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九魂龍の狐——終わらない願い——  作者: 狐祭 つかさ
第一章 邂逅 ——勇者が產まれる場所——
11/13

第六詩 異変交差(前) ─消える生徒と旧校舎─(1/2)

六詩の新規用語解説ページ

https://ncode.syosetu.com/n9892li/6

アスハとクルミは校門前で立ち尽くしていた。

何故ならばそこには魔物の死骸が転がっていたからである。

他の生徒たちは既に授業が始まっている時間。

二人は思う、なぜこんなものがこんなところに、と。しかし思うと同時に二人は即座に動き出す。


「クルミ!誰も来ないと思うけど、一応人払いの結界符を!」


「……了解!」


「……さて、まずは魔獣の拍は、と。うん、完全に落ちてるね。次に使われた獲物は、酷い傷跡まるで牙や爪でやられたみたい」


「……アスハ、終わった」


「了解。それじゃあ霊脈の痕跡を辿ってもらえる?」


「……了解。みぃ、適任」


クルミはとてとてと小走りで離れて、やがて校舎の角を曲がったところで見えなくなる。


「さて、クルミが痕跡を調べてくれるから、わたしがあと調べなきゃ行けないのは───っ!だれ!?」


「ごごご、ごめんなさい」


そこには薄緑の髪色をした生徒が立っていた


───クルミが反応したうちの一人!───


「……あなた、結界符が貼られているのにどうやって入ってきたの?」


問われた生徒はキョトンとした表情をした。

掛けている眼鏡が少しだけズレる。


「結界符……ですか。あ、ここに来る途中に見かけた紙ですね」


ポケットにしまっていたのか、ゴソゴソと取り出す生徒。


「ッ!?発動してる結界符が見えるなんて、あなた何者?」


問われた生徒は眼鏡の位置を直し、姿勢を正す。


「あ、申し遅れました。ボクはネル。ネル・エルネロって言います」


言い終わるやいなや、アスハの背後が気になるのか体を左右に揺らす。


「それより、それ何ですか?」


覗こうとするネルの視界に映らないようにするアスハ。


「一般生徒には刺激が強いものだよ。あまり見ない方がいい」


しかし一瞬見えてしまったのか、目を輝かせるネル。


「っ!魔獣の死骸ですか?」


アスハを押しのけ死骸へと近づいていくネル。

アスハが静止しようと手を伸ばす。


「ちょちょっと!」


アスハが止めようとしたところで一陣の風が吹き、クルミがアスハの前に躍り出る。


「……アスハ、下がって」


「でもクルミ」


「……お願い」


必死の表情で止めるクルミにたじろぐ。


「……う、うん」


ネルはアスハとクルミなどいないかのように、魔獣の死骸を調べ始めた。


「…………見たことないタイプ。…………すごい裂傷。もしかして同士討ち?…………拍の数値が逆位置の層を指してる?…………既存の魔獣との類似点が皆無。…………何もかもがおかしい。なにこれ楽しい」


