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Seventh Øne  作者: 駿
30/42

I'm with you ③

 ランディングギアで滑走。

 飛来する下級の竜型イレイノムをミサイルで撃ち落とし、ブレードですれ違いざまに斬り捨てながら、上級に迫る。

「全く…………一体何匹いるんだ!」

「下級イレイノムの数は、残り17です」

「結構倒したはずなんだがな…………!」

 手下の数は決まっている訳じゃない。

 下級イレイノムは、移動中の上級イレイノムが接近した時、上級に類似した姿へ変化し、手下となって付いていく。

 だから上級が引き連れる下級の数には、多少のバラつきがあるとアクトリアは言っていたが、流石にこれは数が多過ぎる。

 まぁ、悪態を付いた所で何か変わる訳でもないがな!

「アラタ。イレイノムがゼロサムの発射態勢に入りました」

「ハァ、ハァ…………!ッ、させるか!!」

 上級イレイノムは囮にしていたドローンを全部倒して、集落へ狙いを戻していた。

 背部レールガンを展開。

 結界へゼロサムを放とうとするイレイノムの頭部へ、砲弾を撃ち放つ。

「ッ!」

 弾は全て命中。

 しかし翼に遮られ、ゼロサムの妨害は防がれてしまう。

 ならば――!

 スラスターを全開。

 飛び道具を発射し続け、翼による防御の姿勢を取らせながらイレイノムの足元へ急接近。

 そして上昇――。

 イレイノムの下顎へ右拳を叩き込み、間髪入れず右腕のビーム砲を接射して、顎を跳ね上げる。

 直後、ゼロサムは上空へ放射。

 不安定な体勢でゼロサムを発射したイレイノムは勢いに振り回され、踊り狂ったようにゼロサムで一帯を凪払って消失させ、仰向けに転倒した。

 好機!

 あの鳥と同じように、フルバーストを――。

「ッ!」

 センサーに反応。

 翼を生やした蛇の下級イレイノムが2体、横から飛来してきていた。

「チィッ!」

 向けていたガトリングの照準を上級から下級へ変更、即座に射撃して瞬殺。

 本来なら、そうしたかったが。

 俺の身体はもう――。

 精密な操作が出来なくなっていた。

 視界が二重にぶれて腕が鉛のように重い、身体の反応が自分の思考より半拍遅れる――。

 納めていたブレードを再び両手に構え、下級イレイノムの接近に合わせる形で胴体を切断する。

 手っ取り早く片付けられなかった。

 お陰で――。

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 あの上級イレイノムに、起き上がる時間を与えてしまった。

 繰り出される、アイゼンに比類する規模の巨掌。

 飛び道具で怯む奴じゃない、躱した所で次手を避けられる余裕もない。

 真っ向勝負へと、打って出るしかない……!

 ブレードを連結。

 レーザーを発振し、一条の巨大な斬光へと変化させ、振り被りながら突貫。

 ――巨掌と、激突する。

「クッ……!」

 機体は大きく揺れ動き、腕部フレームが軋みを上げる。

 だが、レーザーはイレイノムの巨掌を衝突点から赤熱化させ、溶かしつつあった。

 このまま競り合いを続ければ、言葉通りの手痛い損傷を奴に与えられる。

 だが――。

「ッ⁉」

 イレイノムは俺の勝機を簡単に掻き消した。

 翼をはためかせて僅かに飛翔し、アイゼンへの圧力に落下の勢いを加えたのだ。

 モニターは奴の白面に覆い尽くされ、光すら閉ざされる。

 機体は、あっけなく地へと沈み込んだ。

「グゥ……ッ!!」

 衝撃と反動から来る、身体の過伸展と過屈曲。

 そして、一部内部機関の爆発による破片と熱風が、俺を襲った。

 警告音と機体の圧壊音が鳴り響き、各所で漏電が発生する。

 ブレードはへし折れ、武装も全て使用不能。

 ここまでか――。

「アクトリア、自爆だッ!」

「……だs、つ……不……能でs。よ、し……の、d……か?」

「押し潰されるよりマシだ!共命理した状態なら生き残れるんだろ!!」

「…………ry、か、い……し――」

 ノイズ混じりの音声と共に、アクトリアが自爆シークエンスを開始する。

「ッ!」

 その寸前――。

 アイゼンに掛けられた圧力が、突如として解かれた。

 まだ辛うじて生きているサブモニターに、あの上級イレイノムが横転する姿が映る。

 何か強い外力が、あのイレイノムを飛ばしたのか。

 まさか!

