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Seventh Øne  作者: 駿
63/76

Even if we're apart…… ⑧

「オォォォォォォォォォォッ!」

「…………!」

 俺は雄叫びを上げ、チャンスは一度きりの作戦に全てを懸ける意志を固めた。

 ドグマ・コアから理気力を引き出し、槍に込める。

「ドグマ・バースト……!」

「待て、クロムッ!!」

 分かってるよセリオス、真正面から放っても止められるだけだって。

 ――分かった上で撃つんだよ!

「ッ!」

 俺は槍を3人の前の立つ此岸リョウに向け、人を覆い尽くせる大玉の黒塊弾を穂先から放出した。

 黒塊弾は、圧を周囲に発しながら奴の元へ前進する。

 避けたら結界に当たるんだ、此岸リョウは必ず受けて止める!

「ヤケクソになったな!通すとでも思ってんのか⁉」

 黒塊弾が此岸リョウと3人の姿を、俺の視界から隠すが――。

「消し飛べぇッ!!」

 その姿は明瞭になる、此岸リョウが黒塊弾を右の斧で叩き切ったことで。

 狙い通りだ――!

「ッ⁉」

 此岸リョウの眼が見開く。

 当然だ、何せ――。

 黒塊弾を防いだと思えば、俺が眼前にまで迫ってるんだからな。

「テメェッ――!」

 俺は黒塊弾を発射したと同時に、俺も黒塊弾を遮蔽物にしながら奴へ突っ込んでいた。

 一撃を防いだ所へ、透かさず奇襲を仕掛ける為に。

 そして、俺は既に――。

 ドグマ・バーストを放つ分の理気力を、槍に込めている!!

「オォォォォォォッ!!」

「クッ……!!」

 俺は穂を大形の刃に変え、右手で槍を突き出した。

 振り下ろした直後の右の斧は、すぐには振り直せない。

 此岸リョウは身体を右に傾けて刺突を躱しつつ、結界を守るべく左の斧で槍を打ち上げた。

 刺突は上向きになってしまったが、槍は無事、結界に当たって破壊に成功する。

 後は、俺の理気力を皆に当てるだけだ。

 待ってろ!俺が今、解き放って――。

「調子乗んなよッ……!」

「ッ!」

 此岸リョウが、結界を破壊されたことに危機感を感じたのか――。

 殺意を表明するかの如く紫色の光を纏わせた両の斧で、俺の身体を断ちに来た。

 どれか1つでも接触すれば死は免れない、1双の厚刃が襲い掛かる。


 ――それも、狙い通りだ!!


「ッ⁉」

 俺は背後に隠していた、左手の持つもう1本の槍を前面に出し、2つの斧と衝突させた。

 これも、突撃を仕掛けた時には既に、コアからの理気力を注入させている。

 武器に込められた互いの理気力が、衝突したことで放散し合い、空気中に残滓が舞う。

 これは無論、押し勝てると思っての行動じゃない。

 共命理をされている以上、負けは見えてる。

 だが一瞬、ほんのわずかな時間でも、奴の攻撃を受けられれば――。

 右手の槍が自由になる!

「ウゥ……ッ…………!!」

 俺は刃を届かせないよう受ける左腕に全力を傾けつつ、右手の槍を3人に向ける。

 狙い撃つ余裕はない。

 当たってくれッ!!

 そう強く念じて、俺は黒塊弾を連発した。

 作り出した小規模の弾幕が、ばらけながらも3人へと迫る。

「ッ!」

 その内3、いや4発が、彼女達に命中する軌道だった。

 当たれ!!

