大耀編儀 ②
ノヴァが奴に大痛手を与えたのと、時を同じくして——。
集落へ迫り来る怪物共と俺のドローン全軍が、集落の前方周辺にて交戦を開始した。
目の前の景色は数秒も経たずして……互いの存在が入り乱れ、閃く光線の飛び交う戦場と化した。
「俺も出る。奴の隙と弱点を見逃すなよ、ルナ」
「うん……!周りの敵はお願いね!!」
俺は大型ビーム砲の反動から復調したアイゼン弐式で宙を駆り、直ちに迎撃へと加わった。
防衛ラインをすり抜けようとする慚鬼数匹を、即座にガトリング砲で掃討し——。
続けざまに、直線上でドローンに気を取られ、背後を晒していた耀昇士の首を抜き打ちの一刀で刎ね飛ばす。
そして右腕ビーム砲、左腕ガトリング砲の一斉射撃で、惨鬼及び耀昇士に次々と損傷を与えていく。
ワレラノスウコウナルギシキヲ、ジャマスルナァァァァァァァッ!!
「ッ!?」
突如頭に喚声が響き、モニターが左方から急接近する敵の存在を知らせた。
「チィッ……!」
耀昇士が、触手を伸ばしながら迫って来ていた。
さっきの声は、この敵からの思念か。
対話は出来るのかもしれないが、する余裕など最早ない!
俺は上昇して触手を回避し、奴が軌道を変えて再び迫る前に大型ビーム砲を装備。
振り向いた耀昇士の頭部へ熱線を照射して溶かし穿ち、その状態のままビーム砲を振り下ろし……両断した。
真っ二つに分かれた耀昇士は事切れ、煙炎を立てて落下。
地面に激突する間もなく……ボロボロと木屑になって消滅した。
「ッ!」
しかし、息つく暇もなく次の脅威は現れる。
左右と後方、それぞれから耀昇士が1体ずつか…………。
先ずは、右からだ!
俺は大型ビーム砲を後腰に納めた後、スラスターの出力を最大にし、光線を当てることの叶わない飛行速度で右の耀昇士に詰め寄った。
近づけさせまいと繰り出される触手も下から潜り抜け、がら空きとなっていた奴の眼前に飛来し——。
至近距離から両腕のビーム砲とガトリング砲の連射を浴びせ、爆散させる。
そして——。
すぐに次の標的を討つべく、再び最大速で移動を開始した。
次は、左方にいた耀昇士。
「アクトリア、インパルスシューターだ!」
「了解しました」
大回りで後方の耀昇士を通り抜けて左方の耀昇士の背後へ回り込む中、俺はアクトリアに指示し、インパルスシューター……脚部指向性衝撃伝播装置を左足に装着させた。
俺はそこへ理気力を流し、流した理気力が変換されて生まれる膨大な爆発性エネルギーを装置に充填し——。
「オォォォッ!!」
左足を大きく後ろに構えながら標的との間合いを潰し、背後から一蹴。
回り込まれたと気づき、振り向き掛けた耀昇士の脇腹に左足を深々とめり込ませ、爆発性エネルギーを流し込みながら蹴り飛ばした。
後方にいる、耀昇士の元へ。
狙い通り仲間のいる位置に飛んだ耀昇士は、間近になった瞬間という理想的なタイミングで、流したエネルギーが身体から溢れ出し……決壊。
仲間を巻き込む大爆発を巻き起こした。
俺はその爆発を合図に両腰の剣を抜き、センサーで位置を捕捉して一直線に突撃する。
黒煙に包まれ、爆発で大きく怯んだ3体目の耀昇士に肉薄し——。
両の剣で胸を刺し貫き、屠り去った。
「はぁ……!よし、次は——」
3体の撃破を完了し、次に討つ敵を定めようと振り向いた瞬間——。
「ッ⁉」
遠方から放たれた耀昇士の光線が、目の前に映り込んだ。
回避出来るタイミングは、疾うに失せていた。
「ッ……!!」
俺は咄嗟に右腕を盾にし、光線を受けた。
生じる爆発に右腕装甲の破片が砕け、身体は後方へと吹き飛ばされる。
「クッ!」
俺は瞬時にスラスターを吹かし、身体の体勢を正常に戻す。
「右腕、損傷率46%に達しています」
「……修復している余裕はないな」
装甲が一部剥がれて内部パーツが露出しているが、機能はしている。
今は、列をなしてやって来ている耀昇士共を、返り討ちにするのが先だ!
