大耀儀遍 ①
敵の陣形を、ズームで確認する。
……惨鬼と耀昇士が、フメイよりも先行してこちらに向かって来ているな。
こちらの想定通りだ。
「皆、離れていろ」
俺は背後の3人に退避を促し、すぐに後腰にある中折れ式大型ビーム砲をサブアームで手元に引き寄せ、銃身を接続。
そして——。
「アクトリア。命撃モードだ」
「了解」
ビーム砲の発射形態を、強大な光線を撃ち放つ命撃モードへと変える。
大型ビーム砲の銃身が縦に展開され、電子回路めいたラインが走ったもう1つの銃身が露わになった。
奴の全高は341m、距離は約5.8㎞。
いくら距離が離れていても、その図体ならば当てるのは容易い。
「ターゲット、ロック」
俺は、銃口を巨魔となったフメイの胴体に向け、チャージを開始。
銃身のラインに銀朱の光が灯り、内部から発せられる充填音が周囲に響き渡る。
「8……7……6……5……」
発射時の反動を抑える為の、ウイングスラスターを展開する。
……これは、フメイを直接仕留める為の一撃じゃない。
フメイの前方にいる邪魔な存在を排除し、奴の元へ辿り着くまでの道を作る為の一撃だ。
同時に、この攻撃を前にフメイがどんな行動を取るのか、確かめる目的もある。
「4……3……2……」
発射間近の銃口からは、奥で溜まるエネルギーの光が漏れ、今にも溢れんばかりに熱を発している。
屋上の手すりが、発せられる熱に焼けてへし曲がった。
「1……!」
トリガーを引く指に、力が籠る。
「行けぇッ!!」
俺は、充填を完了した膨大なエネルギーを解き放つ。
銃口から発せられた光子の激流は、音の壁を破って一直線に突き進んだ。
……さぁどうする、御影フメイ!
俺は、ウイングスラスターも吹かして反動を抑えながら、光線の行き着く先を見る。
光線は行く手を阻む怪物達を、悉く滅却し——。
「ッ!」
狙い通りに、フメイの胴体……右胸の部位へ命中した。
光線は、その持ち得る熱と勢いのままにフメイの纏う羽衣と身体を焼き溶かし……貫通。
赤熱化した大きな風穴を、フメイに刻み込んだ。
「………………!」
何のつもりだ?
態々、喰らう必要など——。
下らん。
この程度で、儂を討てるとでも思ったか?
「ッ⁉」
風穴の熱が消え去り、塞がっていく……!
俺の一撃はまるで何もなかったかのように、羽衣ごと修復されてしまった。
再生能力。
それが崇聖権照天という存在になった、奴の力か。
……だが、道は作れた。
背後に目をやると、ノヴァは既に向かったのかこの場にいない。
これで作戦の第1段階は完了だ。
頼むぞ、ノヴァ。
飛行……そして時の力を俺自身に発動し、宗方アラタが作り出してくれた空の道を、超高速で駆け抜ける。
妨害せんと左右から襲い掛かる数多の光線を潜り、御影フメイに迫った。
やはり、あの光線で受けた傷は完璧に修復されている。
全くもって未知数な力だ。
俺の役目は、そんな御影フメイと粘り強く戦い続け、奴を足止めすることと……奴の力の少しでも消耗させつつ弱点を探ること。
勝利への突破口……俺の全身全霊を以って切り開く!
「赫灼たる裂光で、遍く闇を拓きし超新星!星戦士ノヴァ、推して参るッ!!コアレス!!」
俺は橙色と深紅、2つの星珠を衝突……合体させ、融け合わさった力を解放。
燃え盛る烈火を纏った剣を出現させ、この手に握った。
まだ、俺の時間加速は活きている。
このまま、奴の身体を熱し斬る!!
「オォォォォォォォォッ!!」
剣の刀身を炎で延長させ、御影フメイに突撃する。
奴の無数の腕が、迫る俺を阻もうと襲い掛かる。
数が圧倒的で、相対する掌の1つ1つが並みの戸建てを掴めそうな程の大きさだが——。
今の俺にとってはただの鈍く動く障害物に過ぎない。
俺は速度を落とすことなく腕を躱し、斬り払い——。
奴の腹部に、剣を深く突き立てた。
「まだまだァッ!」
剣を刺した状態のまま、俺は上昇を始める。
炎をありったけ奴の体内に注ぎながら……硬い肉質に負けて剣を手放さないよう両腕に渾身の力を込めて——。
身体を下から上へ、縦一文字に斬り裂いた。
刃から肉の抵抗が消え、奴の頭上を飛び越えた瞬間——。
体内に注ぎ込んでいた炎が、炸裂。
裂いた傷から爆炎が出口を求めて一斉に噴き出し、御影フメイの巨躯はその衝撃で後方に大きく退いた。
「どうだ……⁉」
激しく生じる轟音と熱風を身体に感じながら、俺は御影フメイの状態を頭上から注視する。
感じた手応えの通り、御影フメイの肉体の右半身は斬撃と爆破で大きく裂け、傷は今も残炎に焼かれ続けていた。
だが——。
「ッ!」
宗方アラタの放った砲撃と同様、奴の身体は修復を始めた。
燃える炎は消え、焼け焦げていた傷は瞬く間に治癒し……裂けていた部位と接合。
羽衣も完全に再生し、御影フメイの姿は崇聖権照天としての元の形に戻ってしまった。
損傷の大小関係なく、受けた傷を完治させるとは。
傷を負わせ続け……理気力を削る以外に手はないか。
ふっ……あの時よりも随分と力が増しているようだが、所詮は下衆の攻撃。
今の儂には、決して効きはせんぞ?
時間加速の効果が切れて、奴の声がまた俺の頭に響いた。
「どうかな?いくら理気力が多かろうと、再生し続ければやがて尽きる」
凡庸だな。
儂は今、遥か高みにいるのだ。
貴様ら如きの知恵で、儂を測ることなど出来はせん。
「……そうか」
自分を大きく見せる為の虚仮脅し、を語るようなタイプじゃない。
恐らく奴は真実を語っている、ただの再生とは訳が違うということ。
ならば、平押しでは駄目だ。
奴が自信の源となっている絡繰りを、解き明かさなくては——。




