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Seventh Øne  作者: 駿
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楽園にようこそ ②

「確か、デカい蛇にもなってたよね?あの子」

 運転中、ルナが前に飛んでいる彼を見て呟いた。

 デカい蛇、グラスティウスでの一悶着で彼が見せていた形態か。

「ルウ君、あぁ……あの子、汐見ルウって言うんだけど。多分……どんな動物にでも変身出来る、っていう能力を持っているのかな」

「一体、どんな世界を願ったのでしょうか。彼は」

「…………分かんないな」

「変身出来るのって、実在した動物なのかな?」

「でも、あんなデカい蛇……いたっけ?」

「実在したかどうか関係なく、自身のイメージで変幻自在に姿を変えられるのかもな」

「………………」

 変幻自在。

 もしかすると、あの子供の姿も仮初めだったりして。

 …………まさかな。

「それにしても神尾クロム。まさか本気で、汐見ルウを信用しているのではあるまいな?ルナ、貴女もですよ」

「……勿論、会って間もないあの子を信じ切ってる訳じゃない」

「でも、信用しないと始まらないじゃん」

 こういう時、はっきり言い放ってくれる彼女の率直さは気持ちがいい。

 その通りだ。

 アンサラーと話し合う関係を作るには、自分達から信頼を示さないと。

「貴様はどうなんだ、ラスタ」

「私は、クロムの意志を尊重するだけです」

「……話にならんな」

 セリオスはラスタに対して、呆れた顔を見せた。

 俺は、嬉しいんだけどな。

「けど……あの子の言っていた楽園って何なんだろうね?」

「小さい子の言う楽園だからな……想像もつかないな」

 ぱぁんぱかぱ~~~~~~~ん、と現れたんだ。

 どんな奇想天外なものが、待ち受けているか――。



「……………………」

「嘘……⁉」

「ようこそ!僕の楽園、シオミランドへ!!」

 それは大雑把に描いていた俺のイメージを一瞬にして取っ払う程、衝撃的な光景だった。

 園内一帯に響く、心躍らせる愉快な音楽。

 上下しながらぐるぐると回る木馬、山あり谷ありの一本道をガラガラと音を立てて疾走する無人のジェットコースター。

 聳え立つ巨大観覧車、名前と商品画像の載った看板をでかでかと見せつけて立ち並ぶ売店。

 まさか――。

 今になって、遊園地に訪れるなんて思わなかった!

