現れる星戦士 ②
ラスタがいなくても……。
そう、ラスタはもういない。
それでも、アンサラーとして生きている以上……俺は戦って前に進まないといけない。
俺の理想……。
ラスタが信じ、懸けてくれた俺の理想の為に……!
「何かルールはあるのか?」
「いや、特にない。俺が終わりを宣言するまでは、全力で掛かって来て構わない」
「分かった…………」
俺とノヴァは、ルナとセリオスから見守られながら……寂然とした車道の真ん中で向かい合う。
2人の前では持ち堪えてみせると大口を叩いたが、昨日でやっと動けるようになったばかり。
どこまでやれるか……。
「まぁ、あくまで手合わせなんだ。そんな気負うな」
「………………!」
態度に出ていたか。
力を見定められている以上、余裕のなさを見せるのはよくないな。
「あっ、そうだ。ところで……」
「?」
「ネイウルはどうだった?」
「……どうって?」
「アイツは、強かったか?」
「…………あぁ、攻撃が激しくて相手するのがしんどかった。それに――」
抗ってやるさ、最後の最後までな…………。
「アンサラーの期待に応えようと、最後まで戦い続ける執念は……本当に凄まじかった」
「…………そうか」
俺の答えを聞き、ノヴァは何かを噛み締めるように数秒、俯いて……。
「じゃあ、やろうか」
俺に視線を戻し、手を前へかざした。
「ッ……!」
掌から、黄色い光を発せられ――。
「ッ⁉」
野球ボールサイズの、様々な色に輝く小さな6つの光球が、輪を描くように連なって回転しながら出現。
そして、一斉に散開し――。
光球達は残光の尾を引きながら、ノヴァを中心にして、それぞれ異なる軌道で衛星のように公転を始めた。
「それは……!」
「六星衛装・ノヴァ……俺という存在に与えられた権能さ。これら6つの星珠に収められた力を使って戦うのが、俺の戦闘スタイルだ。こんな風に…………」
ノヴァは周る星珠の内から、橙色に輝く星珠を手元に引き寄せ、右手で掴む。
瞬間――。
「………………!」
握り締められた星珠は、トパーズがそのまま成形されて作られたかのような、煌めく橙色の片手半剣へと形を変えた。
……中々、ユニークな能力だな。
ノヴァは身体を半身にし、剣を頭の側面に上げ、刃を上向きにして水平に構えた。
目にも、真剣さが帯びた。
俺も槍を生成し、左先半身の中段で構え、戦う準備を整える。
「さぁ、来――!」
「赫灼たる裂光で、遍く闇を拓きし超新星!星戦士ノヴァ、推して参るッ!!」
「…………は?」
「あぁ、ただの決め台詞だから気にするな…………行くぞ」
「ッ!」
ノヴァが少しばかり腰を落とした、次の瞬間――。
脚力が、発揮された。
一躍で剣の間合いへと距離を詰め、勢いのまま俺の胸に目掛けて剣先を突き出した。
――素早い動きだが、対応は出来る!
俺は槍の柄で、直進する刃を横へ逸らし、追撃を掛けられないように剣を下へ抑え込む。
よし、このまま突きで反撃――。
「歯を食いしばれ」
「ッ!」
「少し痛いぞ」
「何を――ッ!?」
ノヴァの周囲を回っていた星珠が、一斉に公転を止めて――。
俺に、向かって飛んで来た!
「ウグッ……!!」
弾力さが欠片もない硬い球が5つ、ストレートで顔と肩、胸に強く叩き込まれる。
攻撃にも使えるのか……!
堪らず、痛がる仕草を出してしまいそうだったが、そんな場合じゃない。
今の衝撃で、剣を抑える力が緩んでしまい、ノヴァに槍を押し退けられてしまった。
剣の、2撃目が来る!
「ハァッ!」
「クッ……!!」
横薙ぎに振るわれるノヴァの斬撃を、俺は仰け反りとバックステップで躱す。
……眼前で横切る剣の風圧が、顔を撫でる。
「今のを躱すか。だが、次はどうかな!」
「…………!」
5つの星珠が再び俺に迫り、ノヴァが遅れて接近する。
差し向けた星珠で俺を撹乱し、生まれた隙を剣で突くつもりなんだろうが……。
そうは行くか!
「ッ⁉」
俺は、槍の穂先から黒塊弾を発射し、星珠に全て命中させる。
黒く塗り潰れた5つの星珠は、その場で制御を失って地面に落下し、ノヴァを驚かせた。
目論見が崩れたノヴァだったが、足を止めることなく俺に斬り掛かる。
「ほう、奇怪だな!操作が効かなくなったぞ、一体何をしたんだ!?」
「俺の理気力に、ッ……侵されたものは、その力を失うんだ!」
「成程!それは厄介だな!!」
俺とノヴァは言葉を交わしながら、お互いに攻撃を捌き合う。
剣と槍が幾度も交錯し、数多の金属音が俺達の間で響いた。
「だがッ!」
「ッ⁉」
ノヴァが、俺の横一文字の斬撃を掻い潜って後退する。
そして……地面に転がっている星珠の1つを、左手で拾い上げた。
黒に塗れているが……あれは深紅の星珠。
「収められている力までは、失われていないようだ」
ノヴァが掴んだ星珠を、強く握り締めると――。
深紅の星珠は、光を強く発した後に粒子となって霧散し――。
「…………!」
ノヴァの左手に、燃え盛る炎が宿った。
「熱くないのか、って思っているだろ?心配ご無用。毒を持っている奴は自分の毒でやられない、それと一緒さ」
「………………」
警戒することしか考えてなかった。
「まぁ、今回は手合わせだし……住民達に迷惑を掛けないよう軽めに放つから、安心しろ」
「ッ……!」
燃える掌が、俺に向けられる。
「上手く避けてみせろよ?」
火球が、掌から放たれた。
「クッ……!」
俺は反射的に横へ跳んだことで、直撃を避けるが――。
火球はそのまま突き進み、後ろにあった廃墟のブロック塀に衝突。
「ッ⁉」
爆発を起こし――。
塀の大部分を、瓦礫に変えて吹き飛ばした。
「軽めでこれかよ……!!」
「そら、次だ!」
「ッ!」
再び、火球が撃ち出される。
俺は即座に黒塊弾を発射し、迫る火球にかち合わせて抵抗する。
これで火球を穿ち、ノヴァを牽制する腹積もりだったが――。
黒塊弾は火球を貫けず、互いを吞み込み合い……相殺されてしまった。
ノヴァの手は止まらない。
次から次へと、火球が俺に向かって襲い掛かる。
俺は黒塊弾を連射して、向かって来る火球を手当たり次第に相殺していく。
だが――。
「チィッ……!!」
対消滅の光景は、徐々に俺の方へと近づいていた。
火球から来る熱気も、刻一刻と強くなる。
俺よりも、ノヴァの連射速度の方が上……!