 ひしゃげて開かなくなったコクピットを両腕でこじ開け、外へ出る。

「………………」

 やはりか。

 イレイノムを吹き飛ばし、俺の前に降り立ったのは――。


 眠りから目覚め――。

 ラスタとの共命理を果たしたクロムだった。


 ラスタの服装を、漢服の如く上衣下裳の黒装束としてクロム身体に合うように纒い――。

 左目はラスタの同じ青紫、右目は金のオッドアイへと変化。

 そして――。

 両手に、2本の黒槍を携えていた。

「今までの恩返しにはなったか?アラタ」

「……………………」

 そうか。

 あくまでお前は、アンサラーとしての道を選ぶという訳か。




「Ooooooooooooooo!!」

 2体の下級イレイノムがアラタじゃなく、こっちへ向かってくる。

 水掻きのある両足を動かして長い身体を引き摺るイレイノムと、前端の頭が後端の頭に噛み付き、長い胴体を輪として転がる双頭のイレイノム。


 先ずは水掻きの方からだ!


 こちらから瞬時に詰め寄り、反射的に開いたイレイノムの大口に片方の槍を挟み込んで捻り、空いた首筋にもう片方の槍を突き刺す。

 止めに内部で黒塊弾を発射し、イレイノムの身体を吹き飛ばした。

 炸裂する残骸に視界が遮られる中、俺の目は次の標的を捉える。

 もう1体のイレイノムが輪の形を解き、それぞれの口から白い液体を高圧力で放つ。

 俺は身体を回転させると共に、穂先で地面に輪を描く。

 簡易結界。

 液体は俺に届くことはなく、描いた円から迫り出した炎状の壁が、液体を1滴たりとも通さず弾いた。

 そして俺は直ぐ様、2つの槍から頭部を完全に呑む規模の大玉黒塊弾を放ち、双頭を爆散させ、消失させる。

「……………………」

 下級を難なく撃破する、自分自身の膂力と桁違いの理気力に打ち震える。

 これが世定と共命理を経た、アンサラーの力。

 繰り出す攻撃の1つ1つが、今までのドグマ・バーストに匹敵する程だ。

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

「ッ!」

 白い光が起き上がった上級イレイノムの口から発している。

 ゼロサムか。

 最早発射される寸前で回避は難しい、だったら――!


 景色を真白に染める、光の懸河が放たれる。

 俺はそれに対し、真正面からの突破に臨む。


「ウォォォォォォォォッ!!」

 2本の槍の切先を合わせる。

 そこから溢れ出した理気力を融合させ、渦巻く漆黒の塊を生み出し、解放。

 白と黒が衝突し、天地に激しいうねりが走る。

「ッ、グッ…………ウゥ…………!!」

 衝突した時点での黒塊弾は、ゼロサムを押し返していた。

 しかし、徐々に勢いは殺され、再びゼロサムが勢いを取り戻そうとしてくる。

 何せイレイノムは吐き続けている、このままでは押し負けるのは必然。

 なら、こっちも出し続けるまでだ!

「ハァァァァァァッ!!」

 再び切先を合わせ、第2打を放つ。

 2打の弾は初弾に吸収され、競り合っていた初弾は膨張し、再びゼロサムを抑え込む。

「まだまだぁッ!!」

 俺は叫びと共に、矢継ぎ早に槍を合わせ、次弾、さらに次弾を撃ち込む。

 第3打、第4打、第5打――。

 黒は黒を呑み込み、その規模と勢いが肥大化していく。

 白を押し、喰らい、イレイノムへと迫る。

「もう一押し…………!!」

 ゼロサムと正面からぶつかり合うなんて、河の流れを塞き止めるようなもの。

 やろうと思うこと、それ事態が愚かに思える無謀だ。

 だが、今の俺なら――。

 俺達なら――!

