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九魂龍の狐——終わらない願い——  作者: 狐祭 つかさ
第一章 邂逅 ——勇者が產まれる場所——
12/13

第六詩 異変交差(前) ─消える生徒と旧校舎─(2/2)

二話同時更新です


旧校舎が遠目に見えてくると、先導していたクルミが立ち止まりアスハへと声をかける。

しっぽは言い知れぬ不安感を表しているように左右に大きく揺れていた。


「……アスハ」


「うん。まさかここまで近づかないと分からないなんて」


立ち止まった二人を不審に思ったのかネルがアスハの顔を覗き込み問いかける。


「あの、どうしたんですか?」


その問いにアスハは苦い顔をしながら答えた。

骨尾しっぽは上へ下へと忙しなく無意識的に動いている。


「一言で説明するのはちょっと難しいかな。ただ霊脈の拍が異常におかしい。明らかにおかしいのに、周囲は異常に落ち着いている。……ちょっと気持ち悪い」


「……匂い、キツイ……無理」


クルミも同様に苦い顔をしながら答えた。

そんな二人の反応を見て好奇心が刺激されたのか、さらに目をギラギラとさせるネル。


「そ、そんなに異常なんですか?」


「それに、なにこれ。風が集まってる?違う、吸い込まれているんだ」


それを聞いたネルは無意識にジリジリと旧校舎に近づく。

アスハに腕を掴まれる。


「はいストップ。わたしたちより前に出ないでね」


逡巡——。

アスハは意を決し旧校舎へと歩き出した。


「ここで止まっていても仕方ないし。行こう。クルミ、大丈夫?」


「……頑張る」


三人は吸い込まれるように旧校舎に近づく。

ドアの前に立つと、ネルもさすがにおかしいと感じたのか、冷や汗を流す。


「……引き返してもいいよ?」


「……いえ、行きます。ここでお預けなんて生殺しもいいところです」


アスハがドアノブに手を掛け、少し開けたところでネルは後退りし、アスハとクルミの顔は真っ青になり扉から離れる。


「こ、これ、なんですか、この、気持ち悪さ」


「……ごめんちょっと、これほんとやばい」


「……無理」


アスハとクルミは草むらに走る。

二人の後を遅れて追いかけるネル。


「あの、大丈夫ですか?」


「わたしはね。でもクルミはちょっと厳しいかな」


足の間にしっぽを挟んで、耳もペタっと折りたたまれている。身体も小刻みに震え、恐怖度MAX。


「……無理、頑張る……無理、頑張る」


アスハはブルブルと震えるクルミを抱き寄せ後頭部をゆっくりと撫で落ち着かせる。


「よしよし。怖くないよぉ。……さて、これは今の段階だと中を調べることは難しそうかな」


その言葉を聞いたネルは、まさに唖然といった表情をした。


「そんな!目の前にあるのに」


「ネルも感じ取ったでしょ。一般人でも感じ取れるってことはほんとにやばいからね?」


「ですが……」


なおも食い下がろうとするネルをどう説得したものかとアスハが考えていると、クルミがゆっくりとアスハから離れる。


「……ごめん、もう……大丈夫」


そんな三人を遠目に見ていた人物がアスハの元へと近づいてくる。

いの一番に気づいたアスハが勢いよく振り返り警戒心をあらわにする。


「誰」


そこには見知った少女が立っていた。


「………………」


警戒心を解き問いかける。


「ルシナさん、どうしたのこんなところで?」


旧校舎を指さし、無言で首を振るルシナ。


「近づくなって?」


首肯するルシナ


「それを言えるってことはルシナさんも気づいているんでしょ?」


視線をわずかに逸らすルシナ。


「…………」


「やっぱり気づいているんだ。それなら手伝って貰えないかな?」


その問いにルシナは難しい顔をする。

しかし、意に介していないアスハがルシナへとさらに問いかける。


「だってそのために来たんでしょ?」


「それ」とアスハが言いながら腰の直剣を指さした


言い当てられたルシナはバツが悪そうな顔をしていたが、アスハが折れそうに無いと感じると、溜息をひとつ。

同行の意を示すかのように真剣な顔をしアスハへと手を差し伸べる。


アスハは微笑み、差し出された手を握り礼を言った。


「ありがとう、ルシナさん」


クルミの方へと振り向き、安否を確認するアスハ。


「クルミ、行けそう?」


「……頑張る」


「よし!行こう!」


四者四様の表情で、改めて旧校舎に近づいていく。


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