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Seventh Øne  作者: 駿
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大耀編儀 ④

「透明化を?」

「そうだ。ノヴァがフメイと戦う前にルナとセリオス、お前達を透明にすれば……奴に共命理が行ったことを知られずに済む。可能だよな?ノヴァ」

「あぁ。防護の力の範囲内なら、中での行動が知られることはない」

「奴は透明化していた我々を察知することが出来ていたが……」

「奴に察知されないよう、俺が奴の注意を引きつつ戦うさ」

「共命理をした後、その中で私の分身を出しておくのもいいかも。そうした方がより上手く奇襲出来るし……どうかな?」

「確かに、それは有効かもしれません」

「じゃあ決まりね。100人ぐらい作っとくか」

「そこまで出せるのか……!?」

「いくらセカンドフォームで共命理したからといって、無茶が過ぎるんじゃないか?」

「まぁね。でもそんぐらいやらないと、多分アイツは殺せないから」

「殺……」

「感づかれないよう、よろしくね。ノヴァ」

「あ、あぁ…………!」



 作戦通り、上手くいった。

 後は、ただひたすらにこの化け物を殺し切るだけ。

「ッ!」

「………………」

 私は瞬間移動で、倒れたフメイの顔面の真正面へ移動した。

「グゥッ、貴様——!」

「今からアンタを殺す」

「ッ⁉」

 盾の切先を、フメイの顔面に突きつける。

「アンタのとち狂った理想で多くの人の未来を潰し、クロちゃんを手に掛けた罪を、痛みで知れ……!」

「抜かせ、小娘——!ウブァァッ!!」

 大口を開き、緑色の光線を放とうとしたフメイに先んじて盾で鼻部分を殴り抜ける。

 大きく反り上がる、フメイの身体。

 そこへ透かさず、瞬間移動で現れた36人の私が追撃を仕掛ける。

 同時に理気力で盾を拡張してからの、地面から離れた胴体への一斉突撃。

「ゲェハァァァァッ!!」

 叩きつける皆の一撃一撃が、フメイの胸部と腹部に鈍い音を轟かせながら深くめり込み、奴を上空へ高々と打ち上げた。

 これで、奴の全身を好きなように攻撃出来る。

「次ッ!」

 奴には一呼吸置く間も入れさせない。


 徹底的に追い詰めて、痛めつけて……自分がしてきた全てを後悔させて殺す。


 私は空中で待機している残りの64人に攻撃の合図を送り——。

 フメイの全身を、巨大化させた盾の刃で斬り刻ませた。

 翼による高速飛行で縦横無尽に駆け回り、瞬間移動によって目で捉えることも不可能な斬撃の嵐。

 ……フメイの騒々しく不愉快極まる悲鳴が、木霊する。

「ウオォォォォォォォォォ!」

 フメイは宙に留まり、生やしている腕を伸ばして分身達を排除しようとする。

 けれど、奴の生えている沢山の腕なんて私達には何てことない。

「……ッ!」

 分身達の一部を瞬間移動で腕の根元へ移動させて斬り裂かせ、すぐに役に立たなくさせた。

 奴がそれならと、また背中に輪光を作り出し始めようとしても——。

 私が即座に地上から光線を放ち、完成させることなく破壊して面倒な再生を阻止する。

「クゥゥゥ……!おぉぉぉのぉぉれぇぇぇぇぇぇッ!!」

 フメイの肉体は凄惨の一途を辿っていく。

 図々しく身に纏っていた羽衣は細切れとなって消え失せ、今なお全身に刻まれ続ける無数の裂傷からは、緑色の理気力の粒子が漏れ出していた。

「世界に正しき道を啓くこの儂に対して、こんな……こんなァァァァァァァッ——!!」

「うるさい」

「——ッ⁉」

 私は、絶叫するフメイの頭上に瞬間移動して盾を頭頂に叩きつけ、奴の頭を強く項垂らせる。

 そして奴の下がった頭へ再び瞬間移動し、盾で後頭部を叩き伏せる攻撃を途切れることなく再三に渡って繰り出し続け、奴の身体をもう1度地に伏せさせた。

「ッ……わ、儂の教えこそが、この世に光をもたらすのだぁぁぁ…………!!」

「……………………」

 駄目だ。

 この狂人には何をやっても、自分の犯した罪を懺悔させることは出来そうにない。

 ……もういい、この世から消し去ってやる。


 理想を果たせずに死んだことを、地獄で永遠に悔いろ…………!!


 私は上空へと羽ばたき、上空で待機していた100人の分身と合流する。

 そして全員で、刃を倒れ伏すフメイに向け——。

 理気力の収束を始めた。

 皆の盾の切先に、稲妻を荒々しく発する凝縮された理気力が現れる。

 その1つ1つが、他の理気力と混じり合い、渦のような螺旋を描いて中央に集合する。

 この集められた理気力の一撃で……奴を殺す!

