XXIV.試験と結果発表
「あぁ……緊張しますっ!」
エルネスタは手をもごもごと絡ませてそう言う。
「それ、試験前も言ってた」
「そりゃそうでしょう! 試験前はもちろんのこと、結果を見る前だって緊張しますよっ」
今日は試験の発表の日だ。陰一の刻から試験順位、及び点数が掲示され、二の刻ではクラス分けの発表だ。アダたちが持つバッジの色が変わるらしい。
Sなら金、Aなら銀、Bなら紫、Cなら白、Dなら黒、Eなら青、Fなら赤になるそうだ。
(前回よりはちゃんと勉強したし、まぁキープはできる、はず)
アダたちは順位を三の刻から見に行く予定だ。もうすぐ二の刻なので、バッジの色が変化するはずである。
「大丈夫ですわ、エルネスタお嬢様、アダ様も。お二人共努力されてきましたもの」
「えぇ……」
不安げな二人にオティーリエはそう声をかけた。勉強させるときは厳しいオティーリエは、励ますときはとても優しい。
時計の針が、カチリと音を立てて動いた。
じわじわとバッジの色が変化していく。
「あ……」
エルネスタがポツリと呟く。
その声が、部屋の空気に溶けた。
時間が、とても長く感じられる。
「金だ……」
アダのバッジは、金に光り輝いていた。Sクラスだ。
(よしっ!)
ちゃんと努力すれば、結果は着いてきた。嬉しいものだ。
(ルネティアに報告できるな)
「アダ……オティーリエ……」
エルネスタの言葉に、アダは振り向く。バッジの色は――
銀だった。
「アダっ! 銀ですよ! 銀っ」
「あぁ、おめでとう、エルネスタ」
アダははしゃぐ子供を愛おしむように、エルネスタを撫でた。
「ふふ……アダに撫でられるの嬉しいです」
「それは何より」
エルネスタのへにゃりとした表情に、アダの頬も緩んだ。
「アダは金ですか!? ……うぅ、アダと同じクラスになれるかと思ってたんですけどね……」
「……それは、ごめん」
「あっ、いえ! 謝ってほしいわけではなくて! わたくしが努力すればいいだけですから。次はSクラスを目指します」
ふんすっ、と意気込んで、エルネスタはそう言った。
(次こそはエルネスタと同じクラスになれるといいな)
アダはそう思って、ほんの少しだけ口角を上げた。
「……」
次の日。Sクラスの授業が始まった。
今は休憩時間。
周りを見渡してみる。教室は同じなので、あまり変わった雰囲気はない。
だが、Sクラスなだけあって皆真面目なのか、静かだ。
――ただ、一点を除いて。
藤色の髪の少女の周りだけ、妙に五月蝿い。キャアキャアとはしゃいでいる女子グループがいる様子である。
休憩時間が終わると、女子グループは一気に散っていった。
真ん中にいた藤色の髪の少女だけが、Sクラスらしい。
授業が始まった。
(Aクラスだから基礎やってんのかと思ってたけど、Sクラスでも変わらねぇんだな……)
アダは知らないことだが、ルネティアの指導では難問を普通に行っていたので、少しの応用くらいなら簡単に思えてしまう。
ちなみに、隣にいるフェリシアンは寝ていた。余裕らしい。
「なぁ、あの藤色の髪の人って誰だ?」
授業が終わってから、アダはフェリシアンに問うた。
「え? あぁ、いつもキャアキャア五月蝿い………………」
それだけ言って、フェリシアンは固まる。
「おい、前はクラスメイトで、今もクラスメイトだろ!?」
「……あー、思い出した思い出した。ホルツヴァード侯爵の娘、ベアトリスだ」
「へー」
「何?気になるの?」
「俺生物学的には女なんですけど?」
「そういうの興味あるの?」
「全く」
アダの回答にフェリシアンは苦笑した。
「あの、アダー?」
そのとき、エルネスタの声が聞こえた。扉の方を振り向くと、レミリアもいる。ちなみに、レミリアはクラスをキープし、Aクラスである。
「次、魔法学、Sクラスと合同だから。アダと一緒に行こうってエルネスタと約束してたんでしょ?」
「えっと、レーヴ公爵令息と行くのでしたら、わたくしたちは先に行っていますよ?」
「……」
「いいよ。適当にルシアンと合流するから」
アダが少し気まずそうに、フェリシアンを見ると、そんな答えが返ってきた。アダが心の中でオロオロしている間に、フェリシアンはスタスタと行ってしまう。
「お待たせ」
「いえ。では、行きましょうか」