「Oooooooooooooooッ!!」

「ッ!?」

 竜に似た外見を持った下級の人型イレイノムが、こちらへ襲い掛かって来ていた。

 奴に構っている暇なんてないのに――!

「ッ!」

 下級イレイノムの首が、飛び込んで来たアラタの繰り出す蹴りで折れ曲がり、身体はアラタを乗せて地面を擦る。

 アラタはイレイノムの頭に、生成した長銃を向けて発砲。

 俺をイレイノムから守り、排除してくれた。

「アラタ!」

「雑魚は俺が引き受ける!ボスはお前が倒せ!!」

「…………あぁ!!」

 倒せ。

 その言葉が強く胸を打ち、槍を握る力が強くなる。

 アラタが、俺に託してくれた。

「オォォォォォォォォォォォッ!!」

 俺はその期待に応えるべく、再び黒塊弾を発射する。


 この第6打が、まさしく競り合いの決定打となった。

 吸収して膨れ上がった巨塊は、勢いを完全にこちらへ傾かせ、ゼロサムを呑み砕きながら突き進む。

 そして光を完全に喰らい尽くし、奴の白面へと――。

「ッ!?」

 野郎!

 右翼と右腕を犠牲に、黒塊弾を防ぎやがった!!

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 衝撃で大きく後退するイレイノムだが、身体の喪失など意に介さない。

 咆哮を上げながらこちらへ迫り、高々と右足を上げる。

 巨大な影が、俺を覆い隠した。

 俺は横へと跳び跳ね、イレイノムの踏み付けを躱す。

 振り下ろされた巨脚は周囲に突風と粉塵を撒き散らし、地面に陥没した白い足跡を刻み込む。

「ッ!」

 これで終わりじゃなかった。

 イレイノムはその巨体を軸に回転し、一帯を根こそぎ凪払う尻尾で、俺に追撃を掛ける。

 迫り来る衝撃が、空気を震わせる。

「ハァァァァッ!!」

 俺は2本の槍の石突部を突合。

 瞬時に1本の双刃刀へと変貌させ、大きく振り被る。

 高く掲げられた前端の刃は理気力を纏い、漆黒の輝きを帯びて幾倍にも膨張し、大気を圧する。

「オオォォォォォォォォォォォォッ!!」


 自重で足が地面に沈みながら、俺は渾身の力で振り下ろし――。

 迫る大尾を両断した。


「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 怯んだ今が好機!

 俺は、刃を覆っていた理気力を解き、双刃刀を双槍へと戻して穂を大地へ突き立て、理気力を放出。

 その反動で、宙へと跳んだ。

 狙いはただ一点、奴の喉笛。

 一瞬にして辿り着いた俺は右足を繰り出し、その分厚い首に深くめり込ませた。

 巨体が仰け反り、イレイノムは大地を揺らして転倒。

 俺は畳み掛けるべく双槍を構え直し、槍を間断なく幾度も、全速力で交互に突き出す。


 突き出した穂先はその度に閃き、黒塊弾は放たれる。

 俺は雨霰の如く物量を実現させ、徹底的な暴力をイレイノムへ撃ち込んだ。


 爆裂する黒い光が重なり合い、イレイノムの巨体を覆い尽くす。

 イレイノムの身体は、刻一刻と黒に染め上がっていく。

 このまま押し切れる!

