表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/33

XI.公爵家の三男

「では、はじめ!」


 コンテが開始の合図を言い、試合が始まった。


「スバーデ」

「カルス・スバーデ」


 アダは杖を剣に変え、レーヴは両手剣に変えた。アダがレーヴに向かって走り、レーヴは迎え打つ姿勢で構える。

 アダが切りかかると、レーヴは片手で受け止めた。


(片手で止めんのかよっ!?)


 アダは驚きつつも、力を強くした。だが、一向に動かない。


 諦めて、アダは後退する。

 すると、今度はレーヴが距離を詰め出した。


「……くっ」


 レーヴは両手剣を振り回すように動かす。だが、単に振り回しているわけではない。ちゃんと計算して動いている。


(何も考えていないように見えて、めちゃくちゃ計算してるじゃねぇか!)


 アダが考えた、ここには来ないでほしい、と思うところに的確に剣がある。何とかよけられているが。

アダが必死に避けていると、レーヴは嫌そうな、面倒くさそうな顔をした。


「……よく動くね」

「こういう訓練は何度もさせられてきたものでな」

「〈ヴェヒターの結界〉だよね、君の師匠」

「……!」


 アダは驚いた。〈光明の英雄〉だけが有名な存在で、〈孤影の英雄〉と〈ヴェヒターの結界〉の知名度はかなり低い。


「とても強い方だった」

「戦ったことがあるのか?」

「いいや。見たことがあるだけ」


 そう言いつつも、レーヴはクルクルと舞うかのように動き回る。


 アダは先程から防戦一方だ。


「えいやっ」


 そんな声が聞こえる、背後からだ。

 腰辺りに痛みが走る。魔術具のおかげで、怪我はしていないが、痛い。


()()()()の弟子って聞いたから期待していたんだけどな」


 失望したような声が聞こえる。幼い声が、残酷だ。


(元から期待しろ、なんて言ってない。こいつに期待してほしいわけじゃない。なのに――)


「残念だね」


 身体に何かが走る。

 アダは唇を噛んだ。痛みがなんだ? 誰が諦めると言った。


「はっ、残念だから何だよ」


 頭の中に、少しだけ微笑んでいるルネティアが見える。


(あいつが――ルネティアが、〈光明の英雄〉様が、〈孤影の英雄〉が、誇れる人間に、〈英雄〉になってやるんだ)


「ファレーシス」


 大鎌に変える魔法。アダは知らないが、ルネティアの研究魔法だ。まだ世間一般には出回っていない魔法。


 レーヴは形のいい金の瞳を見開いた。


 アダは大鎌を振り上げる。身体には痛いし、ピョンピョン跳ね回っていたせいで、疲労も溜まっている。正直、これが無理だったら負けだ。


「がら空きなのだけど」


 警戒しつつも、レーヴはアダに傷をつける。


「おりゃあっ!」


 大鎌を振り下ろした。

 パリンッと二つのガラスの割れるような音。


「……」


 アダは力尽きて倒れた。


 そこには、レーヴも倒れていた。意識はあったが、立ち上がる気力はないらしい。相も変わらず、ボーッとしていたが。


「引き分け! 同率でフェリシアン殿とアダ嬢、二人で優勝とする!」


 そのコンテの声は、アダの耳には届かなかった。



 ◇◆◇



(――様。――ダ様。アダ様)


「ルネ、ティア…………?」


 アダはゆっくりと目を覚ます。そこにいたのは、ルネティアではなく――エルネスタだった。


「アダ……!」

「エルネスタ、か」


 ゆっくりと、アダは身体を起こす。


「お、起き上がって大丈夫なんですか……?」

「まー、大丈夫なんじゃない?」


 聞き慣れ――てはないけど、聞いたことのある声。


 対戦相手だった、フェリシアン・レーヴだ。


「レーヴ……殿?」

「普通にフェリシアンでいいよ。僕もアダって呼ぶし」

「じゃあ、フェシリアン。勝敗はどうなった」

「君って遠慮しないね。いいけどさ。……んで、勝敗だっけ。まぁ、引き分けってことになったよ。良かったね」


(引き分けか。クソ、負けるんなら、ちゃんと負けたかった)


「何が良かったんだよ。引き分けなんて」

「何言ってるの、アダ。レーヴ公爵令息って、武術じゃ負け知らずなんだよ?ホントにすごいよ」

「……へー」


 だからと言って、引き分けは嫌だ。

 アダはフェシリアンに向き直る。


「お前結構強かった。またやろう」

「別にいいけど。あ、でもコンテ先生みたいに突っかかってくるのはやめて。クラス違ってた癖におっきい声で僕のこと呼ぶし、毎日来てたもん。アイツうざい」


 貴族の癖に、平民みたいな口調だ。


「……クラス違ってた?」

「あー、僕Sクラスだったんだー」

「じゃあ、なんでAに?」

「……試験寝てた」


 何でもないことかのように言うフェリシアンに、ちょっとだけアダは引いた。


(……いくらそこまで真剣じゃないテストとは言え、寝るのはなしだろ)





 そうして、アダは貴族学院専属治癒士に「まぁ、大丈夫じゃないかなー。ヴェヒター嬢は丈夫っぽいし」と言われ、エルネスタと共に寮に戻ることになった。


「はー、アダとレーヴ公爵令息の会話、ハイレベルすぎて怖かったです。次はAクラスに行きたい……」

「あのテストってそんなに本気でやるもの?」

「当たり前じゃないですか!Sクラスなんて、皆に認めてもらえますよ!……どうして、そんな結論に至ったんですか」

「……師匠が言ってたから?」

「えぇー。と、とにかく、とても重要なものなんですよ。次は一緒に頑張りましょう」


 アダは「分かった」と頷く。エルネスタはまだ気か付いていなかった。アダが本気ではないのに、Aクラスの在籍であることに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