 後、数瞬で弾が届く――。


 その時だった。


「壁に張り付けぇッ!!」

「ッ⁉」

 此岸リョウの言葉が響き――。

 3人が、何かに引っ張られるようにして、3方散り散りに宙を飛び、壁に張り付けにされた。

「そ……」

 当たるはずだった黒塊弾は、誰もいない空間をただ突き進んで――。

 無為に、別出口の扉へ着弾した。

「そんなッ……⁉」

 狙いを変えて撃つ時間は、もうなかった。

「残念だったなぁ!神尾クロムゥッ!!」

「ウァッ……!!」

 槍で持ち堪えていた左腕は限界を迎え――。

 列をなした刃が、俺の胸を切り裂いた。

「グァッ……ァ…………!」

 走る痛みとドグマ・バーストの反動が、一挙に身体を襲い、俺は力なく仰向けに倒れ込んだ。

 衝突したことで勢いは減衰し、裂傷は辛うじて浅く済んだ。

 しかし、どんなに浅かろうと――。

 この一撃は、絶望という途轍もない苦痛を俺に叩き付けていた。

 全てを懸けた作戦は失敗に終わり、ドグマ・バーストは使い果たし、身体はもう満足に動かせる状態ではなくなった。

 その上――。

「いやぁ、マジで冷や汗かいたぜ。さっきのはよ」

 余裕を取り戻した此岸リョウの斧が、既に宙を舞って3人の周囲に結界を張り直していた。

 俺がどれだけ頭の中で策を練ろうとしても、絶望的な現状が不可能だと断じてしまう。

「ホント、恐れ入った。まぁ、でも結局……テメェみてぇなペラ野郎のすることなんざ、全部無意味ってことだよ」

「ッ……!?」

 此岸リョウは、戻った両の斧を床に突き立てて手放し、俺の首を左手で掴んで持ち上げた。

 奴の握力が俺の気道を塞ぎ、息を途絶させられる。

 だが奴のやることが首絞めだとは思えない、首絞めならもっと力を入れるだろう。

 何を――。

「ぶっ飛べ」

 手が、離れ――。


「ゥブッ……!!」


 喉奥から、生温い鉄の味がする液体がせり上がる。

 奴の右手と、拳から放出された理気力が腹部にめり込み――。

 後方へと打ち飛ばされた。




「クロム…………」

 遠のく意識の中で、ぼやけた視界越しに彼を追う。

 私達を助ける為に死に物狂いとなって戦い、傷付いていくクロムの姿を。

 助けに行きたい。

 一緒に戦いたいのに、身体が動かない。

「ッ!」

 クロムが――。

 此岸リョウの殴打で血を吐き出し、扉を破って視界から消えた。

 生きている彼の姿を捉えられなくなってしまった。

 此岸リョウが、消えたクロムを追っていく。

 駄目だ。

 このままでは本当に、クロムが死んでしまう。

 今すぐにこの拘束を破らないといけないのに、力を出せない。

 彼と同じ、理想の力を持っているのにどうして――。

「おい、ラスタ」

「ッ!」

 此岸リョウがこの建物から出て行った折に、別の壁に張り付いているセリオスが私に喋り掛けた。

「何故、同じ力を持っているお前が、抜け出せないか分かるか?」

「分かり、ません……」

「恐れているからだ」

「ッ……!」

 恐れている、私が?

 馬鹿な、そんなことはない。

 今までどんな敵が相手だろうと、私とクロムと共に戦って来た。

 今更、恐怖するなど――。

「それは敵の強さからくるものじゃない、貴様は……神尾クロムと別れてしまうことを、恐れている」

「ッ⁉」

「お前も分かっているはずだ。共命理を行っている此岸リョウを倒すには、同じく共命理を果たすしかない。それも、数秒間だけの生半可なものではなく…………自身の存在全てを懸けて行う完全な共命理をな」

「……………………」

 セリオスの言葉が、反発せず私の胸に浸透する。

 そうなのだと、私の心が認めているからだ。

 一切の希望がなく、確定した私の消滅。

 もうクロムの隣に居られない、クロムが作る料理を食べられない、クロムとの想い出を作れない。

 生きて欲しいと言ってくれたクロムの言葉を、裏切ってしまう。

 それらが、全部――。

 全部――。

 どうしようもなく、怖い。

「フン、感情で行動が支配されるとは……本当に逸したエルダーだ。貴様は」

「……………………」

「覚悟を持て!」

「ッ!!」

「お前が心の底から、奴を想っているのなら……何が何でも奴の未来を守り抜けッ!それが、愛ある者が背負う本当の使命じゃないのか⁉」

「…………!」

 クロムの未来。

 彼がまだ、生きていられる時間――。

 まだ、彼が歩き続けていられる先――。

「戦え!ラスタッ!!」


「………………………………」


 恐怖が消えたわけじゃない。

 でも――。


「……オオォォォォォォォォォォォォォォッ!」


 それを押し退ける程の意志が、私の中で出来ていた。

 壁に縫い付けていた力を跳ね除け――。

 私は、降り立つ。

 戦う為に、クロムの未来を拓く為に。

「ラスタさん…………」

「行け」

「はい……ありがとうございます」

 痛み、未練。

 全てを振り切り、私は彼の元へ駆けた。

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