表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Seventh Øne  作者: 駿
PR
91/93

集結するアンチレリジョン ④

 御影フメイが、ここに……!

「その化け物の大群というのは、慚鬼や耀昇士のことか!?」

「……お前は誰だ?」

「ん?あぁ、俺は星戦士のノヴァ。今は彼らと協力関係にあるんだ。よろしく」

「星、戦士……?まぁいい。とにかく2人に会わせてくれ、ここにいるんだろ」

「…………ルナはいる。だが、クロムはもういない」

「何?」

「クロムは、御影フメイの手に落ちた」

「…………彼女の元への案内がてら、何があったか教えてくれ」



 俺達3人は、ルナのいる病室へと歩く。

 その道中でセリオスは、宗方アラタに自分達のこれまでの状況を話す。

 御影フメイ襲撃の一件だけでなく、その前に起きた彼のエルダーの消失のことまで。

 宗方アラタは晴れない顔つきで、セリオスの話を聞いていた。

「哀れな奴だ…………」

 神尾クロムに対して漏らしたその一言に、侮蔑の意思は欠片もなかった。

「さぁ、今度は貴様の番だ。フメイがこちらにやって来るとはどういうことだ?」

「俺もお前達のように、奇襲を掛けようとした……だがその矢先、奴は大規模な進行を始めたんだ。これを見ろ」

 宗方アラタは、何もない空中に人差し指を触れるようにかざす。

「ッ!」

 すると、1枚の半透明な映像画面が結像された。

 俺達の歩行に合わせ一定の距離を保って下がる、その画面に映し出されていたのは——。


 俺の予想通り、数多の慚鬼と耀昇士を引き連れて平原を渡り歩く、御影フメイだった。

 映像はその様を、遠方から見下ろして撮影していた。


「この世界で言う所の……百鬼夜行だな」

 総勢は、百を優に越えているが。

「これはリアルタイムの中継映像だ。そして、奴の進行方向をマップに照らし合わせると……こうなる」

 宗方アラタが空中で人差し指を払うと、映像は地図へとシームレスに切り替わる。

 地図には、今の大きく変わった地理を反映されており——。

 御影フメイが現在、この集落に進んでいることを矢印で強く表していた。

「それで、この場所が襲われることを知った貴様はここへ……」

「そういうことだ」

 右上には、カウントダウンのタイマーがある。

 今の奴の歩行ペースからこの場所に辿り着くまで、どれ程の時間が掛かるのかを割り出したのだろう。

 表示されている残り時間は、3:17:24。

「時間がないな……」

「あぁ、すぐに迎え撃つ準備をしなくちゃならない。周りの手駒は俺がどうにかするとしても、問題は御影フメイだ」

「まともに対抗出来るのは、奴と同じく2つのコアを持っている彼女だけだが…………」

「戦える状態なのか?」

「……分からない」

 1人の少女に、戦いへの期待を寄せなくてはならないとは…………。

 星戦士の名が泣くな。




 ……外が騒がしい。

 何かあったのかな。

 確かめに行った方がいいのかもしれないけれど——。

 動けない。

 この部屋の隅っこで蹲ってから、ずっと動けないまま。

 心の全部を、重いもやもやが潰していくから。

 大事にしていたものが欠けたまま送ることになる、膨大で霧がかった未来の重圧。

 私にはそれが、耐えられない。

 ……クロちゃんは凄いなぁ。

 こんな気持ちを抱えたまま、ずっと誰かを守る為に戦ってたんだから。

「クロちゃん…………クロ、ちゃん…………!」

 私、何も出来なかった。

 アンサラーになっても、クロちゃんの本当の意味で助けになることを何もしてやれなくて——。

 クロちゃんは沢山傷ついて、ラスタさんを失って……私を庇って…………。

 残ったのは、こんな冷たい石ころ1つ……!

