ニクルス
ニクルスの話を聞くと、どうやら僕はラストレンさんの子飼いとしてこの船に乗っているらしい。意味が分からない。
意味が分からない。しかもこの船はジルガンティア教国に向かっているらしい。ジルガンティアはドーン王国の南、僕の故郷であるゴルノジアの南東だ。
「大丈夫?」
ニクルスは僕を気にかけてくれる。僕の顔色は相当に悪いらしい。船酔いしたのだ。
「砂は大丈夫だったんだけどな。」
嵐で船が大きく揺られて、僕はすぐに気分が悪くなった。するとあっという間に空は晴れ渡り、風も穏やかになった。
僕は甲板で海を眺めながら、空っぽの胃の中を吐き出している。少しスッキリしたが、まだ気持ち悪い。
まさか僕が水の海の船に弱いとは思わなかった。砂の海の船には何度かのったが水ははじめてだった。
ずーっと頭の中がぐるぐるとしていて、後頭部になにかを詰められたような気だるさが続く。
なにか気を紛らわしたい。
「ニクルスはどうしてこの船に?」
「みんなといっしょ。」
皆?誰のことだろう。なんでもいい。話を続けよう。
「何歳?僕は16だよ。」
「12さい。」
そうすると「皆」も同い年くらいだろうか。まだ話を続けたい。
「なにか聞きたい事とかあるかな。」
「どこからきたの?」
「ゴルノジアの砂漠から来たよ。君は?」
「ウロ村。」
何処かで聞いたことの有るような気がするが、分からない。
その後もしばらく話をした。話をしている間は気が紛れた。
話の中で、どうやらこの船はあと3日は走るだろう事と、彼が留学生で有ること、その中に僕も含まれているという事だった。
「ありがとう。大分楽になったよ。」
ニクルスにそういって、僕は自分に割り当てられているらしき部屋に戻ることにした。
胃の中からもう何も出ないという事もあったが、それ以上に疲れてしまって眠りたかったからだ。起きる頃には朝になっているだろう。
「ニクルスはどうするんだい?」
「みんなのところにもどる。」
留学生仲間が使っている部屋に戻るらしい。そういえば。
「どうして僕の部屋を除いていたんだい?」
ニクルスは少し黙った。うつむいている。目だけこちらを向いて、睨むような鋭い眼光を向けてくる。さっきまでの子供とは思えない。
「変わった呪いの匂いがしたから。」
二ルクスは僕の心臓を指差してそういった。