俺は再びスラスターの出力を最大にし、迫る敵群へ突貫する。
地上を駆け走り、襲来する数多の手を掻い潜りながら、ひたすら御影フメイへ深紅の星珠から得た炎の力を撃ち放ち続けた。
弱点を探る為に。
しかし、生半可な攻撃では羽衣を多少焼く程度で、本体に損傷を与えることは出来なかった。
錫杖の頭には、当てることすら出来ずに消されてしまう。
この出している火、強くなってはいるのだがな。
やはりコアレスを用いた強力な攻撃でないと、勝負にすらならないか——。
「ッ⁉」
影が、落ちた。
1つの掌が、俺の動く先を予測して潰しに来た!
「ッ!オォォォッ!!」
橙色の星珠から剣を解放し、渾身の力を奮って降り掛かる掌を剣で受け流した。
横の地面が掌に砕かれ、土煙の混じった突風を肌で感じながら、俺は走りを再開する。
……加速していないと、流石に速く感じるな。
どれか1つでもあの巨大な手に掴まってしまえば……忽ち俺の全身は木っ端微塵に握り潰され、戦闘不能になってしまう。
どうした人擬き?最初の勢いはどこへやら、随分と虫のように逃げるではないか。
「はっ……!」
次の攻撃で、その驕りも崩してやるさ。
灰の星珠が発動可能まで、あと5……4……3……2……1……。
よし!
「コアレスッ!!」
俺は掌から逃れながら……橙、深紅、水、灰の星珠を合体。
時計の分針の意匠を刀身に汲み込んだ、燃え上がる飛行の剣を生成する。
30秒間、超高速で敵を刺し貫き続ける刃だ。
こいつで、奴の力を探り出す!!
「行けぇぇぇぇぇッ!!」
飛行の力と火の噴射による勢い、更に時間加速を上乗せした剣は、音の壁を超越し——。
轟音を唸らせ、御影フメイの全身を幾度も突き抜けながら、縦横無尽に空を駆ける。
襲い掛かる無数の腕も片っ端から刺し貫き、千切り落としていく。
軌跡に残る炎の尾が、まるで御影フメイを縫うかのように見える程の、電光石火の速度。
……上手く当てるように思念でコントロールするのも、一苦労だ。
しかし、これなら御影フメイの全体に隈なく攻撃を与えることが出来る。
どこだ。
奴の弱点は、どこにある。
他のアンサラーより1つ多くのコアが持っているだけ、無敵ではないんだ。
必ず、見つける。
腹部——。
胸部——。
頸部——。
そして、錫杖の頭——。
「ッ!?」
頭部へ攻撃が来ることを察知した御影フメイが、腕を何重にも頭部に巻き付かせて保護した。
頭部を破壊すべく突き進む剣は腕と衝突し、腕を抉ることは出来たが頭部には届かず……狙いが逸れてしまう。
「…………!」
方向転換し、もう一度破壊を試みるが——。
新たに巻きつく腕に邪魔され、また失敗に終わる。
そこで30秒が経過してしまい……剣は光となって消え、俺の元に4つの星珠が戻った。
今ので奴に有効打を与えることは出来なかったが、ずっと俺達の攻撃をよしとしていた御影フメイが……初めて防御の行動を取った。
頭部に損害を受けることで、奴にとって何か不都合なことがあるかのようだ。
例えば、これまでの再生はあの頭部が担っていて、破壊されると能力が機能しなくなるとか。
……試す価値は、大いにある!
「行け!アストッ!!」
俺は奴の頭部に目掛け、手にした黒茶色の星珠を放り投げる。
中で眠るアストは投擲の勢いを保って顕現し、御影フメイの頭部へ迫っていく。
約120mの体躯を誇るアストでも、奴と比べると3分の1程度。
だが、あの巻きついた腕を剥がす力は、十二分にある。
「頼むぞ、アスト……!」
アストは、御影フメイの肩に持っている剣を突き立て、それを支えに奴の頭部へ乗り出し、巻きつく腕に掴み掛かる。
流石の御影フメイもアストに掴まれたとあって、身体が大きく前へと傾いた。
腕の1本1本を千切っては放り投げ、強固な守りを壊していく。
貴様……!
