表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Seventh Øne  作者: 駿
PR
85/93

謎のグレイと絶望のシュウリ ②

「はい!あ~~ん!!」

「あ、あ~ん…………」

 グレイによって口元に運ばれたおにぎりを食み、咀嚼する。

 シンプルな塩むすびだけど、しょっぱくなくて丁度いい。

「どう?上手く出来たかな……?」

 グレイは自信半分、不安も半分…………と言った表情で、そわそわしながら食べる俺を見ていた。

「…………うん。美味しいよ」

「本当!?よかったぁ!どんどん食べて元気になってね!!」

「ちょっ!待っ、んぐんぐ…………!!」

 浮かれて逸るグレイに急かされ、彼女の早いあ~んのペースに巻かれながら、おにぎりを完食する。



「あのさ、色々聞きたいんだけどさ」

「うん、何でも聞いて!」

 食事を終えた俺は、隣の椅子に腰掛けるグレイに改めて疑問を投げ掛けることにした。

 目覚めてしばらく経つが、詳しい状況は掴めていないからな。

 身体も傷で動かすことが厳しい今、彼女に聞いてみるしかない。

「俺、気を失ってから……どのくらい寝てたんだ?」

「大体一日半ぐらいだね。クロムの視点からすれば、今日はもう明後日の朝ってことになってるよ」

「そんなにか……。俺の仲間がどこにいるかって知ってる?というより、無事なのかどうか…………」

「う~ん、悪いけど知らないなぁ。私達がクロムを助けようとした時…………クロムを殺そうとしていたエルダーしか、すぐ近くにいなかったし」

「そうか…………」

 瞬間移動で、無事に逃げることが出来たのか?

「アンサラーはでっかい巨人と戦っててあの場にいなかったからさ、チャンスだと思って私とシュウリでクロムを助けたんだ」

 巨人、ノヴァの黒茶色の星珠から出たものか。

 ……どうやら撤退は、手筈通り行われたようだな。

「シュウリって、マゼンタ色のコアを付けたアンサラー?」

「あぁ、会ってたんだ。そう、彼が私のバディであるアンサラーの亡白(むしろ)シュウリ。少し、感じが悪い人だったでしょ?何か傷ついたことがあったのなら、ごめんね?」

「いや……目が合っただけで、特に何もなかったから、大丈夫」

 感じが悪い、か…………。

 まぁ確かに気のいい性格には、見えなかったが——。

「でも、何で2人は俺を?フメイに見つかって、狙われてもおかしくないのに…………」

「シュウリは乗り気じゃなかったよ。私が無理を言って協力して貰ったの」

「どうして…………?」

「……貴方に生きて欲しかったから」

「ッ!」

「ただのそれだけじゃ、駄目かな?」



 大切な貴方を助けたい……そのたった1つの思いに動かされて。



 俺を真っ直ぐに見詰め、俺の為だと吐露するグレイに——。

 俺は一瞬、彼女の姿を重ねてしまった。

「本当、クロムが生きててくれてよかった……貴方をここまで連れてきて、目を覚ますまで…………ずっと気が気じゃなかったんだから」

「何で……そこまで俺に…………?」

「けど、これで……貴方はもう傷つかないで済む…………」

「えっ」

「ごめん!もっとお話したいけど、これから用事があるの。安静にして、ゆっくり休んでね!お昼には戻るから!!」

「おい、グレイ……!」

 グレイは強引に会話を打ち切り、部屋を出ていった。

 謎の8組目である彼女と亡白シュウリの正体については、聞けずじまいだ。

 戻って来たら、いの一番に聞いてみよう。

 果たして……答えてくれるだろうか?



 痛みを堪えながら……俺は寝室を出る。

 安静にしていろとグレイに言われたが、どうしてもじっとしていることは出来なかった。

 亡白シュウリに直接……何者なのかを問い質したかったからだ。

 部屋を後にした俺は、すぐに入っていた向かいの部屋を訪れ……軽くドアをノックした。

 が、返事はない。

「いない…………?」

 ドアの向こうからは何も音がない。

 グレイと話してる間に、彼もどこかへ出かけたのか?

 ……鍵は、どうやら掛けていないらしい。

 俺は若干の罪悪と恐怖で躊躇いながらも、探求心を捨て切れず、ドアを開ける。


 中は……カーペットが床全体に敷かれ、本棚が端で立ち並んでいる書斎だった。

 この洋館に住んでいた人が保管していた沢山の書物が、本棚に収納されている。

 しかし、紙魚に喰われて一部が欠損しているものや、湿気によって曲がったり、日の光で変色していて……傷んでいるものが殆どだ。

 亡白シュウリは、ここで本を読んでいたのだろうか。

 部屋の中央にあるテーブルの上には、本が開けたまま裏返しの状態で放置されていた。

 

 タイトルは…………『存在と無』


「……………………」

 ここにはいないようだし、別の部屋を探さなくては。

 俺は書斎を後にし、亡白シュウリの探し出す為の洋館探索を開始した。

 手当たり次第だが部屋を次々と訪ね、彼がいないか確認して回る。

 しかし……。

 別の寝室、応接室、広間、バルコニー。

 2階中を探し尽くしたが、彼の姿はどこにもない。

「1階にいる?それとも、グレイと同じように出掛けたか……?」

 すぐにバルコニーから離れ、階段で1階に降りるのもいいが——。

 先に、外を確かめておこう。

 ここがどこなのかも、知っておきたいことだからな。

 そう思って、景色を隈なく眺めてみるが…………。


 森と山に囲まれていて、人里は見えなかった。

 聞こえるのは風が木々を揺らす音と、鳥の鳴き声だけ。

 あれ程激しい、戦いの音に包まれた環境にいたのが、嘘のような静けさだ。


 無人になったのが、イレイノムの現れる前なのか後なのかは分からないが……。

 ここにはきっと、静かな余生を送りたい人が住んでいたのだろう。

 俺からすると、その生活は逆に難しいかもしれない。

 ……取り残されたような気分になって、落ち着かないからな。

「さて、1階だな…………」

 吹きつける穏やかな風を背中で感じながら……俺はバルコニーを離れ、階段へ向かった。

 一段一段、連続した足音を洋館に響かせながら、階段を降りて1階に。

 そして2階の時と同様、部屋を回り始めたが——。


 目的は、すぐに果たされる。


「ッ!?」

 特に理由もなく、最初にドアを開けて入った…………降りてすぐ左に位置する部屋。

 出窓が明かりのない空間に薄明かりを差し、長大なダイニングテーブルが中央を占める食堂に。

「……………………」

 亡白シュウリはいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