「何だこれは……⁉」

「動いて、いる…………!」

 セリオスは困惑し、ラスタは感激。

 エルダー達も、この世界で初めて見る遊園地に驚きを見せた。

 そりゃあ、今までの街とは何もかも違うのだから、ビックリして当然だ。

「あっ、エイドラ~!メンテ終わった~?」

「はい。全て正常に稼働していますよ」

 園内から、スタッフに扮したルウ君のエルダー、エイドラが現れ、俺達にお辞儀をする。

「オッケー!それじゃあ4名様、ご来園で~す!!」

「存分にお楽しみくださいませ」

「いや、ちょっと待ってくれよ!話し合いは!?」

「それは後!取り敢えず目一杯楽しんで、肩の力抜いてから話そうよ!!ささっ、とにかくいらっしゃい!!」

 俺達はルウ君に急かされる形でゲートを潜り、シオミランドへと足を踏み入れる。

 …………まぁ、これがルウ君の厚意だっていうなら、有難く受け取るべきか。

「ッ!」

 開いていたゲートが、自動的に閉まった。

「………………」

 それを、セリオスがしばらく見詰めていた。

「凄い……全部がちゃんと動いている…………!!インフラどうなってんの」

「並んでる売店も、ちゃんと食べ物を売ってるのか?」

「うん!タダでいいよ!!」

 ポテト、チュロス、ポップコーン、etc――。

 もう口に出来ないだろうと思っていた物を、本当に食べられるのか。

 店の中では等身大の人型ロボットが、エイドラと同様にスタッフとして構えていた。

「あの、ここでは……!どのように楽しめば、いいのでしょうか…………!?」

 遊園地について何も知らないラスタが、どこか高揚した様子でルウ君に質問する。

「そっか、エルダーだから初めてか。じゃあ僕がガイドするよ!」

「じゃあ俺も一緒に行くよ」

「君達も?」

「うん、私も――!」

「いいや、我々だけで楽しませて貰う。結構だ」

「えっ、ちょっとセリオス……⁉急に引っ張んないでよ…………!!」

 セリオスが、強引にルナを連れて先へ進んでいってしまった。

「何だよ……素直じゃないね、全く。じゃあ改めて……僕が君達に、ここでの楽しみ方を教えてあげる!レッツゴー!!」

 ルウ君は拳を突き上げ、俺達の前を歩いて先導する。

 俺達は、道行きを彼に任せて後を付いて行った。

「クロムは、このような場所に入ったことがあるのですか?」

「ちょくちょくな……家族とか友達とかで、行ったことがある。いや、まさか……遊園地を作り上げるなんて」

「へへ~ん、凄いでしょ。廃墟になっていた遊園地を、僕が再利用して作ったんだ!」

「あぁ、本当に凄いよ……」

「さぁ着いた!先ずはやっぱり……これでしょ!!」

 ルウ君が最初に体験するアトラクションを、指で差す。

 差したのは屹立した、急勾配で紆余曲折のレール。

 ジェットコースターだ、まぁ王道だな。

「これは、何ですか?」

「ジェットコースターって言ってな。あのレールを走る乗り物に乗って、スリルを体感する遊具だよ」

「そうですか。スリルを……」

 俺はそれに似たものを、お前の運転で既に感じてるけどな。

「まぁ、実際に味わった方がよく分かるって!乗ろ乗ろ!!」

 俺達は入り口に入り、停まっている車両の席に腰掛ける。

 俺とラスタは先頭を譲られ、ルウ君は2列目の席に座った。

 シートベルトを装着し、スタッフのロボットに安全バーを掛けて貰い、準備は完了。

 合図と共に、車両が微速で発進する。

「いきなり全速力で走るのかと思いましたが、そうではないのですね」

「まぁ、じっくり味わおうぜ」

 最初がゆっくりだからこそ、速くなる瞬間がたまらないのだから。

 明るい外へ抜け、車両は急な坂道を登り始めて上昇を始めた。

「…………」

 ラスタは遊覧するように、小さくなった屋台やアトラクションを見下ろしている。

 スリルじゃなくて、動きが遅い乗り物で景色を楽しむものなんじゃないかと、思っているのかもな。

 さぁ、昇りの頂上だ。

 ジェットコースターの真髄はこれから。

 どんな反応を見せる、ラスタ。

「あぁ!来るよ、来るよ……!」

 登りと下りの別れ目で一瞬、動きが止まる。

 そして――。

 車両が下り始めた瞬間――。

「ッ⁉ウッ!」

「あっ、そういうこと…………」

 下から来る激しい風が、落ちる俺達を殴りつけた。

 車輪の回転と風の音が耳を支配し、身体が予測不可能な軌道によって縦横無尽に揺れ動く。

「やっほおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「成程、これは……確かに…………!」

「ッ……!!」

 しまった――。

 ラスタの反応に注視し過ぎて、俺も餌食になるってことを忘れてた!

 アンサラーになってもやっぱり――。

 速い物は、速い!

