集結するアンチレリジョン ⑥
「待たせたッ!」
アンサラーの元へ帰っていたノヴァが地面を跳躍し……俺とルナ、セリオスがいる屋上へやって来た。
強くなって戻ると言っていたらしいが、姿形はルナと違って変化はない。
「随分と変わったようだが、身体に変な所はないか?優木ルナ」
「うん、むしろ絶好調!今なら何でも出来そうな感じ!!」
「そうか……俺も強くなって戻って来た。約束の通り、全力で戦ってみせる」
「よろしくね!!」
どれ程の戦力アップなのか……そもそも俺はこいつの力を何も分かっていないが、これで役者は揃ったな。
俺の兵備は完了し、ルナもやや落ち着きを見せている。
残り時間は……2:11:32。
しかし、これはあくまで集落に到達するまでの時間。
奴らが進行速度を速めた場合や遠距離からの攻撃は、その限りじゃない。
早い所、作戦を考えておかねば。
「ノヴァ」
「ん?」
御影フメイの動向に異変がないかアクトリアに警戒させつつ、俺はノヴァに力の詳細を聞いた。
何でも、こいつは六星衛装という能力を持ち、カラフルな6つの星珠に秘められている力を使って戦うという。
橙色は剣、深紅色は炎、水色は飛行、灰色は時間操作、白緑色は防壁、黒茶色は巨人召喚。
「間違いないか?2人とも」
「あぁ」
「合ってるよ!」
タイムラグがあるようだが、強化された今は身体能力上昇だけでなく、これらの時間も短縮され……時間操作と巨人召喚以外は殆どラグがなく扱えるらしい。
「強化というよりは……元の力に戻った、という表現が正しいな」
アンサラーとはまた違う、多種多様な力だ。
それで、上手くフメイを撹乱出来れば…………。
「……聞いてくれ。俺から1つ、奴を討つ作戦がある」
「ッ、本当か⁉」
「よく聞いてくれ。先ず——」
——————。
————。
——。
「脅威は未知数だ。不測の事態には各自で臨機応変に対応しつつ、この作戦を基本に行動するのはどうだろうか?」
「俺は、これでもいいと思うが……君はどうする?優木ルナ」
「うん。私もこの作戦でいけると思う。セリオスは?」
「…………最大限打てる手は、これしかないでしょう」
「なら決まりだな。皆、俺の言った通りに動いて——」
「アラタ。フメイの動きに変化が」
「ッ!」
俺はすぐに、中継映像を空中に表示する。
攻撃を仕掛け始めたかと思ったが、止まっているだけ…………。
いや、違う。
奴の隣にいるエルダーの身体から、翠の粒子が——。
まさか……!!
「共命理かッ⁉」
「何故あんな所で……!」
エルダーは理気力の風へと変わり、旋風となってフメイを包み込む。
そして……。
包まれた内側から、風の壁を越える程の眩い光条を放出される。
風は、その光条の輝きと一体化するように、煌めきを強め——。
「ッ⁉」
「ウゥ……!」
「これは、ドグマ・バーストの光……⁉」
「………………」
嵐と化し——。
映すカメラを吹き飛ばして世界を裂光で照らし、暴風をもたらした。
「グゥッ……!」
俺は向かい来る逆風を耐えながら、頭部ユニットの対閃光防御モードを発動し、視覚の麻痺を防いだ。
他の状況を見る。
「ウォォォォ……!」
「ッ……!!」
ノヴァ、セリオスはあまりの光に目を隠し、風に飛ばされないよう身を守っている。
「……………………」
だが……ルナは眩しさや風など意に介さず、冷静に光る対象を動じることなく見詰めていた。
やがて嵐は静まり、光は止んだ。
映像は、今の暴風でドローンが壊れたのかロストしている。
だが……最早必要はなかった。
未だ遥か遠い俺達の目にも、その禍々しい黒緑の巨躯がはっきりと目に映っているからだ。
中央にあのエルダーの像が形作られた、錫杖の頭。
澄んだ翠色の羽衣を纏い、ミイラのように痩せこけ……上半身のみとなって浮遊する体躯。
背から生え伸びた、万を超える無数の手。
後ろで憎らしくも神々しく光り輝く、若葉色の輪光。
「これは……!?」
崇聖権照天……大耀元主様のお力を我が身に移した、祝福の姿よ。
「ッ!」
「脳内に直接……!!」
「……………………」
この姿で、儂は全ての人類を救済するのだ。
全ての無辜なる者に進化をもたらし、罪ある者に懺悔の機を与える。
それを阻む貴様らは、我が手で滅し……懺いることも出来ぬ永遠の無へと墜としてくれよう。
「神様気取りもいい加減にしろ…………!」
「……ルナ?」
「お前のやっていることは全部、人を不幸にすることだ!!お前なんか少しも偉くない!身勝手に人を気持ちの悪い化け物に変えて、悦に浸っているだけの自己満足野郎だッ!!そんなお前のせいで、クロちゃんは……!!」
ほう……貴様も我が教えを侮辱するか、女ァ……!
「永遠の無に落ちるのはお前の方だッ!私がこの手で、お前を殺すッ!!」
「…………!」
今にも突撃を掛けそうなルナの肩を、咄嗟に手で掴んで制止する。
「落ち着け、1人で向かおうとするな」
今の奴には、俺達の声が丸聞こえになっている。
ここでルナが前に出れば、考えていた作戦が破綻してしまうということを、口には出来ない。
「そうだ。今は俺達を信じろ!!」
ノヴァも、明言は避けつつ作戦通りに行こうとルナに告げている。
「…………分かった」
俺達の意図が伝わったのか、激情に駆られていたルナは冷静さを取り戻し……後退った。
女ァ、あの船で儂は言ったな……我が行いを阻んだ報いは必ず受けさせる、と。
「………………」
今この瞬間が、その時よ。
貴様はここで……儂がなす神意の前に、成す術なく無惨に敗れ去るのだ。
「私は負けたりしない。絶対に、お前を倒す……!」
彼女のその言葉を合図に、俺達はそれぞれ武器を取る。
侵攻を再開する、フメイと夥しい数の怪物の群れ。
猛烈な勢いで迫り、離れていた距離が詰まっていく。
人類の命運……そして犠牲となった者達の無念を背負った俺達に、逃げる選択肢などない。
必ず迎え撃ち、奴を討ち滅ぼす!




