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砂漠の少年  作者: 帽子男/Hatt
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23/91

仕事

連載を再開します

僕は両親と合流がしたい。そのためには海を渡らなければならない。船に乗るには金がいる。

よって仕事が必要だ。


「雇ってもらえませんか?」


「手は足りてるよ。」


ニクルスの好意に甘えて、長く居座るわけにも行かない。学生寮に部外者が居座るのもまずいだろう。


「仕事は有りませんか?」


「子どもの手を使わせるほどじゃないね。」


今は港で手当たり次第に人に声を掛けている。人が沢山いるため、きっと一人ぐらいは働き手を探している人がいるはずだ。


「何か仕事は有りませんか?」


「…子どもか。いいな。」


好感触だ。どんな仕事が有るのだろうか。帽子の男の顔をよく見ずに声を掛けたが運がついているかもしれない。


「給料はいいぜ。」


そう言って男が顔を上げる。帽子の下から除いた顔は右半分が大きく焼け爛れていてとても恐ろしく見えた。思ったよりも歳をとっている。


「やっぱり遠慮しておきます…。」


「そうか。」


男はあまり残念そうにしていない。その場で誰かを待っているようだ。

僕の判断は合っていたと思う。勝手な想像だが、きっと怖い仕事に違いない。しかし給料がいいとも言っていた。もしかしたら失敗したかもしれない。

すぐに意見がブレ過ぎだ。もう一回は断ったのだ、次に行くべきである。

とはいえ知らない人には話しかけられても、この男の側にずっと居られるほど、僕は図太くない。人の多い港から少し離れることにした。


僕は土地勘は全くないが、方角は見失わずに路地にあしをすすめられている。ニクルスの寮からは大分離れてきている。

少し離れた場所から喧騒が聞こえてくる。きっとそちらにも人が沢山いるだろう。大きい道を一本外れて裏路地を通っていく。


かなり入り組んでいて見通しが悪い。


「…。」


誰かに見られている気がする。ちょうどすぐ先がこちら側からは影になっていてよく見えない。そのへんに落ちていた石をそっと音を立てないように拾う。

ひょいと石を放り投げて耳を澄ます。カツンコツンと石の弾む音だけが聞こえる。どうやら僕の思い違いのようだ。


「…誰かいますか?」


念の為声をだしながら歩を進める。何が念の為なのかは分からないが、少し緊張がほぐれる気がする。

意を決してサッと影に踏み入るがそこには誰もおらず。ほっとする。

適当に投げた石をなんとなくで拾おうと屈んだその瞬間。


何かが僕の上を通り抜けた。ちょうど僕の脇があったあたりだ。


「ちょっと!じっとしてて下さいよ!」


振り向くと女が立っていて、角材を大きく振り上げている。とっさに両手で頭を庇う。

鈍い衝撃が両腕に伝わってくる。左腕がまだ治りきって居なかったため、激痛が走る。角材が当たった所はもっと痛い。


「ぐっ!」


「どうです?弱りました?」


この場所がこんなにも治安が悪いとは思わなかった。もとの人通りの多い路地に出ようにも女の向こう側にある。僕は見通しの悪い裏路地をさらに奥え駆け出す。


「まだ元気そうですね。もう少しでしょうか?」


くねくねと細い路地を進んでゆく。後ろから女が追いかけてくる。


「その先は行き止まりですよ?」


降伏を促しているつもりなのだろうか。道の先を教えてくれる。

女の言うことを信じるわけでは無いが、道がどんどん細くなってきてはいる。きっと本当なのだろう。


僕は、またこちら側からはよく見えない影になっている曲がり角を見つけた。ここに隠れてうまく擦れ違え無いだろうか。

小さく身を折りたたんでしゃがみこみ、影に身体を入れてじっとする。


「ちょっと弱ってくれるだけでいいのに…。」


声と足音が近づいてくる。息を殺し、耳を澄ます。

なんのつもりかは知らないが、僕を殺す気では無いらしい。それはそれで怖い。


角の向こうに女の気配が差し掛かった瞬間に拾っていた石を道の反対側に投げる。それで女の気がそれた事を祈りながら角を飛び出して、女の横を通り抜ける。


「あ。」


見事に女を出し抜く事に成功して、大きい通りの方に走って行く。女も間抜けな声を出している。

ちらりと一瞬だけ振り返ると、諦めたのか女はぼうっと突っ立っている。


しばらくして港の喧騒が戻ってくる。目の前は人でいっぱいだ。

僕はなんとか謎の女から逃げ切ることに成功したのだ。

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