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Seventh Øne  作者: 駿
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理想を懸けし者達 ①

「ッ!」

 ――見えた。

 龍の数を減らしたことで出来た隙間の景色から微かに、倒れているクロちゃんとラスタさんの姿が!

 瞬間移動ですぐに駆けつけたいけど、ちゃんと飛ぶ位置を目で捉えられないと転移出来ない。

 この包囲網を抜け出す為に何度も試みているけど、全て失敗に終わっている。

「どうしたの、本体の私!」

「ひょっとして……クロちゃん達見つけた⁉」

「うん!でも、倒れちゃってる……かなり危険かも!!」

「じゃあ、私達がこいつらの相手するから!」

「アンタは早く行っちゃいな!!」

「ありがとう!」

 私の前に分身達が集まり、全員一斉に突撃する。

 皆、盾で壁を作り、やって来る龍達を退けてくれた。

 ――刻々と、包囲網の境界線まで近づいていく。

「同時攻撃で、言葉通りに切り開くよ!オーライ!?」

「合点承知!!」

「了解!!」

「心得た!!」

 分身達は盾の剣を真上に掲げ、刃から理気力を空高く伸ばし、巨大な刃を作り出す。

 そして同時に振り下ろし、前を阻む前方の龍を纏めて斬り裂いて、クロちゃんへの道を作り出してくれた。

「いっけえぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 分身の声援を受けながら、私は強く翼を羽ばたかせ――。

 厄介な包囲網を抜け出し、クロちゃん達の元へ降り立つことに成功した。

 すぐに2人の傍に駆け寄る。

「大丈夫、2人と――!ッ……⁉」

 2人の惨状を目の当たりにし、掛けようとした言葉が詰まってしまう。

 クロちゃんは、特に目立った負傷はなくて意識もまだあるようだけど、毒に侵されているのか身体が青くなっている。

 それに……ラスタさんは――。

「酷い……!」

 身体中から血が流れていて、上半身と下半身が千切れ掛かってる。

 普通なら、とっくに亡くなっていてもおかしくない程の傷。

 これを全部、あの子がしたっていうの……⁉

「随分、痛めつけられたもんだな」

「ッ⁉」

 聞き覚えのある声が、拡声器越しで上空から聞こえ出した。

 アラタさん⁉

 見上げると――。

 銀色に輝くロボットが、私達を見下ろしていた。

 遠目で一瞬、あのデカいロボットかと思ったけど、ロボットが降り立って来る内に違うと分かった。

 スリムで標準的な人型だし、背中に付けている機械の翼を使って浮遊してるし、何より大きさが人サイズ。

 持っている武器も、覚えている限りじゃあ、変わっている。

 両腕に取り付けている武器は、右腕の大砲が1つになっていること以外は大体似たような感じだけど。

 両腰に携行している2つの剣は直剣で――。

 後腰には、折り畳まれた大砲があった。

 広げたら絶対、あの体格以上の長さがありそう。

 きっと、あれはパワードスーツって奴で、アラタさんがそれを着込んで現れたんだ。

「ッ……!」

 翼から出る噴射の風圧を、地面を伝って一帯に流しながら、スーツを纏った人物は着陸する。

「アラタさん……!」

「……………………」

 アラタさんは歩き、私達を通り過ぎ――。

 そのまま、向こうで佇むルウ君と対峙した。

 ルウ君は遠くで、アラタさんを睨みつけていた。

 着込んでいたTシャツは、何かしらの攻撃で一部が吹き飛び、彼の素肌が見えていた。

 けれど、それに気づいたルウ君が手で触れると――。

 Tシャツは虹色に輝き出し、何事もなかったかのように元の形へと戻った。

「助けに、来てくれたの……?」

「勘違いするな。アンサラー同士が争っている現場を偶然発見し、飛んで来ただけだ」

「えっ」

「分かったら、そこにいる死に損ない共を連れてさっさと失せろ。邪魔だ」

「…………」

 やっぱり中にいるのは、アラタさん。

 でも彼の口から出たのは、私達との関わりを拒絶して突き放す、冷酷な言葉だった。

「あれ?てっきりクロムを倒して、コアを横取りすると思ったのに……僕とやる気なの?」

「こんな甘っちょろい奴なんざ、何時でも狩れる……先ずはお前からだ」

「…………」

「やっぱり、アナタが2人を……!どうしてこんな⁉」

「しょうがないだろ?2人が譲るのをヤダって言うんだから。なら、次にやることなんてこれしかない……でしょ、ロボットさん?」

「……そうだな」

「人を平気で傷つけて…………こんなの、絶対間違ってるって!!」

「幾らでも吐いてろ。2人が間に合わなくなってもいいならな」

「ッ!」

 ……彼の言う通り、一刻も早く離れて2人を治した方がいい。

 私はクロちゃんを抱え、ラスタさんに触れながら――。

 身体に理気力を巡らせて輝かせ、ここからうんと遠くへ転移した。


「あれ⁉」

 転移は成功し、私はあの遊園地だった場所から見た中で一番遠く、一番探し辛いであろう林の中へと移動した。

 しかし抱え、触れていた2人が、私の手から忽然と消えていた。

「もしかして……失敗した⁉」

 身体が熱くなり、脳が委縮する感覚に襲われる。

 私のミスで、死なせる訳にはいかない!