「ッ…………!」

 右手に握り締めていたドグマ・コアを、壁に投げつける。

 けれど……コアは跳ね返り、私の側に転がって戻って来た。

 私が無性に腹立たしくなって、コアを掴んでもう1度投げようとした。

 その時——。

「ッ⁉」

 鍵を掛けていた部屋のスライドドアが、誰かの手によって強引に開け放たれた。

「おい、無理矢理だぞ⁉」

「時間がないんだ、仕方ないだろう」

 ノヴァの注意を気にせず、部屋に入って来たのは——。

 あのパワードスーツを纏った、アラタさんだった。

「アラタ、さん?」

「……思ったとおりだな」

 アラタさんはベッドテーブルにヘルメットを置き、私の傍まで近づいて私を見る。

「何で……?」

「単刀直入に言う。数時間後に、御影フメイが手下を連れてここにやって来る」

「…………!」

「お前の力が必要だ。奴への迎撃に協力してくれ」

 御影フメイが数時間、迎撃に協力……。

 そんなこと、急に言われたって。

 私、全然——。

「人々を守る為に、頼む」


「…………………………」


 返事を返せない。

 分かってる。

 アラタさんの言っていることは本当で、真剣に私の協力を求めてる。

 私は今……どうしても戦わなくちゃいけないんだって。

 でも、無理。

 戦えない。

 戦う力も意志も、内から湧いて来ない。

 だけど、それをはっきりと口に出して拒絶する勇気は出なくて、ただ黙っていることしか出来なかった。

「…………………………」

「奴の思い通りにことが進めば、全ての人類が奴の意のままに変えられてしまうんだぞ。それでいいのか?」

「…………………………」

「優木ルナ……!」

「ッ…………!」

 膝を抱え込んだ両腕に顔を埋める。

 アラタさんの頼みに応えられず、それを情けなく思って涙を流す自分の顔を、同情でも誘っているのかと思われたくなくて。

「………………」

 沈黙が、流れた。

 覆った視界では何も見えないけれど、きっとアラタさんは私を呆れた目で見ているんだろう。

 そうに決まってる。

「……戦えないのなら、それで構わない。その代わりに——」


「クロムのコアを、俺に渡してくれ」


「ッ⁉」

 クロちゃんのコアを、アラタさんに。

 アラタさんが、私の代わりにセカンドフォームになって、フメイと戦ってくれるってこと……?

「貴様……!」

 セリオスが、コアを要求するアラタさんに食って掛かる。

「お前も分かっている筈だ、彼女はもう戦える状態じゃない。だったら俺がやる」

「それでクロムのコアを獲ろうなど、エルダーの私が許すと思うか……!」

「言っている場合か。御影フメイは多くの手下を引き連れているんだ。奴のみならず、その手下どもを纏めて相手するとなれば……今の俺達に勝ち目なんてない」

「クッ……!」

 誰かが、このコアを手にして戦わないといけない。

 そうしないと、ここにいる人達……。

 それだけじゃない、今生きている全員を守れない。

 パパも、ママも……。

 それなら、アラタさんに託すしか——。

「……………………」

 私は顔を上げて、握っていたコアをアラタさんに見せた。

 アラタさんは、私に目線を合わせるように片膝をつき——。



「俺に任せろ。クロムの仇は、必ず取る」


 力強く、約束をしてくれた。

「ッ!」

 だけどその約束は……。

 私の意思を、拒絶へと突き動かした。

「駄目……!」

「ッ⁉」

 私は反射的にコアを強く握り締め、取られないように身体の後ろに手を引いた。

「…………」

「仇は、私が取る。私が……取りたい…………!」

 今のは咄嗟の行動だった。

 けれど、段々……自分の中で確かな意志が出来上がっていく。

 クロちゃんはもういない、あるのはこのコアだけ。


 その唯一残っているものまで、誰かに渡すのは……違う。


 コアをアラタさんに渡して、私の知らない所で仇まで取られたら…………絶対に嫌だ。

 そんなことしたら、クロちゃんとの繋がりが本当になくなっちゃう。

 だから——。

「御影フメイは、私が倒す……!」

「やれるのか?」

「まだ心の中がぐちゃぐちゃで、整理なんて出来てない。それでも……戦う覚悟は、ちゃんとあるから」

 ずっとここに蹲ったままでなんか、もういられない。

「分かった。なら、その仇討ち……俺も付き合おう」

「……ありがとう。アラタさん」


「私もお供します。それで貴女に許されるとは思っていませんが……どうか、共に戦う許しを頂きたい」

「俺にも手伝わせてくれ。俺には、その義務がある」


「セリオス、ノヴァ……うん。私達の力で、フメイを倒そう!」

 クロちゃん。

 私、戦うよ。

 必ずフメイを倒して……クロちゃんの仇を取って、クロちゃんのように人を守ってみせる。

 だからクロちゃん。

 私に、力を貸して……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