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Seventh Øne  作者: 駿
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Even if we're apart…… ①

 あれから俺達は、ラスタの怪我の回復を最優先し、遊園地があったこの場所に留まり続け、2日経った。

 ラスタが全快にならない限り、俺の力は十全に発揮できず、そんな状態で好戦的なアンサラーと出くわしてしまったら、彼女が狙われてしまうという判断の元で。

 俺達が止まっている間にも、状況は変わっているかもという不安を胸の奥底で抱きつつも、今日も過ごす。

「よし、柔らかくなった!」

 朝食。

 砂糖醤油と共に袋へ入れた切り餅を、沸騰している鍋から取り上げ、それぞれの皿に盛る。

 全員、頂きますと声を揃え、餅を口に運んだ。

「う~ん!美味しい~!!」

「随分と独特な食感だな、餅というのは……うん、悪くない。甘味と塩辛さが同時に広がるこの調味料も、餅と合っている」

「そりゃあ、餅と醤油ってのは別格の相性だからな。あっ、よく噛んで食べろよ?ラスタ」

「はい……ッ、これは――!」

「どうだ?」

「凄く、美味しいです……!!」

「そっか!」

 ラスタなら、喜んでくれると思ってた。

 予想出来た反応だけど、実際に嬉々として食す彼女を見ると、やっぱり嬉しくなる。

 そんな光景だが――。

「…………」

 未だラスタの顔に刻まれている傷痕が、俺に戦いを忘れるなと訴え掛けていた。

 ラスタは今こうして外へと出歩き、元気に餅を食える程回復したが、まだ全快には遠い。

 激しい動きをすれば、直ぐに傷が開いてしまう状態だ。

 共命理も数秒が限界。

 無理に維持して力を使い続ければ、彼女の消滅に繋がるとセリオスに釘を刺されている。

「それに、見た目もいいですね」

「見た目?」

「へぇ~!どんな所が?」

「真っ白だった餅が、黒い液体と触れたことで同じ黒に染まって、味を持つようになったのが……なにか、こう…………」

「こう?」

「……すいません、忘れてください」

「えぇッ⁉」

「ははっ、何だそりゃ!」

 戦いの緊張感は忘れない。

 だけど、この穏やかな一時も、素直に感じたっていいはずだ。

 許される時間は、数える程しかないのだから――。



「おい、神尾クロム」

「…………何だよ?」

 そう思ったのは昨日、車内で動けないラスタに昼食を持っていき、俺の手で食べさせた後。

 セリオスが告げた、俺への忠告からだった。

「お前、ラスタと恋人にでもなったつもりか?」

「…………!?急に、何言って――!」

「親睦を深めるのは勝手だが、忘れるな。私やラスタはエルダーであり…………儀式が完遂されるまでの存在だということを」

「ッ!」

「アンサラーとエルダーの関係に未来などない。己が本懐を遂げたいのなら、目先の関係に囚われるな」

「……………………」



 聞いた時は、呆然してしまったものだ。

 そりゃ、いつか別れるんだろうとは薄々、思っていたけど――。

 いざ具体的に言われたら、しばらく動揺ぐらいはする。

 …………今日だって。

「クロム?どうしましたか?」

「……なんでもないさ!」

 最長でも27日間。

 それが、ラスタと居られるまでの、タイムリミット。


 朝食を食べ終えた後、ラスタは回復を努めるべく車のシートで横になり、俺達は――。

 稽古に、勤しんでいた。

「さぁルナ!もっと全力でッ、もっともっと速く激しく打ち込んで下さい!!」

「もっと!?ッ…………でえぇりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

「いい気迫です!そのまま構えは崩さず、向かって来て下さい!!」

 ルナはひたすら、全力の攻撃をセリオスに仕掛け続けている。

 いわゆる掛かり稽古という奴で、絶えず攻撃を行わせることで体力と気力、技術を身に付けていく。

 攻める方は勿論キツいが、受ける方も大変な練習法だ。

 セリオスの奴、凄いな。

 疲れを見せずに受け続けていた。

 盾の突き出しに同じ突き出し衝撃をぶつけて相殺し、振るう刃を冷静に捌いている。

 その上――。

「そこまで!」

「ッ!はぁ…………終わった~」

「ルナ。37秒目での斬撃ですが…………」

「はぁ……はぁ…………!え、どの斬撃?」

「盾同士が衝突の後、貴女がよろめきながら振るった斬撃です」

「あ~」

「あのように苦し紛れで放つ攻撃は、敵に対して効果が薄く、反撃に遭いやすい。同じ状況になったら素直に間合いを取って、体勢を整えてから打ちましょう」

「分かった…………!」

 1分間のルナの動きを分析し、改善の指摘を与えている。

「おい、次はお前の番だ、クロム」

「休憩はいいのか?」

「必要ない、すぐに始めるぞ」

「熱心だなぁ…………」

 態々、俺にも稽古を付けてくれるなんて。

 病み上がりな俺を気遣ってか?