このままじゃ、押し込まれて負ける!!
「ラス――!」
「……?」
「ッ……!!」
馬鹿が!誰に助けを乞おうとしているんだ俺は!!
俺の隣にはもう、彼女は――!!
「どうした⁉君の実力はそんなものじゃないだろう!」
「ッ!」
俺の実力……俺だけの実力…………!
そうだ。
俺は、もう1人なんだ。
俺1人でも戦えることを、ノヴァに……俺自身に証明しないといけないんだ!
絶対に、勝つ!!
「オォォォォォッ!!」
俺は左手をコアに触れて理気力を引き出し、槍に注ぎ込んだ。
「来るか!ドグマ・バースト……!」
穂先に、煩わしい火球を容易く呑み込める程の、大玉の黒塊弾を形成。
ノヴァに向け、撃ち放った。
黒塊弾はぶつかる全ての火球を呑み、残滓の火の粉を宙に散らばらせながら、ノヴァの元へ突き進む。
ノヴァはこれを躱すだろう。
だが、それでいい。
俺から注意を外し、火球の連射を一時的にでも止めさせれば、それでいい……!
ノヴァ。
お前がやろうとしていたことを、俺がやらせてもらう!
「何とも恐ろしい大技だが、そう易々と当たる俺じゃないぞ!」
だろうな。
ノヴァは右へ大きく跳び退き、大玉黒塊弾を回避した。
そして着地と同時に、俺がいた位置に視線を戻す。
だが――。
「ッ!」
そこに、俺はもういない。
俺は既に、黒塊弾を隠れ蓑にしてすぐ近くまで距離を詰めていた。
「ッ、そう来たか……!」
俺に気づいたノヴァが、すぐに掌を向けて火球を放つ。
俺は側にあるガードレールを足蹴にして、迫る火球を跳び越え――。
背後から来る爆破の熱と風に狂わされることなく、ノヴァの左手目掛けて槍を投げた。
「……⁉」
槍はノヴァの左手の甲を裂き、そのままアスファルトの地面に突き刺さる。
左手から、燃え続けていた炎が消える。
よし!
これで、ノヴァに残っている武器は剣だけ!
後は一気に攻めて、押し勝つ!!
「オォォォォッ!!」
「やるじゃないか……!」
俺は新たに槍を生成し、落下の勢いを乗せてノヴァの脳天へ振り下ろす。
ノヴァは前転でこれを躱し……そのまま、着地した俺の後ろへと素早く回り、斬撃を振るおうと――。
「ッ……!」
する所を、俺は剣を持つ右手に後ろ蹴りを繰り出し、突き退けることで阻止。
立ち上がり、怯んだノヴァを追い詰めるべく槍を突き出す。
ノヴァは右手のみで剣を扱い、襲い掛かる槍を受け流した。
甲を切られた左手は使えないのか……だらりと垂らしたまま。
しめた!
片手だけで凌ぎ切れる程、俺の槍は甘くない。
このまま攻め続ければ、間違いなくノヴァを崩せる!
俺は、より確信となった勝機に赴くまま、矢継ぎ早に槍で乱れ突く。
ノヴァは、誰の目にも分かる程の切羽詰まった表情を浮かべ、後ろに下がりながら剣で俺の一撃一撃を対処する。
その粘り強さは流石だが……それも終わりだ。
「クッ……!」
片手というハンデにつけ込んだ武器の押し合いで、ノヴァを大きく押し退け、体勢を崩させた。
これで、次の刺突は絶対に躱せない。
俺の……勝ち――!
「ッ!?」
槍で突こうと踏み込み、腕を伸ばし掛けた瞬間――。
完全なる意外が……俺を襲った。
見えない硬い衝撃が俺の顎を跳ね上げ、一切の動作を中断させる。
「グッ、ガァッ……!!」
何が起こった。
まさか、妨害⁉
ノヴァ以外の奴による――。
「ッ⁉」
頭上。
上がった視界が、攻撃の正体を映す。
深紅の星珠……!
能力を封じた筈なのに、どうして――。
いや、それは今どうでもいい。
早く――!
「ッ!」
戦いの体勢を急いで取り戻そうとする、俺の喉元に……。
ノヴァの切先が、当たる寸前で止まっていた。
少しでも俺が前に動けば、ノヴァが前に出そうとすれば、容易に喉が裂かれて……致命傷を負う間近な位置で。
「ここまで、だな」
「……………………」




