お姫様抱っこ
歯を食いしばって移動し、なんとか部屋の隅にもたれかかった。
とても息をするのが苦しい。火傷はまだジンジンと痛む。
天井から振動と煤が落ちてくる。蟲が上にいるのだ。潰れるのも時間の問題だろう。
また少しずつ進んで、壁伝いに大きな柱を目指す。
柱の横ならば、倒壊に巻き込まれにくそうだ。
その途中で、窓の外が見えてしまった。
あの蟲の酸をもろに受けたであろう兵士が、溶けていく様を。
別に身体の全部が溶けたわけじゃない。左半分が無いだけなのだ。
そのせいでもっと悍ましく見えた。
「探したぞ。」
聞き覚えのある声がした。何時聞いたのか思い出せない。
脚元だけが見える。視界をゆっくりと上げる。
「重要機密を教えてもらおうか。」
身長が高く、質素な服だ。
「冗談だ。今はここを出るぞ。」
ニヤリと笑って片方の眉を上げている。ラストレンさんだ。
「…助かります。」
言うが早いか僕の事をさっと持ち上げて、抱きかかえられてしまった。
少し恥ずかしい。
正直担がれると思っていたので、乱暴じゃなくて助かる。
「しっかり捕まって…は居られ無さそうだな。」
ゆっくり歩いて民家を出たかと思うと、みるみる内に速度を上げて、あっという間に蟲達を置いてけぼりにしてしまった。
「どうして助けに来てくれたんです?」
何故ここにいるのか?とか、場所がどうして解ったのか?よりも、ふっと一番気になってしまった。
「嫌だったのか?」
首を横に振る。
「ならいいじゃないか。」
それで良くないから聞いたのだ。それが顔に出ていたのかもしれない。
「ここで下ろしてやろうか?」




