次の国
ゴッと音がして僕の乗っていた雪の塊が折れる。
雪の塊は支えを失って落下し、山の斜面に着地する。斜面だ。
ほっとしたのもつかの間、雪はゆっくりと移動し始めた。
僕が慌ててとびおりようとしてももう遅く、あっという間に加速しきってしまって降りられない。
底面を土に削られながら雪はまだまだ加速を止めない。
岩肌がゴツゴツと見えていたのはかなり先の方だが、そこまでになんとかしないと僕はこのい勢いのまま大岩に叩きつけられてしまう。
しかも震えであしがすくんで立ち上がる事も出来ない。
それだけでなかった。雪山をあんなに薄着で突っ切って身体にガタが来ていない方がおかしかったのだ。
身体中に力が入らない。こんな状況だと言うのにまぶたが重くなってきた。
景色が後ろに流れていくのをもう目で追えない。
僕は雪の橇の上で、また瞼を閉じた。
瞼を開けると、誰かの背中と囲炉裏の炎が見える。
「私は…助かったのかしら?」
小屋の寒さはさほど酷いものではなくなっている。
「目がさめたか。気分はどうだ?」
すぐ近くに大柄な女性がいた。質素な服で身を包んではいるが、端々に綺麗な装飾が施されている。
「まだ少し悪いです。」
「飲め。身体があたたまる。」
いい匂いのする物が入った器をこちらに差し出してきた。芋の煮物のようだ。美味しい。
「あ、あの。」
「なんだ。」
「ありがとうございます。」
「感謝を受け取った。」
多分この人は本物の聖人だ。いい人という意味もあるが、職業として聖人なのだ。
「どうしてこんな所に…?」
「それは私の台詞だ。そんな薄着でどうしてこんな所にいるんだ。」
「それは、その、人を追っていて…。」
「痴情か。」
「いえそういうわけでは無いのですが話がややこしくて。」
「感謝の対価として話せ。」
私はできるだけうまくほなそうとした。
「えっと、街で変な呪いを受けている少年を見かけましてですね…。」
いろいろとかいつまんで話した。納得がいってもらえるかどうかは分からないがきっと伝わっただろう。
「ふむ…その少年の名は?」
「リカルドだそうです。」
「!!!。どっちへ行った?!」
急に食いついてきた。少し驚いた。
「えっ分からないです。」
「そうか…無理な質問をしたな。気絶していたのだったな。」
「それでその…あなたの事をなんと呼べば良いですか?」
「そう言えば言っていなかったな。私の名前はラストレン。トーン王国の聖人だ。」




