ほどお休みだし、レミィも何故かいないって言うし……」


 エルネスタはため息をついた。


「流石にレミィは三日連続だし、もう一度侍女聞きに行きましょ!」





「そう、ですか。やっぱり、まだ……」


 レミリアの侍女、ナンシーはコクリと頷いた。


「はい。レミリア様からお休みする、という連絡は来るのですが、何故お休みするのか、どちらにいらっしゃるのかが分からなくて……」

「……それは、心配ね」


 オティーリエがそう言った。

 エルネスタとレミリアの仲が良いように、侍女であるオティーリエとナンシーも仲が良い。


「……これは、憶測なのですが、レミリア様は魔術具を造らされているのでは、と──」

「魔術具? レミィが優秀だから?」


 レミリアは魔術具造りの天才だ。教師からも一目置かれ、将来は研究職に就きたいと言っていた。


「そうです。……詳しくは分かりませんが、当主様はよく、レミリア様に魔術具を造らせていました」

「……そうなのね。ありがとう、ナンシー」


 エルネスタはそのままの足で、温室に向かった。入学したときから、よく温室には行っていた。時間帯にはよるが、人が少なくて男爵令嬢であるエルネスタでも行きやすい。




 だが、いつもいないはずのそこには、一人の少女がいた。


「……あら、エルネスタ」

「ホル──じゃなかった。ベアトリス。……お久しぶりです」


 訂正したエルネスタに、ベアトリスは少しだけ呆れたような視線を向ける。


「いつになったら慣れるのかしら?」

「うぅ、ごめんなさい。……でも、心の中でもベアトリス、の後に様もつけているのですよ!?」

「……フォローになってないわ。少しも」


 ベアトリスは小さくため息をつく。


「そういえば、ベアトリスも最近休みがちですよね。どうかしたのですか?」

「……まさか、聞いていないの? ルームメイトなのだから、言っていると思っていたわ」

「……何のことですか? アダはずっと帰ってきてないですし、特に連絡はありませんでしたけど」


 エルネスタは首を傾げた。

 アダは〈英雄〉関係の事情で少しの間、貴族学院には来られないと聞いている。


「……〈魔王〉復活の噂は知っているでしょう?」

「えぇ。……でも、あれただの噂ですよね? 〈英雄〉様が〈魔王〉を取り逃した、なんて」

「取り逃した、というのは嘘ね。実際は封印されたのよ。殺せてはいない」

「……っ、そんな」


 エルネスタは驚く。多くの国民は、〈魔王〉は死んでいると思っている。そして、その〈魔王〉を命を賭して殺した〈英雄〉はすごいのだ、とも。

 だが、それは嘘だった。



 〈魔王〉は死んでなどいない。


「……それで、アダも〈魔王〉討伐に参加するのよ。それから、〈英雄〉のお二人とレーヴ公爵家の令息たち、それから、わたくしもね」

「ベアトリス様も参加するんですか!? 〈英雄〉反対派筆頭のホルツヴァード侯爵家が?」

「えぇ、そうよ。別にホルツヴァード侯爵家は〈英雄〉が気に食わなくて言ってるんじゃないの。わたくしのおじい様が、〈英雄〉という耳のいい言葉を使って、〈英雄〉を酷使することを憂いたからよ」

「……そんな、過去が」


 エルネスタの驚きの声に、ベアトリスは頷く。


「そろそろ、帝国に正式に発表されるわ。その前には、アダも一度は帰ってきてるだろうから」

「そう、ですか。…………あの、ベアトリス。わたくしにもできることはないのでしょうかっ?」


 エルネスタの問いに、ベアトリスは彼女をじぃっと見つめた。


「自分で考えなさい。流石に貴女が前戦に出るだなんて言ったら止めるけれど、それ以外で貴女ができることはたくさんあるはずよ」

「……! 分かりました。自分で考えてみます。ありがとう存じます、ベアトリス!」


 エルネスタの言葉に、ベアトリスは微笑んで頷いた。



「……そういえば、最近レミリアは?」

「レミィですか? 最近はお休みしているんです。それも理由がよく分からなくて……」

「……気をつけなさい。ノイマン子爵家は、〈英雄〉反対派なのだから」


 鋭い目つきで、ベアトリスはそう言った。


 確かに、レミリアのノイマン子爵家は〈英雄〉反対派だ。

 だが、アダとの関係は良好だし、エルネスタは問題ないと思っていた。それでも、家の事情と言うのはよくあること。中立派だったセルベル男爵家──エルネスタが〈青嵐の英雄〉アダに手を貸すならば、ノイマン子爵家としては面白くないだろう。



「……忠告、ありがとう存じます」




「どうしたら、いいんだろう」


(レミリアも大事。でも、国の危機を救おうとしているアダの力になりたい)


 きっと、レミリア自身の話ではないのだろう。ノイマン子爵家がどう思うかだ。


(でも、国の危機なのに、〈英雄〉反対派なんて……)


 そうだ。国の危機をアダは背負っているのだ。エルネスタと変わらぬ年で。


「……作ろう、お守り」



(少しでも、アダのためにできることをしなければ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