礼
頬を何かで突かれる。細い棒で、結構痛い。
「痛い…。」
「!!!生きてる!」
正にそのとおりだ。今度ばかりは死んでしまったに違いないと思っていたからだ。
身体を起こそうとするがなかなか力が入らない。
瞼を開けるのがやっとだ。うつ伏せからどうすることもできない。
さっきの子どもらしき人影はもう何処かへ行ってしまった。
周りにはもうだれもいない。目の前には枝が落ちている。これで突かれたのだろう。
見える景色は白い岩肌とくねくねと曲がった木々で、木の葉は濃い緑をしている。かなり変わった気候みたいだ。
どんなに力を入れ直しても身体は動かない。いまだかつて無い程に疲れてしまっているようだ。
そうするとなんだかまた眠気が襲ってきた。あっという間にまた眠ってしまった。
そろそろ僕は「知らない場所で目覚めるのが趣味です。」と言っても通用するのでは無いだろうか。
「ラウム様、目を覚まされましたぞ。」
「おお!そうか、それは良かった。」
なんだかとてもふかふかで、とても心地よい布団だ。
しかしこんな事はもう慣れっこなのだ。大事な事は分かっている。
「助けてくれてありがとうございます。」
「おお、意識もはっきりとしておるようだな。礼には及ばんよ。」
見た所かなりの富裕層のようだ。広く内装の凝った部屋だし服装も高そうだ。
慌てて正座をしようとして、ふらふらと倒れ込む。
「相当弱っておるようだな。無理はせんでよい。余は寛大なのだ。」
自分で言う事では無いきがするが実際の寛大だから何も言えない。
「ここは余の別荘で、その領地の村外れにお主は倒れておったのだ。余の名はラウム、貴族の三男だ。」
「僕の名前はリカルドです。平民です。」
「見た所ゴルノジアの民であろう?その緑の瞳は何時見ても綺麗だからよく覚えている。」
この人は不思議な感じがする。何とも言えないが、近寄りがたい神々しさと、もう一つある気がするがよくわからない。
さっきも「貴族」とだけ言って家名を名乗らない辺り、かなり有名な人に違いない。
漂う気品も一級で、なかなか目をあわせられない。
「そうだ。さっき礼には及ばんと言ったが訂正だ。お主には礼をしてもらいたい。」
僕ができる事など限られている。一体どんな礼が飛び出すのだろうか。




