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Seventh Øne  作者: 駿
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楽園にようこそ ①

「あっ、クロちゃ――えっ!?」

「なッ!?」

 ルナとセリオスが、帰路に着く俺達を見つけ、ラスタを抱えて歩く俺に驚いていた。

「…………見られちゃったか」

「クロム、もう降ろして頂いて構いません」

「そうか?よっと……」

 確かに見た感じ、身体の傷は既に塞がり、痣に変わっていた。

 これなら歩いても大丈夫だと判断し、ラスタを降ろした。

「あの忍者は?」

「えっ、あぁ……うん!倒したよ!!」

「怪我はないか?」

「ちょっと貰っちゃったけど、大丈夫――」

「おい、それよりも何だ今のは!?ラスタッ!」

 セリオスが激昂した様子で、ラスタに詰め寄った。

 ラスタは表情を変えず、彼を見詰め返す。

「アンサラーを足にするなど、言語道断!何を考えているんだ貴様!!」

「…………あれはクロムが、怪我を負った私を気遣って行ったものです。私が彼に命令して、させた訳ではありません」

「エルダーはアンサラーの手先だ!掛ける必要のない配慮を、甘んじて受け入れるな!!」

「おい、ちょっと待てよ!」

 俺は堪らず、会話に割って入った。

「必要ないって、お前…………!バディなんだから助け合ったっていいじゃないか!!」

「甘い男だ。そんな仲良しこよしを続けたまま、この戦いを勝ち上がるつもりか?」

「俺は戦うつもりなんかない!」

「…………そうだったな」

 セリオスは俺達に呆れ果てた顔を見せながら、後ろへ振り向きマンションへと先んじて歩く。

「もう、何なのアイツ!お互いがいいならそれでオッケーじゃん!!ごめんラスタさん、気にしないでいいからね!」

「…………ありがとうございます」

「それじゃあ行こ!パパとママが待ってるだろうし」

「あぁ」

 俺達3人、セリオスに続く形でマンションへと帰る。

「ラスタ、本当に気にするなよ。俺の好きでやったことだから」

「はい…………」



 優木家の部屋へ戻り、おじさんとおばさんの心配を解消させ、一家団欒のひとときを、見張りに出たセリオスを除いて5人で再開。

 一頻り談笑を楽しんだ後、話題は俺達のこれからの話になった。

「しかし、イレイノムの次には同じ力を持った人達と…………休む暇がないな。君達は」

「まぁ、しょうがないですよ。やるしかありませんし」

「大丈夫!私も付いて行くから!!」

「心配ね…………」

「何でよぉ!?」

 どんなに強くたって、自分の子の身を案じるのは当然だ。

「安心して下さい。危ないと判断したら、直ぐに戦いを降りて貰いますから」

「もう、クロちゃんまでそういうこと言う…………!私、最後までクロちゃんを助けるからね!!」

「……………………」

 有り難い言葉だけど、ルナには何よりも先ず、傷ついて欲しくないんだよ。

 エルダーのセリオスだって今は方針に従っているが、言動からして、ルナをセブンスワンの勝者に擁立したがっている。

 無茶させないよう、気を配っておかないと。

「それでもって、ここにちゃんと帰るから。武勇伝、楽しみにしててね!」

「えぇ。聞いてあげる」

「楽しみに待ってるよ」

「……………………」

 目の前で交わされる、家族の約束。

 ちゃんと果たしてやりたいと思う、情の片隅で。

 連鎖的に現れた、どうしようもない疎外感が、しつこくこびり付いた。

 そうしてしばらく話し明かした後、眠りに着き――。

 早朝、旅立ちの時。

 住民達が朝の活動を始める中、俺達4人はおじさんとおばさんに見送られ、旅に出る。

「行ってらっしゃい」

「ルナ、身体に気をつけるんだよ。クロム君も」

「貴方も、辛くなったらいつでもここに戻っておいで。私達一家全員…………クロム君の味方だから」

「…………はい」

「行ってくるね。パパ、ママ…………」

 ルナは両親にハグを交わし、車に乗る。

 座る位置は、久し振りに見る外の景色を前から見たい、という本人の希望で助手席に。

 ラスタには、セリオスと共に後部座席にいて貰うことにした。

