集結するアンチレリジョン ③
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「……ッ………………」
「……………………」
御影フメイの襲撃作戦が失敗に終わり、俺が3人と出会った集落にまで逃走してから……翌日。
置き去りにしてしまった神尾クロムを救おうと逃げるのを拒み、セリオスによって気を失っていた優木ルナが、目を覚まし——。
コアを優先したセリオスに、激昂。
彼の胸倉を掴んで壁に押しつけ……怒りと悲しみのままに殴り始めた。
セリオスは、されるがまま。
俺が仲裁に動こうとするのを、優木ルナに見られないように手で制止し、優木ルナの拳を黙って受け入れていた。
病室は、優木ルナの怒号と鈍い衝撃音で包まれる。
「何でッ!どうして、クロちゃんをッ!!」
「……………………」
「何とか言いなさいよッ!!」
セリオスは、何も言わなかった。
ただ、ひたすら殴られるばかり。
「ッ……!!」
優木ルナはそんなセリオスの態度に怒りが削がれてしまったか、殴るのを止めてセリオスを横倒しにする。
「今すぐここを出てって……!」
「ルナ……」
「出てってッ!!」
「…………分かりました」
セリオスは彼女に従って、病室を後にする。
「行くぞ」
「あ、あぁ……」
セリオスにすれ違いざま腕を引っ張られ、俺も病室から退出。
優木ルナが1人、病室に残す形となった。
……確かに、今はそうした方がいいのかもしれない。
下手な謝罪や励ましは、彼女の怒りを買うだけだろうから。
「……………………」
「……………………」
彼女の病室から少し離れた位置にあるベンチに、俺達は共に腰掛ける。
「クロちゃん……!うっ、うぅ……あぁぁぁぁぁ……………………!!」
病室から彼女の慟哭が漏れる。
通り過ぎる住民達は、その声を聞いて沈痛な表情を浮かべた。
皆、神尾クロムが敵地に1人、倒れた状態で取り残され……生存は絶望的であることを知っている。
ショックは、優木ルナに負けず劣らず受けていた。
ヨコミチという纏め役に聞くと、神尾クロムはアンサラーになる前から顔馴染みで助けて貰っていたらしく……。
アンサラーの1人に支配されていた際には、命懸けで撃退し……救ってくれたそうだ。
そんな英雄的存在がいなくなったとなると、集落全体の空気が沈むのも止むなしか。
だが——。
「………………………………」
セリオスすら、意気消沈して俯いているのは、意外だった。
「反論しないんだな」
「………………………………」
「君とはまだ会ったばかりだが、毅然と自分の考えを話す性格だと思っていた」
「……前の私ならば、そうだったろうな」
セリオスが神尾クロムでなくコアに手を伸ばした理由には、妥当性がある。
フメイにコアを渡してしまい、更に力を上げられてしまったら、最早……俺達に打つ手がない程の存在になってしまっていたのだから。
非情だと責められはすれど、完全なミスとは言えない。
さらに言えば……神尾クロムは本来、敵対する立場だ。
そんな彼が消え、コアを自分達の手に出来たとあれば、それはプラスな結果だ。
しかし……セリオスは何も言わず、自分の非を認めるかのように優木ルナの怒りを受け入れていた。
それは、つまり——。
「自分の選択を、悔いているのか」
「何を言う。私は、間違いを犯したなどと思ってはいない。ただ…………彼女の怨みは、受けなくてはならないと思っただけだ」
「それが、彼女や……神尾クロムへの罪滅ぼしだと?」
「…………かもしれないな」
冷徹に見える彼の中にも、神尾クロムへの仲間意識があったのだろうか?
「それで……ノヴァ、貴様はこれからどうするんだ?」
「一度、マスターの元へ戻る。御影フメイがセカンドフォームになったことを報告しないといけないからな。そして——」
「もう1度、御影フメイに戦いを挑む」
「……勝つ見込みはあるのか?」
「薄いさ。けれど……協力者の1人を犠牲にしておいて、俺が諦める訳にはいかない」
敵であっても、掛け替えのない1つの命を、俺の作戦で潰してしまった。
その責任は何としても果たす。
「おい、何だあれは……⁉」
「こっちに降りて来るぞ!!」
「……………………?」
何やら、外が騒がしい。
「セリオス」
「……あぁ」
優木ルナは力を使い果たした上、精神的にも戦える状態じゃない。
もし、御影フメイが俺達を追って来たのであれば、立ち向かえるのは俺達だけだ。
俺とセリオスは急ぎ、病院を出た。
住民達は1か所に集まり、一様に空を見上げていた。
見詰めていたのは、機械の翼を駆使して緩やかに降下する……多彩な武装を持つロボットだった。
セリオスは、その存在に困惑でなく驚愕の表情を見せていた。
「アラタ……!」
「アラタ?あれはロボットじゃないのか?」
「機械に見えるのは装甲だ。中にいるのは、アンサラーの1人である宗方アラタだ……!」
確か仲間が、機械を操るアンサラーと交戦したと言っていた。
恐らく、彼がそうか。
「ッ……!」
その宗方アラタが、周囲に熱風を吹き下ろしながら、地面に着陸。
戸惑う住民達には目もくれず、セリオスへと近づく。
そしてヘルメットを外し、隣に立っている俺に訝し気な顔を向けつつ、セリオスに話し掛けた。
「おい、優木ルナとクロムはどこだ?話がある」
「…………何の用だ?」
「御影フメイが、化け物の大群を引き連れてここにやって来る……!」
「ッ⁉」
「何だって!?」




