収集物回避
「一緒にたべますか?」
敵に出された食事をどうするのか見ものだと思っていたらどうだ。
毒味を私にさせるつもりなのだ。
なんと大胆な事だろうか。ほぼ本性を表したような物ではないか。
適当に拷問にかけて殺してしまおう。
誰かを呼びたいが、どうしようか。私は今一対一なのだ。油断は出来ない。
「…そうですか。」
うっかり返事をするのを忘れていた。少し考えすぎたかもしれない。
これによって毒を盛られたと思われただろう。明確な敵対と取られてもおかしくない。
密偵はカタリと音を立てて匙を構えた。
危険だ!私はすぐさま腰の後ろに挿している短剣の柄に手をやる。
しかし少年は芋の煮物を掬ってパクパクと食べ始めた。そして少し不服そうな顔をしている。
どういうことだ。自分には毒が効かないとでも言いたいのか。さっきまでは不服そうだった顔がみるみる嬉しそうに変わってゆくではないか。
少年はパッと顔をあげてこちらを向いた。しかし目をあわせた途端にすこし下にそらした。
「美味しいですよ?」
まだ私に食べさせるつもりだ。無論毒など入ってはいないが、特製の木の実や調味料には全て目がよくなったり美しさが増したりすると言われているものを使っている。
この者の意図が分からない。私にこれを食べさせてどうするつもりなのだ。
「ふむ。食事は終わったようだな。」
全ての物を平らげてしばらくするとラウムさんが戻ってきた。他の食べ物の匂いがする。きっと彼も何かを食べてきたのだろう。
それにしても助かった。さっきからずっとおじさんは僕をじっと見続けていて気まずいったら無かったのだ。
「それで早速続きの話を聞きたいのだが良いかね?」
もちろんだ。何処まで話しただろうか。船を降りた所までだったろうか。
その後も少しだけ話しをすると、僕が山を登った話にはかなり食いついてきた。
「吹雪はどの程度強かったのかね?風は?気温は?ほかに不運は無かったのかね?どのような道をたどったか覚えているかね?」
全てできる限り答えた。
「僕の腰ぐらい雪が積もっていました。山に押し付けられるように強かったです。ほかには無かったです。周りには雪しか無かったのでわからないです。」
「…というわけでここにたどり着いたのです。」
「ふむ。おもしろい!面白いぞ!お主は吟遊詩人にでもなって、自分の武勇伝を語ったほうがよいのではないのか。」
どうやらかなり気に入られてしまったみたいだ。
「よし!お主話をすべて信じた。そしてお主を私の収集物にしてしまうのはあまりに勿体無い!決めたぞ。私は前線にでる。」
よくわからないがとんでも無いことに巻き込まれている予感がする。




