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Seventh Øne  作者: 駿
39/63

運命の7人目 ⑥

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 イレイノムの右手から絶え間なく発射される、空気を圧縮して生み出された弾丸を、加速と減速を交互に織り交ぜて回避する。

 俺はオーバーを中心に、結界を張って飛行している。

 結界の効力で奴の起こす風の影響から免れ、空を飛ぶ奴の土俵に立てているが――。

 奴の纏う風の防壁に飛び道具を弾かれ、近づくのにもカウンターのリスクが伴う状況だ。

「ハァ、ハァ……チィッ…………!」

 戦いが長引いてしまっている。

 初めて相見える強力な人型の上級イレイノムで、風を操るという厄介な能力。

 言い訳はいくらでも立てられるが、そんなもの集落に住む人達は聞きたくないだろう。

 クロム達の状況はどうなっているのか、犠牲者が出ていないか。

 確認する暇もないのが、もどかしい。

 あと少しで、ドローンが下級の殲滅を完了し、多対一へと持ち込める。

 それまでは――。

「ッ!」

 イレイノムがこれまでにない状況を取る。

 右手を握り、中からゼロサムを放出して刀身状に押し留めた。

 ゼロサムの剣を装備したイレイノムは、こちらを見詰め静かに切先を向ける。

 接近してくると言っているようなものだ。

 いいだろう、そっちから来るのなら俺がカウンターをお見舞いしてや――。

「ッ⁉」

 身体を右へ傾ける。

 オーバーを急加速させるよりも、防衛本能が迫る死を察知したから。

 ――それは正解だった。

 イレイノムは俺の眼前に、息をもつかせぬ突発的な超スピードで肉薄し、突き出したゼロサムの剣で結界をあっけなく破壊したのだ。

 風を使っての高速移動!

 接近するなら、その手を使うことも想像出来たろうに――。

 抜かった!

 イレイノムは間髪入れずオーバーをゼロサムで裂いて、機体を抹消。

 俺は、身動き取れぬ降下を強いられた。

「クッ……!」

 イレイノムは直ぐ様ゼロサムの刀身を伸ばし、落下する俺へ振り下ろす。

 倒れ掛かる塔のように迫る、白き致命の剣。

 間に合うか、結界――!

「させるかァァァァァァッ!!」

「ッ!」

 女の声⁉

 声のした右方へ視線を向け、目を疑った。

 金の翼を羽ばたかせる同世代の知らない女性が、猛烈な速度で風を切って飛来し、俺の真上へ出てゼロサムと向かい合い――。

 右腕に取りつけていた盾らしき装備から、光の壁を展開したのだから。

 壁はゼロサムと衝突。

 白光の閃きを散らし、完璧に防いで見せた。

 俺はオーバーを再召喚して搭乗、落下を止める。

「ギリギリセーフ!だよね、大丈夫⁉」

「君は…………⁉」

「優木ルナ!さっきアンサラーになったの、よろしく!!」

「優木……?」

 まさか、あの人の娘か。

「……ありがとう、俺は宗方アラタ」

「クロちゃんの仲間なんだよね!これからアンサラー同士、一緒に頑張ろ!!」

 濁りのない朗らかな笑顔を向け、俺を味方と信じ、頑張ろうと明るく呼び掛ける。

 ……間違いなく、良い人だ。

 そんな彼女が、アンサラーの7人目とは。

 クロムといい、やりづらい――。

「気をつけろ、奴を風を操る……!」

「風ね!了――」

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 イレイノムは再び、風を使っての高速移動による奇襲を実行。

 標的は、優木ルナだった。

「うわぁッ!?」

 未だ現出させている剣ではなく両足による脚撃を放って、壁で身を守る優木ルナを斜下の遠景まで押し出し、俺達の距離を隔てた。

 狙いは先ず俺という訳か――。

「ッ⁉」

 だがイレイノムの目論見は、失敗に終わる。

 突如、奴の背後から黄金の光が眩く発し――。

 遠ざけたはずの優木ルナが、光の中から転移して現れたことによって。

「貰ったッ!」

 優木ルナは背中を空けるイレイノムに、盾の刃で斬り掛かる。

 俺もアームを装備し、斬撃に合わせて鉄の拳を振るう。

 奴は高速移動した直後で風を纏っていない、今なら――。

「ッ⁉クウッ……!!」

「うわぁぁぁぁぁッ!?」

 強烈な圧が攻撃を捻じ曲げ、俺達の身体を吹き飛ばす。

 イレイノムは、乱回転する空気の渦を自身の周囲に発生させたのか。

 防御がこうも早いとは!

 身体が回り、視界が定まらない中――。

 俺はオーバーに内蔵された自動制御機能、優木ルナは翼の羽ばたきによって体勢を取り戻した。

 奴はどこへ――。

「ッ!」

 見失ったイレイノムを探す俺の眼に、歪んだ空気が映る。

 奴が放った空気の弾!