 車を発進。

 サイドミラーには手を振り続ける優木夫妻の姿が、遠く離れるまで残り続けた。

 ルナも、見えなくなるまで元気よく窓から手を振り返し――。

「クロちゃん、改めてよろしくね。ラスタさんも」

 新たに決意を固めた証なのか、俺達へ、戦う仲間となることを挨拶で表明した。

「あぁ」

「よろしくお願いします」

「…………ふん」

 だがセリオスはそんな俺達のやり取りを、愚かしく見えるのか鼻で笑った。



 静寂の支配する、コンクリートの道を突っ走る。

 既に発見しているAエリアは、木々が密集していて向かいにくい為に後回し。

 取り敢えず道なりに進んで行って、見つけた集落からアンサラーの情報の聞き込み。

 終わったら次の集落を発見するまでまた進む、その繰り返しだな。

 地形が変わったせいで地図は役に立たないが、隣接して集合したのなら必ず見つけられるだろう。

「ねぇセリオス。エルダー同士で場所とか分かったりしないの?」

「残念ながら…………我らに分かるのは、バディと定めたアンサラーの居場所のみです」

「ふ~ん、そっかぁ…………」

 分かっていたらとっくに進言してくれていただろうし、楽な道は早々ないものか。

「それにしても、無事でよかったね。車」

「本当にな。イレイノムに触れられていても、おかしくなかったし」

「幸運が付いてるのかもね!」

 前にも、ドローンが移動させたお陰で、消えずに済んだことがあったし。

 ルナの言う通りコイツ、強運の持ち主なのかもな。

「……………………」

 そんなこんな、会話を挟みながら小1時間程走り続けているが、集落は未だに発見出来ていない。

 周囲の地形ごと移動させたとエルドルーラーは言ったが、随分大きく巻き込んだな。

 この地形には見覚えがないから土地勘も働かないし、参った。

 だが知らない土地に来たということは、別のアンサラーが作り上げた領域であるということ。

 いる可能性は、大いにある。

「ねぇ、何かデカいの飛んでるよ?」

「えっ?」

 差し掛かった交差点を右に曲がろうとした時、ルナが空に指差した。

 俺はカーブする為に目を離せず、今すぐ見ることは出来なかったが、ラスタとセリオスが指差した先を見て――。

「あれは、流れ星でしょうか……?」

「あの高度の隕石ならもっと速く落ちる……謎の物体だな」

 要領を得ない感想を漏らした。

 一体、何が見えているんだ。

 道を曲がり切り、目の前に障害物がないのを確認して、俺も振り向いた。

「まだいるのか?」

「うん、あそこに」

 ルナが改めて指し直した方向を見る。

 俺の席の右窓。

 黒色で楕円球の物体が、車と並行して空を走っていた。

 高度を落とさず、一定の速度を維持して。

 セリオスの言う通り、謎だ。

「……………………」

 知らない土地に来て正体不明の飛行物体に遭遇する。

 これは――。

「アンサラーの能力が作り出した物かもしれない。用心しておけ」

「分かってる」

 少しばかり車のスピードを抑え、物体の様子を――。

「ッ⁉」

 伺おうとした途端、物体が突如として軌道を変化。

 俺達のいる方へと旋回し、降下を始めた。

 俺は急いでブレーキを踏んで、車を停止させる。

「皆、物に掴まれ!!」

 物体は、最早隕石に匹敵する程、急激に速度を上昇。

 道路の50m先の地点に、墜落した。

「ッ……!」

「うわぁッ⁉」

 落下の衝撃で起きた震動が、俺達のいる車を揺らす。

 一瞬、身体が跳び上がる程の揺れだったが――。

 シートベルトに押さえつけられ、物体の墜落寸前に右手でグリップを掴み、左手でダッシュボードを押さえていたことで、姿勢が大きく崩れることなくやり過ごす。

「皆、大丈夫かッ⁉」

「うん、平気……」

「私も怪我はありません」

「……右に同じだ」

 他の皆も怪我はなく、幸いにして積んでいる荷物も無事だった。

「一体何なんだ。いきなりこっちに落下して来て…………!」

「直接、確かめてみる他ないだろう」

 俺達全員、落下物の正体を見るべく車を降りる。

 落下物は周囲の地面を陥没させ、黒煙を上げていた。

「…………まぁそれで行くか。ラスタも後ろにいてくれるか?」

