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Seventh Øne  作者: 駿
32/33

繋がり ②

 Bエリアへの道半ば。

 俺達は、雑草が生い茂る手つかずの田畑が広がる車道を走っていた。

 こうして来た道を戻っていると、アンサラーになってからの今までを思い出す。

 ラスタと出会い、アンサラーとしてイレイノムと戦い、人を守ろうとしてきた。

 その結果、守れた命はあるが、守れなかった命も沢山あった。

 俺が不甲斐ないばかりに皆消えてしまった、Dエリアがそうだ。

 ミナト君がイレイノムに憑かれるのを止められなかったのか、最初から自傷覚悟で決着をつけていれば結果は違ったのではないか。

 頭の中で、そんな自責と後悔がぐるぐると巡る。

 どんなに考えたって、やり直せはしないというのに。

 Dエリアも、あの時も――。

「……………………」

「クロム、浮かない顔をしていますが、どうしました?」

「えっ……いや、何でもない!」

 駄目だな、静かだといつもこんな思考に陥る。

 考えを切り替えろ。

 俺に出来るのは今やれるべきことだけ、無念があるならその分を未来に注ぐだけだ。

 俺の身を賭して――。

「ッ!」

 視界の端で、動く物体を捉えた。

 今走っている車道の横、遠く離れた別の車道で。

 車が、俺達と並行して走っていた。

 それも何かに慌てているのか、かなりの猛スピードで。

 全員が、それに気づいている。

「イレイノムに追われている!」

「えっ⁉」

「よく見てみろ…………!」

「ッ⁉」

 アラタの言う通りだった。

 走る車の後ろ上空から、着物を着た長鼻の人型イレイノムが翼を広げ、影を落としながら追い掛けていた。

 その人の命を、消す為に――。

 無念を注ぐ機会が、いきなりやって来た訳だ。

「皆、行くぞッ!」

 急ぎハンドルを切り、車を方向転換。

 あの車が走っている道まで、全速力であぜ道を突き進む。

「ラスタ、イレイノムを撃ってくれ!」

「はい!」

「俺達もやるぞ!」

「かしこまりました」

 ラスタは槍からの黒塊弾。

 アラタとアクトリアは、端末を操作して生成したライフル。

 左側のドアを開き、身を乗り出しながら一斉にイレイノムへ発砲する。

 しかし、イレイノムは一目俺達を見るや否や、瞬時に翼で身体を翻し、狙撃を回避。

 そして――。

 手に持っていた葉のような団扇を、こちらへ振るい――。

「ッ⁉」

 強烈な突風を、車に吹き掛けた。

「ウッ、クッ…………!」

 フロントガラスに砂塵を叩きつけられて、前景が見えなくなった。

 それだけじゃない。

 風で車体が、横に押し流される――!

 取られるハンドルを必死に押さえ、田んぼへ落ちないよう制御する。

 3人は風の圧力と車の不安定で、シートに打ちつけられてしまう。

「これでは、狙撃は難しいですね…………」

「せめてあちらの車道に移れれば……!」

 イレイノムは元の標的を再び追跡を開始し、俺達と同様、車に向けて団扇を振るった。

 あの強烈な突風を受けた車は、制御し切れず田んぼへタイヤを踏み外し、横転してしまう。

「おい、不味いぞ……!」

「分かってる!!」

 イレイノムは横転した車に降り立ち、腰に収めていた刀らしき武器を鞘から抜き取っている。

 共命理をしている時間はない、早く辿り着かなくては――!

「もういい、ここで止めろ!」

「えっ?」

「考えがある、いいから止めろ!!」

 アラタの命令に、俺は一瞬戸惑いながらもブレーキを踏み込んだ。

 車は砂塵を撒き散らして停止し、全員降りる。

「アラタ、何だそれ⁉」

「今からこいつでお前をぶっ飛ばす!イレイノムの所へ行って来い!!」

「えっ⁉」

 いつの間にか、自身の何倍もの大きさを持つ巨大アームを右腕に纏ったアラタが俺に近づいた。

 アラタはその右腕で以って、俺の腰を掴んで身体を易々と持ち上げ、背を向ける程に大きく振り被った。

「マジか……!」

 この大胆過ぎる作戦に一瞬動揺するが――。

 手段を選んでいる場合じゃない。

 あの車にいる人を救う為に、俺は球にでも何にでもならないといけない。

 そう思い直し、生成した槍を握り締めながら覚悟を決める。

「飛べぇッ!!」

「……ッ!!」

 アラタの巨腕が一気に振り下ろされる。

 全身に遠心が掛かり、俺は放り投げられた。

 砂礫が、一直線で進む俺に遅れて舞い上がる。

 空気の抵抗が胸を押し、視界がぶれる。

 だが、正確にイレイノムに向かっているのは分かる。

 アラタは俺に倒してくれると信じて、飛ばしてくれたんだ。

 応えてみせるさ!

「ッ……オォォォォォッ!!」

 空気抵抗を肌に受けながら槍を構える。

 一瞬にして間合いは詰まり、車内にいる人間へ、逆手で切先を降ろそうとするイレイノムに――。

 すれ違いざま、槍を横薙ぎに振るった。

 入る!

 そう思ったが――。

「なッ⁉」

 イレイノムは身体を跳躍させ、俺の一撃はいとも容易く躱される。

 だが、まだだ!