 急ぎ、結界を自身に展開。

 弾は結界に激突して炸裂するも、結界を割ることなく、風が結界を横切るのみに終わる。

 周囲を見渡しても、イレイノムの姿はない。

「ッ!」

 まさか。

 そう思い、オーバーを真上へ上昇させ、下を見る。

「ッ、やはりな……!」

 オーバーで隠れ、俺の死角になっていた真下に、イレイノムがいた。

 右手に、ゼロサムを最大限まで充填した状態で。

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 右手を俺のいる頭上へ突き出し、イレイノムはゼロサムを発射する。

 解き放たれた光線はイレイノムの姿を隠し、浮上する大地の如く迫り来る。

 だが発射される寸前に気づいたお陰で、距離を取れていた。

 最大加速で、オーバーの進路を左へ変えてゼロサムを回避する。

「なッ……⁉」

 ゼロサムが、左へ曲がり俺を追尾した!

 馬鹿な、風で強引に軌道を変えたというのか。

 あまりの意表に震撼し、身体が硬直する。

 これでは、躱し切れない!!

 展開していた結界もあっけなく破壊され、俺の身体は白に呑まれ――。

「させない!!」

「ッ!」

 優木ルナが発光と共に俺の前へ転移し、またしても盾の壁で俺をゼロサムから守った。

 白の怒涛が、壁を突き破る勢いで優木ルナに押し寄せる。

「ぐっ、ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」

 このゼロサムは押し留めた剣ではなく、エネルギーの直接放射。

 優木ルナの身に掛かる圧力は尋常ではない。

 俺はオーバーを駆り、イレイノムの後ろへと回る。

 今の内にイレイノムを倒してしまえば、ゼロサムは止まり、決着もつく!

 軌道変更に風を使っているのなら、防御は出来まい。

 ドグマ・バーストで――。

「OOOoooooooooooooッ!!」

「ッ⁉しまッ――!!」

 俺の身の丈に勝る程の掌が上空より堕ち、オーバー諸共俺を叩き落した。

 衝撃でオーバーと俺の足を繋ぐ固定器が破損。

 成す術なく山肌に身体を打ち、転げ回った。

「クッ、ウゥ…………!」

 お邪魔虫が、ドローンの攻撃を掻い潜ってやって来たか。

 上級を倒すことばかりに没頭して、抜けていた。

 身体を起こす中、跳び上がって俺を攻撃した敵が着地し、山が震撼する。

 俺を、下級イレイノムを見る。

 奴を除いた上級に匹敵する程の体躯。

 大きな鼻と耳が目を引かせる、体毛で覆われた巨人。

 全く、面倒な!

 優木ルナは未だ、ゼロサムと競り合っている。

 いつあの防壁を破られてもおかしくない、危うい状況。

 こんな奴の相手をしている場合ではない!

「OOOOOoooooooooooooッ!」

「邪魔をするなッ!!」

 手早く倒して上級を討つべく、光線を発射するライフル銃をデバイスで生成。

 銃口に銀朱の光を輝かせ、イレイノム目掛けて引き金を引こうとした。

 その時だった――。

「ッ!」

 漆黒に包まれ、長い尾を引いた矢の如し飛翔体が、音すら置き去りにして巨人イレイノムの首へ真横から激突。

 勢いを衰えることなく貫き、イレイノムを消失させた。

 あの黒い理気力は、間違いない――。

「クロムッ……!!」

 口から思わず漏れた名前に応えるように、包まれていた理気力が晴れ、黒衣を靡かせる神尾クロムの姿が明らかになる。

 クロムは、先にいる上級イレイノムを見据え、2つの穂を向ける。

「ウオォォォォォッ!!」

 穂の切先を合わせ、それぞれから放出される理気力を混成させた、漆黒の塊を撃ち出した。

 攻撃を感知したイレイノムは、即座にゼロサムを止めて風で舞い上がり、塊を躱す。

 一撃を外し、落下していくクロム。

 俺はオーバーを2機生成し、1機をクロムへと差し向ける。

 クロムはオーバーに気づき、俺が寄越した物であると理解し、搭乗。

 直ちに上昇し、イレイノムへと向かって行った。

「ッ!」

 山の下りから、滑走音が響く。

 この音は、ランディングギアの――。

「アラタ。お怪我はありませんか?」

「アクトリア……!」

 アクトリアの操るアイゼンが、俺の前へやって来る。

 クロムとアクトリアがここへ来た、ということは――。

「片づいたのか」

「えぇ、それから……」

「ッ!」

「山にいたイレイノムも全て」

 アクトリアの後に続き、殲滅を任せていたドローン達も現れ、俺の周囲に整列する。

 やっと俺達の方に、風が舞い込んできたようだな。

 勝利の風が――!

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