諜報員
ラウム様がいい物を拾ったとおっしゃって言うので見てみれば。
「…。」
気絶している少年ではないか。それに何らかの祝福を受けているようだ。
おそらく服装からしてこの日焼けした肌の色と服装からして他国のものに違いない。
それに現在は国境の関所はほぼ封鎖されていて、国中に厳戒体制が敷かれているなかで突如現れたことも怪しい。
十中八九密偵に違いないだろう。
「ラウム様、危険です。どうみても諜報員ではないですか。」
「だからなんだというのか。諜報員ならばどうやってここに来たのかを聞き出す必要が有るではないか。」
たしかにそれはそうだが、ラウム様がそれをする必要は無いでは無いか。」
「それに、見てみよ。」
ラウム様は少年の瞼をそっと上げる。起きてしまわないかヒヤヒヤとさせられる。
「良い緑だと思わないか?私の収集物の一つにしたくなるほどの。」
確かにとても綺麗だ。しかしヒヤッとする。ラウム様の収集癖はとても灰汁の強いもので、人の身体の一部だろうがほしければ獲ってしまうのだ。
すると。
「…む。」
少年の様子が変わった。どうやら目を覚ましたらしい。
「ラウム様目を覚まされましたぞ。」
「おお!そうか、それは良かった。」
私は密偵ならばすぐにラウム様を守れるように動く準備と覚悟をしておく。
「助けてくれてありがとうございます。」
第一声に感謝を述べるか。戸惑う様子よりも先に感謝をしている。下手くそな演技すぎる。ほぼ密偵とみて間違い無さそうだ。
「おお、意識もはっきりしておるようだな。礼には及ばんよ。」
するとまたふらふらと少年が布団に倒れ込む。わざとらしすぎる。さっきまでハキハキと喋っていたではないか。
「相当弱っておるようだな。無理はせんでよい。余は寛大なのだ。」
流石はラウム様だ。完全に寝転んだ状態ではすぐに攻撃へは転じれない。おまけに少し恩まで売っている。
「ここは余の別荘で、その領地の村外れにお主は倒れておったのだ。余の名はラウム、貴族の三男だ。」
なんと言うことだ。敵の欲しがる情報を全て話してしまうとは。ラウム様はきちんと考えておられるのだろうか。
「僕の名前はリカルドです。平民です。」
平民の癖にラウム様に許可なく名乗りを上げただと!?万死に値する。
「見た所ゴルノジアの民であろう?その緑の瞳は何時見ても綺麗だからよく覚えている。」
流石はラウム様。(お前のことはお見通しだぞ)と暗に伝えて脅しを掛けている。
「そうだ。さっき礼には及ばんと言ったが訂正だ。お主には礼をしてもらいたい。」
密偵はかなり焦った表情をしている。そんなに感情を表に出しては密偵失格ではないのか。
「礼は君がここにどうやって来たかだ。教えてくれるかい。」
上手い!またもや流石ラウム様。さっきの文の恩ということにすれば、心理的に二回、いや三回の恩を売りつつ情報を引き出せる!
「失礼だがどうみても君がここまで旅をできるほど裕福には見えないのだ。なんたって大陸を三分の一は回っているのだからね。」
少年はホッとしたような表情をしている。予めそんな質問をされるのを見越して考えて来たのだろう。
「えっとその前に少しお話が有りましてですね…。」
その後少年はとんでもない爆弾のような情報を出してきた。自分が呪われていると言い出したのだ。意味が分からない。それを言うことになんの利点が有るというのだ。
必死になってラウム様に目配せをするが、ラウム様はどこ吹く風だ。
それから密偵は流暢にほら話を紡ぎ始めた。よくそんな嘘が履けるなといわんばかりの突拍子のない話ばかりだ。
あれこれと話を聞いていると、少年が疲れ始めたように見えた。それを察してか。
「食事にしようか。」
ラウム様はやっと私の目配せに反応を示してくれた。
すると(見張ってろ)と仰せだ。本当は意見を交換したいのだが。従うことにした。