「はい」

「えぇ!?私、先頭がいいんだけどなぁ」

「「いや、後ろにいて欲しい」」

「ハモった…………!」

 セリオスの提案に従い、セリオスと俺は前、ルナとラスタは後ろというポジションで、落下物へと――。

「………………!」

 歩き出そうとしたが、状況の異変に全員が足を止めてしまった。

 あの落下物が、膨張を始めていたのだ。

 それも、既に空気を満杯に送られた風船のように、今にも破裂しそうな程の驚異的な速さで。


 爆風、棘の炸裂、毒ガスの散布。


 膨張速度に合わせて、俺の脳内で破裂した時のイメージが一挙に雪崩れ込み――。

 逃避へと舵を切らせた。

「逃げるぞッ!!」

 そう俺が言い出し、車を捨てて逃げ出そうとしても遅かった。

 膨張はものの数秒で極限へと達し――。

 破裂した。



「ぱぁんぱかぱ~~~~~~~ん!!」



「……ッ!………………?」

「えっ?」

「あはははッ!そんな大慌てしちゃってさ!!あ~可っ笑し!!」

「…………」

「ルウ、君…………?」

「に、逃げるぞぉって……!ふっははははははははははッ!!」

 破裂した物体の中から現れたのは、グラスティウスで出会ったアンサラーの1人。

 汐見ルウだった。

「はははは……あ~傑作だこと!」

「え………えぇ………!?」

 理解が、追いつかない。

 突然破裂した物体の中から、ルウ君が現れて――。

 慌てふためいていた、俺をネタにして笑っているのだから。

「………………」

 緊迫感が解れて心の落ち着きを取り戻していき、同時に揶揄われていることへの恥ずかしさが込み上げてくる。

「エルダーも連れずにやって来るとはな…………」

 セリオスが盾を生成して装備し、鋭い目つきで見詰めながらルウ君に刃を向ける。

 ルウ君は、大げさに驚いて両手を上げた。

「ちょっとちょっと~いきなり武器構えないでよ。僕、話し合いに来ただけなのに」

「……話し合いだと?」

「その証拠に、僕1人でここに来てるだろ?僕は君達と戦うつもりなんてない」

「…………本当か?」

「ホントにホント、大マジ。だからさ、武器を向けるの止めてよ」

 彼の大マジというのが嘘偽りないのなら、こんな好都合なことはない。

 アンサラーと話し合って戦いを止めさせるのが、俺達の目的なのだから。

 俺、そしてルナはセリオスに視線を送り、装備している盾を消失させるように訴える。

 セリオスは渋りながら、盾を消した。

「それで、話し合いとは……?」

「まぁ急がない急がない。ホラ……こんな場所じゃあなんだからさ、僕のホームで腰を落ち着けて話そうよ」

「ホーム?」

「そっ、僕が案内してあげる」

「フン……敵の陣地に足を踏み入れるなど、冗談じゃない」

「ちょっとセリオス……!」

「……ふぅん」

 警戒心を剥き出しにするセリオスの態度に、終始にこやかだったルウ君が顔をしかめる。

「信用してくれないのなら、話し合いは無理かなぁ。僕、君達となら話が出来ると思ったのに……」

「いや、ごめんごめん……私のエルダー、ちょっと気難しい奴でさ!私達も、君と話せたらいいなって思ってるの!!ほらセリオス、頭を下げる……!!」

 ルナは、ルウ君を機嫌を取るべく笑顔で弁解しながら、セリオスの頭を掴んで強引に謝らせようとする。

 考えを曲げないのを体現するように、セリオスは抵抗する。

「し、しかし……!」

「説得出来るまたもない機会なんだ!頼む、ここは折れてくれ……!!」

「クッ……!」

 俺の言葉に納得したか、抵抗を止めて頭を下げた。

「…………まぁいいや!それじゃあ、僕のホーム……楽園に案内してあげるから、ちゃんと付いて来てね」

「ら、楽園?」

 突拍子もない言葉に、ルナが片眉を上げる。

「フン、益々怪しいな……」

「しぃ!」

 懐疑的なセリオスを窘めながら、俺達は車に乗り込む。

 その様子を見たルウ君は、自身を虹色に輝かせて――。

 膨張し、湾曲。

「ッ!」

 この車を包み込める程の巨大な羽を持った翼竜へと形を変え、空へ飛び立った。

 俺はアクセルを踏み、彼に追従する。

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