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 綺麗な青空が少しだけ顔を見せたかと思えば、瞬く間にぼやけた線へと変わった。



「座席に固定された状況の中で、高速運動を体感する……貴方の言う通り、いいものでした」

「そうか。楽しんでいるなら、よかった………………」

「クロム……大丈夫ですか?」

「あぁ、平気平気…………次行こうぜ」

「疲れる人と疲れない人いるよね、ジェットコースターって」

 頭と身体がボーっとしながらもシートベルトを外し、車両から降りる。

 そして、ジェットコースターを乗り終えた直後でも元気に次のアトラクションへと向かう、2人の後を追い掛けた。

 ルウ君がお勧めする、次のアトラクションは――。

「じゃじゃ~ん!ゴーカートで~す!!」

「お~!」

「車?随分と小さいですね」

 連れて来られたのは、遊園地の端にあるゴーカート場だった。

 目の前に400m程のコースが広がり、横には沢山のカートが整頓して並べられていた。

 ゴーカートとは、これまた懐かしい。

 ゆったりとコースを周って、風を感じたいどころだが――。

「折角だし、これで競争しようよ!」

「ッ!」

 ルウ君の提案が、ラスタの心に火を付けた。

「望む所です」

「ここは普通に楽しんでもいいんじゃ…………まぁいいか!」

 ラスタが面白がっているのなら、それに越したことはないしな。

 そんな訳で開始された、3人によるレース。

 400mの円周コースを3周回って1位を競う、シンプルなレースだ。

 3車とも横に並び、スタートを待つ。

 内側からルウ君、ラスタ、そして俺の順番。

「…………」

 隣にいるラスタを見ると、絶対に1位になってみせると意気込んだ真剣な顔つきをしている。

 俺も、全力で付き合ってやるか。

 ロボットが俺たちの前で、横からチェッカーフラッグを見せるように下ろす。

 そして、数秒間経過した後――。

 フラッグが上がり、スタートが告げられた。

 一斉に発進するゴーカート。

 全員出遅れずに、現時点はほぼ並列でコースを突き進んでいた。

「ふぅ…………!」

 車程のスピードは出せないが、ジェットコースターとは違う、穏やかな風が気持ちよくて解放感がある。

 他の2人も、感じているのだろうか。

 そんなことを考えている間に、もうカーブ地点へ差し掛かる。

 この手のレースで勝敗を分けるのは、やはり如何にして効率的に曲がれるかだ。

 そういう意味では今、俺は一番いい場所にいる。

 アウト・イン・アウトを実践しやすい位置にいるからだ。

 アウトコースからカーブのインコースに入り、再びアウトコースへ出るという走法。

 これが一番、カーブを短縮して抜け出せる方法だと、聞いたことがある。

 俺に上手くやれるかは分からないが、この2人抜き去って1位になる為に、やらざるを得ない。

 インコースに入るべく、俺は2人よりもいち早くスピードを落とす。

 さて、彼女らはどう動くか。

「ッ!?」

 隣を走っていたラスタは、車と同じくドリフトで曲がろうとするが、曲がり切れずに大きく膨らんでしまい、コースの縁石に車体をぶつけてしまう。

 ルウ君は――。

「ッ、おいおい…………!」

 驚くことに、インコースの縁石すれすれにまで車体を寄せ、カーブを仕掛けた。

 それでは遠心力で膨らんでしまうのがオチ。

 だが――。

「何だとっ!?」

「おぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁあああッ!!」

 ルウ君は、自分の右腕を虹色に輝かせると――。

 右腕を長い棘に変え、コースの内側に深々と突き刺した。

 そして、刺した棘を支点にしてインコースから離れないようにし、理想の最短で曲がり切った。

「そんなのありかよ…………!!」

 もう槍を使って真似る時間はない。

 俺は復帰しているラスタに手を振りながら、アウトインアウトで曲線を抜けてルウ君を追い掛ける。

 先頭との距離は遠退いてしまった。

 彼がまた次のカーブでも同じ手を使われたら、ますます離される。

 ――やるしかない!