 身体を捻り、槍を跳び上がったイレイノムへ向け、黒塊弾を撃ち出して翼へ命中させる。

 意地で一矢を入れられたが、俺の身体はそのまま畑に突っ込んでしまう。

「ウアアァァァァァァ……ウゥッ…………!ウェッ、カヘッ、ッ…………!!」

 数え切れぬ程、地面をのた打ち回る。

 顔に幾度も雑草や土を押しつけられ、口の中に自然という自然が隙あらば入り込んだ。

 イレイノムは――!?

 命中したのは確認出来たが、どうなったのか分からない。

 口の物を吐き出しながら、倒れた車の方を見る。

「ッ!」

 車の傍にラスタ、アラタ、アクトリアが駆け寄っていた。

 3人が一斉に掛かれば、特殊な能力を持つイレイノムでも対応し切れない。

 弾丸の群れを躱し、剣で受け流しながら、奴は車から退いた。

 皆に合流し、俺も車の前に立ち塞がる。

「ラスタ、車内にいる人を頼む」

「はい」

「アクトリア、お前も頼む。怪我があるなら治療もしてやってくれ」

「分かりました」

 この2人に任せておけば、大丈夫だろう。

 後はアラタと一緒に、イレイノムを倒すだけだ。

「悪い、あの一撃で仕留められなかった」

「気にするな。牽制球にしては上々だ」

「…………どうも」

 イレイノムは腰の帯の後ろからあの団扇を右手で取り出し、何度も大きく振り回して俺達に不断の烈風を吹き掛ける。

「チィ…………!ッ!?」

「グッ、ク……ッ……ォォォオオオオッ!!」

 主導権を握られるわけにはいかない。

 強引にでも打って出る――!

 砂塵を伴う向かい風をまともに受けながら前進し、奴へ接近する。

 あの厄介な風を吹けなくしてやるよ!

 ある程度の間合いで、穂先から黒塊弾を放った。

 弾は狙い通り、団扇を振るう奴の手に命中。

 着弾と同時に風は一瞬止む。

 俺はその隙を突いて一気に迫り、右脚で奴の腕を蹴り上げて団扇を弾き飛ばす。

 団扇は大きく舞い上がり、風で掻き消されたみたく、空中で消失した。

 イレイノムは後退りしながら翼を広げ、空へ逃げるつもりか羽ばたかせる。

 だが――。

「…………?」

 イレイノムは、空へ飛び立たない。

 何度飛ぶ仕草をしても、一向に飛翔しなかった。

「何だ…………?」

 思わず面を食らってしまった俺だが、アラタはこれを好機と見て軽機関銃を生み出し、発砲する。

 イレイノムは咄嗟に両翼で身体を覆い、繰り出される弾幕から身を守った。

 弾丸を受ける翼から、白い羽が舞い落ちる。

「回れクロムッ!」

「おう!!」

 イレイノムは自分の翼で視界を奪われている。

 俺は駆け出し、イレイノムの背後へ回って背中を槍で突き刺し、黒塊弾を零距離で発射。

 衝撃でイレイノムは前のめりに吹き飛び――。

 銃ではなく、右腕にあの巨大アームを纏って待ち構える、アラタの元へ。

「覚悟はいいか…………?」

 アームの各所からバーニアの火を噴き出させながら、豪快に振るわれたアラタの右拳は――。

 苦し紛れに振り下ろされる刀ごと、イレイノムの顔面を叩き潰した。

 身体は車輪のごとく回転しながら落下し、地に着くと同時に爆ぜり、消滅する。

 危うい場面もあったが、俺達は人を守り切れた。




 今の戦闘で、奴の能力の一端を見ることが出来た。

 先ず1つ、あのイレイノムの風を同時に受けた時、俺は動けなかったにも関わらず、奴が動けたこと。

 現時点で俺とクロムに膂力の差はない、なのに何故動けたのか――。

 そして2つ、奴が飛行出来なかったこと。

 確かに奴はあの黒い弾を受けた、しかし飛べなくなる程の外傷ではなかった。

 そうだったとしても、イレイノムが自分の傷も気づかず飛行するとは考え辛い。

 つまり、黒いのが当たったことで、イレイノムの気づかぬ間にクロムは飛行能力を奪い去ったんだ。

 何を意味するのかは断定出来ない、これ以降も奴の力を見る必要があるな。

「アラタがいてくれて助かった、ありがとう」

「あぁ」

 クロム。

 お前は一体、何を望んだんだ。

「あ、あの、ありがとうございました。どうお礼すればいいのか…………」

 俺達の元に、あの車内にいた中年の男性が駆け寄り、深く頭を下げる。

 大した怪我はなさそうだ。

「いえ、気にしな――」

「…………どうした?」

 クロムは男性の顔を見るなり、言葉が途切れて驚きの表情を浮かべた。

 男性も、クロムの顔を見て驚いていた。

「もしかして、ルナのお父さんですか!?」

「そう言う君は、まさか…………クロム君か!?」

「知り合いか?」

「あぁ、俺の友達のお父さんなんだ!こんな所で会えるなんて!!」

「私もさ!君と再開出来るなんて!!」

 クロムと男性は互いの腕を取り合い、2人して跳ねながら回り始める。

「いや、大きくなったなぁクロム君!こんな立派になって!!」

「おじさんの方はお変わりなく!無事で本当に良かったです!!」

「あははははは!!」

「あははははは!!」

「……………………」

「……………………」

「あの女性の父親…………」

 感動の再開でさぞめでたいが、いつまでも喜んでいる場合じゃない。

 咳払いで俺達が見ていることを気づかせる。

 喜びの有頂天だった2人も、気恥ずかしくなり離れた。

「と、取り敢えず……俺達の車に乗っていってください。積もる話は、そこで」

「あぁ……助かるよ」

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