独り言が激しいネルに冷ややかな視線を向ける二人。


「……なんかすごいぶつぶつ言ってるけど、この子大丈夫?」


「……警戒、解く?」


既に警戒を解き、アスハに寄りかかっていたクルミが問う。


「うん。どうも危険はなさそうかな。あの子が一通り観察し終えたら改めて話を聞こう」


クルミは無言で頷く。


──


しばらくして


「…………ふう。初めての魔獣は調べることがいっぱいで楽しいです」


眼鏡を外し鏡面を拭っていたネルにアスハが近づく。


「観察終わった?」


他人ひとが近づく気配が分からなかったのか、少しだけ肩をビクッと跳ねさせる。


「え?あ、はい。すみません邪魔してしまって」


あまり気に停めていなかったアスハは、魔獣に近づき右掌みぎてのひらを魔獣へと向ける。


「まぁまずはこの死骸を処理しちゃおう」


何をしようとしているのかわかったネルが魔術書を取り出す。


「それでしたらボクが燃やしますよ」


ネルがぶつぶつと詠唱して炎の魔術で焼き切る。


察したアスハがネルへと問いかける。


「魔術が使えるってことは、もしかして……」


こくりと頷くネル。


「お察しの通りです。ボクに生来の能力はないんです」


そこでネルがはたっと気づき、少し焦った表情になり震える唇を開く。


「そういえば、お二人って……あれ、神獣天人、様?」


「今更気づくんだ」


アスハの呆れ笑いに、ネルが慌てて謝罪する。


「も、申し訳ありませんでした。色々と失礼な態度をとってしまって」


「別にいいよ。ね、クルミ」


クルミは無言で頷く。


「さて、どこか落ち着いて話せるところに移動しようか」


「でしたら、この時間の穴場がありますので案内します」


「まじ?おねがい」


「どうぞこちらへ」とネルが先導するように学園内の東側へと歩き出す。

アスハとクルミの二人は後を追うように歩き出した。

アスハの骨尾しっぽが無意識に揺れた。



学園内に設置された東屋で、アスハとクルミは並んで座り対面にネルが座る。

ネルがズレたメガネの位置をなおしながら、口を開いた。


「改めまして、ボクはネル・エルネロ。魔術師です」


「わたしはアスハ。で、こっちがクルミ」


クルミは無言でぺこりとお辞儀をした。しっぽはゆっくりと左右に揺れている。少しだけ警戒している合図だ。


ふと疑問に思ったことをアスハが尋ねる。


「この時間、他の生徒たちは授業中でしょ?ネルは受けなくていいの?」


その問いにネルは表情を変えず淡々と答える。


「見ての通りボクは近接ができません。ですので演習訓練を受ける意味は無いですし、あらかたの講義内容も把握してます」


「え、じゃあどうしてこの学園に?」


「卒業という証明が欲しかったんですよ。勇者学園を卒業することが出来れば各方面に優位に働くので。それにパーティメンバーが在籍しているので。ついでですね」


「そうなんだ」


「お二人はどうしてあのような場面に?」


ネルからの問いにアスハは端的に答えた。


「実はね───」


──


「────なにそれ面白そう。」


少し頬を紅潮させたネルが前のめりになり問いかける。


「ボクもついて行っていいですか?」


ズイっと顔を近づけるネル。

少し仰け反ったアスハは苦笑する。


「さすがにどんな危険があるかわからないから遠慮して欲しいんだけど」


やんわりと断ったが、ネルはなんのその。

ふんすと胸を張る。


「問題ありません。確かに近接はできませんが、何かあれば魔術で援護できますので」


かと思えば今度は真剣な眼差しをアスハに向ける。


「というか連れて行ってください」


「うーん。ちょっと待ってね」


二人はネルから少し離れ小声で相談する。

その間もネルはそわそわとどこか落ち着かない様子だ。


「どうする?連れてく?」


「……着いてくる」


「だよね。それにダメって言っても一人で調べそうな雰囲気だよね。特にあの目。すっごいギラギラしてる」


「……ちょっと、怖い」

ぶるるっと震えるクルミ。


「仕方ない連れていくかぁ」


結論を出した2人はネルに近づき声をかける。


「連れて行ってあげる。だけど一つだけ約束して」


アスハは人差し指を立て、真剣な目をネルへと向ける。


「はい。なんでしょう」


「さっきみたいに興味が惹かれるものが目の前に来ても、わたしたちより前に絶対出ないこと」


言われたネルは苦笑いを浮かべ少し仰け反る。


「ぜ、善処します」


「うん。じゃあ行こうか」


「あの、そういえばどこに行くんですか?」


はたっと気づいたアスハがクルミの方へと視線を向ける。


「……クルミ、痕跡見つけた?」


「見つけた……目標、旧校舎」


クルミの言葉を聞いたネルが立ち上がり前のめりにクルミの方へと近づく。

その行動に少しだけ驚いたクルミの耳がパタッと羽ばたき、しっぽがピンッと立った。


「旧校舎、ですか!?」


アスハがクルミとの間に立ち落ち着かせるようにネルの肩を掴む。


「落ち着いて、ネル」


「は、はい。すー……はー……ばっちこいです」


深呼吸を終えたはずのネルの目は未だにギラギラとしており、身体はうずうずとしている。


「落ち着いてないよね、それ」


「はぁ、まぁいいか。それじゃあ改めて行こう」


半分呆れたようにアスハは溜息をつきつつ、旧校舎の方へと歩みを進め始めた。

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