 セリオスって案外、面倒見のいい奴なのかもな。

「お前とは地稽古だ。お互い本気で行くぞ」

「えっ?あぁ、分かった」


「オォォォォォォォォォォッ!!」

「ちょっ、ちょちょちょちょちょッ!?待てって、おい!!」

「黙れ!稽古に集中しろ!!」

「いや、本気過ぎだろ!殺す気かッ!?」

「オォォォォォォ!!無様に死に晒せぇぇぇぇぇッ!!」

「満々じゃねぇか!!」

「と、止めた方がいいのかな…………!?」

 そんなこんな、セリオスの熱心?な稽古を受けていたのだが――。

「クロムさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 遠方から走って迫る人の呼び声によって、中断される。

 この声に、あの姿は――。

「ヨコミチさん!?」

「知り合いなの?」

「あぁ。俺が通ってた集落の…………まとめ役をしていた人だ」

 どうしてヨコミチさんがここに、1人で。

 必死な形相で俺達に向かって来ている、何かあったのか?

 俺達もヨコミチさんの元へと、歩み寄って合流する。

「や、やっと見つけた…………!クロムさん……ハァ…………ハァ……………………!」

「一体、どうしたんですか…………!?」

「クロムさん、お願いします!私達を助けて下さいッ!!」

「ッ!?」

 私達、ってことはAエリアで。

 やっぱり、何か危機的なことが起こったんだ。

「あの恐ろしい厄災から、どうか助けて下さい!!」

「一旦、落ち着いて下さい…………!Aエリアで、何があったんですか!?」

「助けて下さい!お願いします!!」

「分かりました、直ぐに向かいます!でも、その前にいくらか状況を――」

「一刻も集落に向かって欲しいんです!お願いします!!」

「…………落ち着いて話せる状態ではないな」

「とにかく、車でAエリアに行こう。ヨコミチさんも一緒に……!」

「ッ、ありがとうございます!!」

 ヨコミチさんは深々と頭を下げてから俺達に付いて歩き、全員が車に乗った。

 静かに横になっていたラスタは、一斉に乗り込む俺達に驚いた。

「急いで、どうしたんです――ん?貴方はいつかの……?」

「あっ、どうも……!」

「今から急いでAエリアに向かう。シートベルトを付けてくれ」

「……?分かりました」

 ラスタはまだ本調子じゃないけど、危機的状況になっているのなら行くしかない。

 全員がシートベルトを付けたのを確認してエンジンを掛け、タイヤをAエリアへと走らせる。



 Bエリアの隣にAエリアは位置していた。

 だから来た道をある程度まで戻って、Bエリア近辺で生い茂る森林地帯を迂回すれば、辿り着けるだろう。

 俺は記憶を頼りに、道を引き返していく。

「ヨコミチさん。落ち着きましたか?」

「はい、幾分か……」

「改めて、聞いてもいいですか?何があったのか?」

 俺は車を運転しながら、ヨコミチさんに質問する。

「はい。あれは、少し前からの出来事ですが…………」

「?」

「地面の移動に戸惑いつつも、変わらない生活を過ごしていた私達の前に、あの恐ろしい厄災がやって来て……突然、皆を凄い大変な目に遭わしたんです!!」

「……?おい、待て――」

「1人、また1人と、厄災によって尊厳を踏みにじられました……このままでは皆が駄目になる。そう思って私は、集落から離れ、助けてくれる人が必死に探していたんです!」

「……それで、俺達を見つけたってことですか?」

「はい!クロムさん、どうかまた……私達に明日を下さい!お願いします!!」

「………………」

 皆、困惑している。

 俺もだ。

 頭の中で一生懸命に言葉を繕って、必死に俺達へ訴え掛けているが、内容が曖昧過ぎる!

 嘘じゃないのは、表情と声で分かるが――。

 厄災と呼んでいるそれが一体どういった存在なのか、住民達が具体的に何をされたのか、全く分からない。

「まだ落ち着いてないみたいだな…………」

「あの、すいません。その厄災というのはどういう…………?」

「え?あぁ、厄災というのは…………えぇと、その……………………」

「………………」

「そのぉ……あぁ、すみません。なんか、思い出そうとすると……頭の中で靄がぼ~っと掛かって…………」

「?」

 どういうことなんだ。

 あまりの恐ろしさから、心の防衛本能でも現れているのか?

 ……仕方ない。

 ともかく、Aエリアに住む人々の平穏を脅かしている存在なのは確かなんだ。

 一刻も早く向かって、直接この目で見るしかない。

 でも、恐らくその厄災というのは――。

「別のアンサラー……かな?」

 脳内で出ている仮説を、代わりにルナが口にする。

「超常的な現象が働いているのなら、間違いないでしょう」

「………………」

「無関係な人間達を巻き込む者でも、貴様は平和を説くのか?神尾クロム」

「…………」

 ハンドルを握る両手とアクセルを踏む足に、力みが加わった。

 俺の胸中で、スタンスは変えたくないという意地と、問答無用に今すぐコアを奪うべきという強硬な意思が、主導権を巡ってぐちゃぐちゃに混乱する。

 俺は、どうにか葛藤を纏め上げて――。

「とにかくまずは状況を見る。それで、相手がこっちの言い分も無視して人に危害を加え続けようとするなら…………その時は、全力で止める」

 今出せる答えを、セリオスに語った。

「止める、か」

 セリオスの言葉に若干の蔑みを感じ取りながらも、俺は運転を続けた。

「所で、右の袖から包帯が見えていますが……それは、厄災による傷ですか?」

「あぁ、これですか?これは…………あれ、いつ巻いたっけな?」

「……………………」

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