「消し飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 私の総力を結集した光線。

 奴に裁きを下す、天誅の火を放った。




「ッ⁉」

 忙殺される戦闘の最中。

 宵闇の空間が突如、遠方で生じた強烈な光によって真昼へと移り変わり——。

 横から強く圧し掛かる壮絶な衝撃波が、爆音を連れて俺を含めた敵味方全てに襲い掛かった。

「クッ……!」

 すぐにスラスターで体勢を持ち直し、発生源を見る。

「あの光……!あれを、彼女が…………!!」

 光の柱が、天高く聳え立っている。

 あれが、セカンドフォームの全力が成せる業か。

 ……想像を絶する。

 極大の巨体を誇っていたフメイも、生きてはいまい。

 すぐにドローンをあの場所に向かわせ、奴のコアを——。

「…………!」

 耀昇士の様子の異変が、視界の端で映る。

 惨鬼共は吹き飛ばされた後でも、変わらずドローンと戦闘を繰り広げているが——。

 耀昇士は皆、一様に戦闘行為を止め……宙に浮いたまま動かずにいた。

 何だ……?

「ッ⁉」

 耀昇士の身体が、一斉に朽ち始めた。

 奇怪ながらも存在していた生気は消え、全身に亀裂が走り……木っ端となって崩壊。

 緑の理気力の粒子へと変わり、消えつつある光の柱——。

 いや、フメイの元へ導かれるように流動していく。

 これは一体……。




「ハァ……ハァ…………!」

 光線を撃ち終えて、分身達が消えた途端に、負担が身体にやって来た。

 戦っている時は興奮で気づいてなかったけど……やっぱり100人もの分身を生み出して全力で戦わせると、疲れるな。

 でも、これでフメイは倒せた。

 出来上がった広大なクレーターに、あの巨大な姿はない。

 一応、確認をしておこう。

 確認して、フメイが完全に消えていたら、戦いは終わり。

 クロちゃんの敵討ちを、果たせたことになる。


「クロちゃん…………」


 翼をはためかせ、クレーターに着地する。

 クレーターの内部は至る所から煙を上げ、光線の強い余熱が充満していた。

 私はフメイの居所を確かめる為に全力で盾を振るい、地面から立つ煙を払って見晴らしをよくする。

 これで、辺りを見渡していくと——。

「…………!」

 クレーターの中心で煙が1つ、物体から立ち昇っている。

 遠い上に煙に包まれていて分からないけど、あれがフメイかもしれない。

 私は、その物体へと歩いて近づいた。

「……ゥ…………」

「ッ!」

 あの物体から、微かな声が聞こえた。

「儂、は……負け……ん…………」

 まさか、まだ生きてるなんて。

 でも、もう虫の息の筈。

 急いで止めを刺そうと、私は盾を構えて詰めようとした瞬間——。

「ッ⁉」

 空から……無数の緑光が幾つも宙を泳いで現れた。

 恐らくは、フメイの理気力の粒子。

 星空を作るように頭上を埋め尽くすその光は、やがて長大な紐のように連なりながらクレーターへ降下し——。

 倒れるフメイの身体に落ちて、奴の体内に吸収されていった。

「…………!」

 見る間にフメイの身体は、炎のように揺らめく白緑の光に包まれ——。

 息を吹き返し、起き上がり始めた。


 奴が起き上がって何か仕掛けられる前に、仕留める!


 私は切先をフメイに向け、光線を放出する。

 光線は一直線に地を抉って奴に迫り、完璧に呑み込んだ。

 けれど——。

「ッ!」

 光線をまともに喰らっているにも関わらず、奴は自分の存在を浮かばせながら光線の中を平然と疾走し、私の懐へと飛び込んで蹴りを繰り出した。

 私は咄嗟に光線の放射を止め、蹴りを盾で受けるが——。

「ッ……!」

 その蹴りの威力は予想外に強く、私の身体は後ろへと大きく弾かれてしまった。

 さっきの巨大化とは違う力が、奴に働いている。

「ふ、ふはははは!蘇ったぞぉッ!!」

「……本当に、しぶとい奴」

「あぁ、実に心地よい……清廉なる信心の魂が我が身に溶け、力となっていくのを感じる」

「魂?」

「そう。耀昇士の魂を、大耀元主様と一体化した我が身に取り込んだのだ」

「ッ、どこまで人を好き勝手にすれば……!」

「何を言う。大耀元主様の御身へと帰一し、糧となる……それこそが、耀昇士となった者達の尊き宿命よ。信者達もさぞ本望だろう」

「…………あぁ、そう」

 これ以上、怒りを抱いたってしょうがない。

 奴はそういう人間。

 私は力を振るって、奴の命とその傲慢を潰せばいいだけ。


 ただ、ひたすらに——。


「終わりだ小娘。大耀元主様とこの儂、そして信者達が成す偉大なる奇跡の前に、膝を折——」

「もういい、黙れ」

「——ッ!」

「終わりを迎えるのは、アンタだ」

 私は粛々と、胸のコアに左手を添えた。

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