 そう思ったが――。

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

「ッ!」

 チャージを短縮したゼロサムが、横薙ぎに放たれる。

 咄嗟に穂先の向きと出力を変えて、上空へ今出せる全力の黒塊弾を放ち、その反動で禍害な白光を切り抜けた。

 だが4本指の巨影が俺に迫り、映る空を覆い隠して――。

「グッ…………!!」

 俺を、地へと叩き落とした。

 地面との衝突で身体は弾かれ、無様に転がり続ける。

 視界は身体の衝撃と共に揺さぶられ、回る天地を映す。

「ッ、ゥ…………ウゥ……………………!!」

 だが大丈夫だ、共命理の力が身体を守ってくれた。

 まだ、戦える。

 俺は立ち上がり、再び槍を――。

「ッ!?」

 構えようとするが、足が勝手に膝を付いてしまう。

 あの攻撃によるものではないはず、身体の疲弊か。

 調子に乗ってペースも考えず、戦えばこうもなるか。

 ……仕方ない。

 今から叩き込む一撃に、勝負を懸ける!

 俺は再び槍を合わせて双刃刀に形を変え、ドグマ・コアから最大限の理気力を引き出して双刃刀に纏わせる。

「…………!」

 前後の刃に宿る、稲妻を発する程に力を迸らせる禍々しい漆黒の光。

「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyッ!!」

 立ち上がって俺にゼロサムを放とうとするイレイノムに、前端の刃から理気力を光線として撃ち放つ。

 高速で一直線に進む光線は胸部を捉え、イレイノムの胸を押し潰しながら大きく後退させた。

 炸裂もせず押し込み続ける光線は、やがて別次元への穴が開いたかのような暗黒の渦へと変化。


 イレイノムを引き寄せ、逃さずにその場へ固定させる。


 俺は双刃刀の向きを反転。

 魂の奥底から力を振り絞り、渾身の叫びを共に、イレイノムへと双刃刀を投擲する。

「ウウウオオオオオォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 双刃刀は周囲を吹き荒しながら驀進し、渦へと到達。

 渦を吸収し、螺旋を描く黒光となってイレイノムの巨躯を抉り裂き、穿つ。

 勝利の、決定打だ――!


「kkkkkiiiiiirrrrrrrrrrrrrrrrrrYyyyyyyyyy――!!」

 イレイノムの身体は完全に黒く染め上がり、断末魔の咆哮を残して破裂。

 残滓を撒き散らしながら、消え去った。

「ハァ…………ハァ………………!!」

 終わった。

 そう、感じた瞬間――。

「あっ…………」

 全身から力が抜け落ち、身体がバランスを崩して傾いてしまう。

「ッ!」

「お疲れ様でした。クロム」

 倒れる俺を、いつの間にか共命理が解除されて元の姿に戻っていたラスタが、腕で優しく受け止めてくれた。

「へへ…………やったな、俺達。あんなでっかい化物…………倒しちゃったよ」

「はい、そうですね」

「ありがとう。全部、ラスタのお陰だ」

「そんなことはありません。これは貴方の勇気と覚悟、そして信念があったからこその勝利です」

「そうじゃない」

「え?」

「あの時ラスタと出会ったお陰で、今の俺があるんだ」

「……………………」

「ラスタは俺に…………道を示してくれた。怖じけて塞ぎ込んでいたままだった俺の心を、ラスタは変えてくれた。1人じゃないって、支えてくれた」

「クロム…………」

「だから全部…………全部、ラスタのお陰なんだ」

「ありがとう、ございます」

「だから、それは俺の台詞なんだってば…………」

 カリン。

 見ていてくれたか。

 俺、ラスタと一緒に、これからも沢山の人を守ってみせるよ。

 守って守って、守り抜いたその先で。

 謝りに行くからな。

 夢の中じゃなくて、今度はちゃんと。




「神尾、クロム……………………」

 第6のアンサラーが、その座を満たした。

 残されしは、ただ1つ。

「セリオス」

「はっ」

「未だ、見つからぬか」

「今しばらく、ご猶予を頂きたく……必ずや、貴方様の御心に適う者を見出してみせます」

「遅れは許されぬ。速やかに果たせ」

 定めに答う者。

 眠りを破り、虚無を裂きて顕れよ。

 全てが揃うその刻――。

 世界の理を覆す、大いなる儀が幕を開く。

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