 すぐに振り向き、翼をはためかせる――。

「えっ……⁉」

 しかし――。

 クロちゃんとラスタさんが、私から数10メートル離れて地面に倒れ込んでいた為に、飛行を取り止めた。

 一緒に転移したはずなのに、途中で離れた?

 どうして?

 なんて疑問が湧きつつも、一先ず窮地から脱したことに安堵し――。

 すぐに、2人の治療を開始した。

 今の私には、治す力がある。

 それは、出来ると確信している。




「…………!」

 1匹のチーターに似た獣が、あの宙に龍がひしめいている地点から俊敏な足でこちらへと近づいて来る。

 獣は猛烈な速度であのアンサラーに駆け寄り、元のエルダーの姿に変わって傍らへ。

 あの激しい動きとは打って変わって、神妙に佇んだ。

「ルウ、大丈夫ですか?」

「うん……けど、あの4人には逃げられちゃったよ。アイツのせいで」

「では、彼から奪うとしましょう。大丈夫、私達ならやれます」

「そのつもりだよ……」

 エルダーは膝を曲げ、アンサラーの背に合わせながら、背中を手で擦って鼓舞する。

 まるで息子を応援する母親のように。

 ――共命理をされたら面倒だ。

 俺は右手を伸ばし、右腕の45㎜ビーム砲の砲口を向け、銀朱の光を奴らに撃ち放った。

 この砲撃で生まれる奴らの隙を突くつもりだったが――。

「ッ⁉」

 目論見は外れた。

 一瞬、2人が虹色に輝いたかと思えば突如として視界とレーダーから消失し、光線は2人のいた場所を通過した。

 優木ルナと同じく、瞬間移動をしたというのか。

 何故消えたのか、どこへ消えたのか、そんな思案が脳を巡り始めた直後――。

「ッ⁉」

 レーダーが、右斜め後方から発生する高い理気力の反応を再びキャッチし、アラームで俺に知らせた。

 すぐ様振り返ると、虹色に輝く理気力の渦が、レーダーが検出した位置で現れていた。

 アンサラーに全ての力を託す、共命理が行われてしまった。

 ……速攻で片をつけたかったが、そう上手くは行かないか。

「…………!」

 渦が晴れ、中にいたアンサラーが姿を見せる。

 姿形は少年のままだが、身体の随所が虹色の光で輝いていた。

 これで、単純な力は五分と五分か。

 まぁいい。

 対アンサラー用に設計した、このアイゼン弐式がどれだけ通用するか――。

 奴で存分に試してやる!




 私の理気力で、クロちゃん達を癒した。

 私が想定していたより効き目は悪かったけど、クロちゃんの毒は解毒し、ラスタさんの傷口は完璧に塞いだ。

 勿論、すぐに戦える状態じゃない。

 2人とも、特にラスタさんは、数日間の絶対安静が必要になる。

「はぁ……」

 疲れを感じ、その場に座り込み、木にもたれ掛かった瞬間――。

 共命理が解除され、セリオスが私の身体から出た理気力の粒子が密集して現れた。

 セリオスは倒れている2人を、蔑んだ表情で見詰めて――。

「愚かな奴らだ……」

 そう、冷たく言い放つ。

 私は無性に腹が立ち、起き上がってセリオスを見据えた。

「そんな言い方しないでよ……!!」

「2対1、本来なら負ける状況ではなかった。にも関わらず奴の表面的な愛想に気を許し、不意を突かれ……この始末…………愚かと言う他ないでしょう」

「ッ……アンタの言うことも一理はあるけどさぁ!!クロちゃんにはクロちゃんなりの戦い方があるのッ!!」

「戦い方……?」

「ただ力で物を言わすんじゃなくて、争わずに平和を勝ち取る方法を一緒に考えようと、相手を説得する……そういう戦い方!例えそれが失敗しても……アンタが馬鹿にする権利なんてないッ!」

「…………」

 だって、これはクロちゃんのいい所なんだから。

 馬鹿になんか、されて欲しくない――!

「分かりました。これ以上、彼らを悪く言うのは控えましょう」

「そ~してください!」

 考えを改めている風には、全然見えないけどね。

「それで、アンサラー同士が現在、戦っておりますが……どうしますか?」

「…………」

 アラタさんとルウ君の戦いを眺める。

 私達がさっきまで遊んでいた場所では、互いに一歩も引けを取らず、数秒にも満たない瞬間に何度も攻防が入れ替わる、苛烈な戦闘が行われていた。

 共命理が解除された以上、あそこには割り込めない。

 分身達も戦いを終えたのか、龍と一緒にあの場から消えている。

 でも――。

 あの戦いの結果、どっちかの命が失ってしまったら、私達の目指す平和がなくなっちゃう!

 クロちゃんが動けない今、私が動かないと……!

「私1人で近づいて、様子を見る」

「貴女1人で……⁉」

「セリオスには2人を守って貰わないといけないし。危険だと思ったら……すぐに瞬間移動で戻るから」

「しかし……!」

「これが私の戦い方なの!私にも悪く言うのは控えてよね?」

「…………」

「じゃ、行って来る!」

 私は林を抜け、巻き込まれないように注意しながら、歩きでの接近を始めた。

 どっちかが本当に危なくなったら――。

 私が止める。

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