御影フメイの焦りの本音が、俺の中にも伝わる程に漏れ出した。
奴は身体を揺らし、振り落とそうとするが……それでもアストは離れず、冷徹に腕を剥がし続ける。
巨体と巨体が相争う、躍動感溢れる凄まじい迫力に、思わず息を呑む。
アストも、俺の強化に併せて強くなっているんだ。
この前みたく、奴に一方的に潰されるだけの存在ではない。
「ッ!」
御影フメイが、再生させた数多の掌を一斉にアストへと伸ばした。
アストを引き離すつもりかと思いきや、腕の群れはアストの全体を囲うようにして途中で停止した。
何が狙いなのだ、と疑問を感じた次の瞬間——。
「ッ⁉」
囲む掌の全てから……夥しい数の錫杖が一斉に現れ、アストへと射出された。
「アストッ!」
アストの身体に、柄尻の鋭く尖った錫杖が四方八方から飛来する。
最初は堅牢な鎧によって弾いていたが、絶え間なく襲い掛かる衝撃によって徐々に砕かれ……鎧は崩壊。
露見した褐色のアストの肉体に錫杖が刺さり始め、流れる血で身体が染まっていく。
「コアレス!!」
俺はすぐに水色の星珠によって空に浮上しながら、橙と深紅の星珠を合体。
烈しく燃え盛る剣を再び手に取り、アストに錫杖を放ち続ける腕の1つを、炎で構成した大刃の一振りで焼き切った。
アストは傷ついても尚、全身に突き刺さった錫杖に気を止めず……頭部の破壊に勤しんでくれている。
語らずとも、行動で俺に忠義を示しているのだ。
その行いを果たさせずでは、主人の名折れというもの。
「オォォォォォォォォッ!!」
俺は攻撃する腕と、新たに頭部へ巻きつこうとする腕を溶断し続け、アストの援護に努めた。
アストの尽力によって、あれ程強固だった奴の防御は刻一刻と薄くなっている。
もう少しだ、頼むアスト……!
俺が12本目の腕を切り落とした、丁度その時——。
「ッ!」
アストが、頭部を守る最後の腕を引き千切り、頭部を露呈させることに成功した。
「よし……!!」
後は頭部を破壊してもらうだけ。
あれ程大げさに守っていたのだ、アストの力で破壊することが出来るだろう。
だが——。
御影フメイの抵抗は、終わりではなかった。
「ッ!?」
錫杖の中心、奴のエルダーの像から巨光が撃ち放たれ——。
引き千切った直後で、防御の体勢を取れないアストの身体を貫いた。
「アスト……!!」
鬼神の如く勢いだったアストの動きが、今の一撃で止まった。
身体は力なく仰向けに傾き、御影フメイから離れて地面へと落下していった。
「よくやってくれたアスト……後は、俺がやる!」
アストの必死の働きで、守りは剥がれた。
また腕によって守られない内に、頭部を破壊する!!
「コアレスッ!!」
深紅と白緑の星珠を合体させ、力を解放。
渦を起こして現れた星珠より一回りも小さな球を手にし、奴の頭部へ思い切り投げ飛ばした。
この球の中には、炎の力と膨大な空気を圧縮して閉じ込めている。
着弾すれば炎が空気と共に解放され、大爆発が発生する。
遠距離の炎撃では届かなかった頭部も、こいつの爆撃なら破壊出来る筈だ。
奴の腕は、再び頭部を囲い始めているが……もう遅い。
球は奴の腕と腕の間をすり抜け、頭部へと到達し——。
爆炎が、閃いた。
「やったかぁぁぁぁッ⁉」
熱風に圧され、耳に高温が響きながら、御影フメイの状態を確認する。
黒煙が風に吹き飛び、炎に包まれた頭部が見えた。
「ッ!」
貴様……!よくもぉぉぉぉぉ…………!!
精巧で典雅だった錫杖はその大部分が吹き飛び、残った箇所も熱に溶かされ……見る影もなく焼け爛れていた。




