表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Seventh Øne  作者: 駿
27/42

銀灰の力戦 ③

 ラスタが笑顔になれるくらい美味しいものを、作ってやらないと。

 具に色んな物を入れれば、多様な味を楽しめられるおにぎりを、作ることに決める。

 米と水を入れたポリ袋を3つ、水を半分程入れた鍋に入れてカセットコンロを点火。

 沸騰させ、ある程度加熱したら、今度は火を止めてしばらく蒸らす。

「こっからだ…………」

 衛生面に配慮して、両手に袋を被せる。

 出来上がったご飯を鍋から取り出し、スプーンで中のご飯、そして中に入れる具を手にのせて形を整える。

 シンプルな塩を始め、保存食であるツナや鮭、梅干し、塩昆布、贅沢に牛丼まで、様々な具を入れたおにぎりを作り上げる。

「あの、私も作って…………いいですか?」

「え?」

 ラスタが、不安げな顔を浮かべながら協力を申し出てくれた。

 前回の大失敗が気にしているのだろうが――。

「あぁ、一緒にやろう」

 俺がいるし、滅多なことは起こらないだろう。

 何より、今の俺はラスタと共に何かをする時間を欲していた。

 ラスタは俺の隣へ立ち、俺と同じように袋を手に被せ、そこに米と具を乗せておにぎりを形作る。

「……………………」

 真剣におにぎりを作るその仕草は、とても新鮮で――。

 愛おしく思った。

「どうですか?」

 俺の作る様を見ていたからか、ラスタのおにぎりは初めて作ったにも関わらず、完璧な三角形だった。

「凄いな!天性の才能持ってるんじゃないか!?」

「まぁ、エルダーですから」

 天性の才能。

 その言葉で調子付いたラスタは、次々おにぎりを作っていく。

 様々な形があると伝えれば、その通りに完成させ――。

 果てには――。

「ま、まだ盛るのか!?」

「最高のおにぎりをご覧に入れましょう」

 そう言って超特大のおにぎりを作る始末。

「沢山の米の中に沢山の具材を閉じ込めた、これこそ最高のおにぎりです」

「……………………」

 バラバラな具をごちゃごちゃに詰め込んだ爆弾おにぎり。

 凄い、カオスな味になってそうだ。



「頂きます!」

「頂きます」

 皿に並んだ多種多様なおにぎり。

 俺達は1つ1つ手に取って口に運んだ。

「うん…………美味しい!」

 中身はツナ。

 マヨネーズが入ってなくとも、相性は抜群だ。

「ッ!」

「ラスタは、それ何だった?」

「牛丼、です…………」

「おぉ!当たりじゃん!!」

「凄く、美味しいです…………!!」

「だろうなぁ」

 ラスタは目を輝かせながら、噛み締めるように頬張る。

「さて、次は…………」

「クロム」

「ん?」

「…………意固地になって、ごめんなさい」

「…………俺こそごめん。焦ったばかりに、きつく当たっちゃって」

 言葉のあと、しばらく風の音だけが耳に残る。

 それは、互いの胸に引っ掛かっていた鬱屈を、風が運んでいくようだった。

「アクトリアに聞いたんですよね。世定の方法」

「あぁ。コア、に自分にとっての理想の世界を誓願することだって聞いたけど……合ってるよな?」

「…………はい、間違いありません。おにぎりを食べ終わったら、早速世定を行うのですか?」

「しても、いいのか?」

「アンサラーの志向に合わせるべきだと、思い直したんです」

「そうか…………でも悪いけど、まだ考えつかないんだ。暫く、考えるのに時間を使うよ」

「…………分かりました、待ちます。貴方の答えが出るまで」

「ありがとう。さぁ、冷めない内に食べよう」

「はい」

 ラスタが握った俵形のおにぎりを手に取る。

 そのまま一口、口に運ぶと――。

「…………フッ」

 噛み締める度に、ふんわりとした白米の甘さと、具材の旨みがじんわりと広がる。

 ほっとする味だ。

「……美味しいよ、ラスタ」

「ありがとうございます。クロムのも、美味しいです」

 彼女はどこか照れたように、けれど嬉しそうに微笑んだ。

 多分、俺も同じ顔をしている――。


 おにぎりを食べ終えた俺たちは、道具を片付けた後、車内でゆったりと過ごしていた。

 Eエリアに戻る際、先の戦闘で起きた俺の不調について、アクトリアは――。

「力の酷使が原因ではないでしょうか?」

 と、言っていた。

 瀕死の重傷を負ったあの戦いの後、自動的に治癒の力が発動した。

 だが、その状態から戦闘用の力へとスムーズに切り替えることができず、結果として力の不安定を引き起こしたらしい。

 「今日は一日、何もせずに安静に過ごすことをお勧めします」

 そう助言され、俺は素直に従った。

 何もしないというのはどうにも歯痒いが、この状態で無理に動いても、出しゃばって終わるだけだろう。

 だから今は身体を休めながら、思考に時間を使おう。

 理想の世界に、ついて。

「………………………………」

 これは誰の意見も聞かず、俺のみで考えないと意味がない。

 俺にとって、本当に良い世界とは何か。

 勿論、誰も死ぬことがない、というのは心からの願いだ。

 だけど人が決して死なない世界、というのは何か違う気がする。

 死がないことと、生きていることは、同じじゃない。

 それを否定してしまったら、きっと今を生きてる人達の姿も、否定してしまう。

 じゃあ、何なんだ。

 俺が求めているものは――。


「お兄ちゃん!」

「クロム!」

「クロム…………!」


「……………………」

 違う。

 これは、世界とは関係ない俺個人の願望だ。

 だけど。

 もしも、もう1度会えるのなら。

 それだけで、どれ程嬉しいだろうか――。

「ふぁぁぁ……………………」

 欠伸が出る。

 あの爆弾おにぎりを食べて腹一杯になったからか、眠気が来る。

「お休みになりますか?」

 ラスタが小さく問いかける。

 彼女の声は、今の空気に溶けていくように優しく感じた。

「あぁ、ちょっとだけ寝るよ」

 シートに深く背を預け、目を瞑る。

「夕方ぐらいまで、眠っちゃおうかな…………」

「起きたら、夕飯を作りましょう。また一緒に」

「そうだな…………」

 意識が、深い暗闇へ落ちていく――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