 次のカーブに近づいた。

「は~いよっ…………とぉ!!」

 ルウ君はやはり手慣れた動きで、トゲに変えた右腕を内側に刺して難なく曲がってのける。

 俺も彼に倣い、限界まで車体をインコースに寄せ、カーブを仕掛ける。

「ッ!」

 車体に遠心力が掛かり始める。

 俺は生成した槍を逆手で右に持ち、穂を内側に突き刺してカートの離脱を喰い止める。

 後は、このまま曲がり切るだけ。

 だったのだが――。

「ッ!?やべっ…………!?」

 狙い通り刺すことに集中し過ぎて、ハンドル操作を疎かにしてしまった。

 右に傾け続ける所を、あろうことか左に傾けてしまい、カートは勢いよく外側へ。

 慌てて元に戻そうとしても遅く、ラスタ以上にみっともなく縁石にぶつけてしまった。

「ちくしょぉ…………あっ!」

「お先に」

 俺が大事故をかましている間に、ラスタは俺を抜き去って2位になった。

 意趣返しなのか、復帰する俺に手を振って。

「ぐぬぬ…………!」

 俺は最下位の悔しさを感じながらもカーブを抜け、1周目を終える。

 1位はルウ君、2位はラスタ、3位は残念ながら俺。

 2周目で挽回しようと意気込むが――。

 ゴーカートの運転のコツを既に掴んだラスタには最早追いつけず。

 あのカーブも再チャレンジするのに躊躇してしまい、2周目も同じ順位で終えてしまい、ラストの3周目に突入する。

「あぁ、こりゃ駄目か…………」

 ラスタはともかく、ルウ君とはもう遠く離れている。

 最短カーブを成功しても、追いつけない程の距離だ。

 このまま、順位は変わらずに決着かな。

 と、諦めていた時――。

「?」

 前にいるラスタが動きを見せた。

 槍を生成し、右手で構えたのだ。

 俺のようにカーブをやってみるつもりなのかと思ったが、違った。

「ッ!!」

 ラスタはルウ君に槍を向け、黒塊弾を穂先から発射した。

 まさか実力行使でトップを落としに来たのかとも思ったが、狙いは本人ではなくカート。

 黒塊弾は、カートの右後輪に接近する。

 しかし――。

 見えていたのか、ルウ君の咄嗟のハンドル操作で左に躱されてしまった。

 恐らく、ルウ君の能力で作り上げたゴーカートに気力を当て、込められた否定の力でカートの性能を無理矢理落とそうとしたのだろう。

 …………いや、それズルじゃん。

 結局、順位は変わらぬまま3周目も終わり、ルウ君の勝利という結果になった。

「しゃあぁぁッ!勝ちぃ!!」

「いやぁ、強かった…………!」

「完敗ですね…………」

「でも……楽しかったな。ラスタ」

「えぇ。でも…………車と勝手が違うというのは、前もって教えて欲しかったです」

「ごめん!忘れちゃってた」

 本当は困惑する様を見たくて、敢えて説明してなかったんだけどな。

 それでも直ぐに感覚掴んで2位になったんだから、やっぱりラスタは凄い奴だ。

「じゃあ、そろそろ次のアトラクションに行こうか!」

「はい。次も楽しみですね、クロム」

「…………あぁ」

 広大な遊園地の中。

 はしゃぐ子供と、初めての体験の連続でうきうきしている無垢な少女。

 輝かしい昔に戻って来られたと、一瞬思える程の幸福な光景が、俺の目の前には映っていた。

「クロム、そんなペースでは走る彼に遅れてしまいますよ。さぁ、行きましょう」

「あっ、ちょっ……!」

 ラスタは俺の右手を、左手で繋いで引っ張った。




「行くよぉぉぉ、大ッ回ッ転!そりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

「………………」

「あはは、凄い回るね!」

「そうですね」

「あははははは……ははは…………」

「回転によって起こる遠心力を体感する遊具か、成程。しかし何故、飲用の器を模して作られているのか……分からんな」

「……………………」

 あぁ、もう。

 早くクロちゃん達と合流したい……。

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