門番
「すみません。本日の将軍様へのお取次ぎは終了しました。」
「なんだと!?」
ラストレンさんが声を荒らげた。荷台から身体を乗り出して門番に詰め寄っている。
「いいから伝えろ!隣国の話といえば将様はきっと合ってくださる!」
「規則ですので…。」
「もういい!直接行く!どけ!」
ラストレンさんは蟲車を飛び出して、門番も押しのける。本当に協会の人間なのだろうか。とてもガサツだ。謁見するために蟲車を準備し、準備に時間を取られて取り次ぎ時間を過ぎてしまった。嫌な気持ちになるのは分かるが、それで蟲車を降りてしまえば本当にどうしょうもない気がする。
屋敷の中にラストレンさんは走って行ってしまった。門番の二人は目配せをしあってから、片方がそれを追いかけていった。
のこった方の門番は僕の方を見て肩をすくめるのだった。
しばらくして僕の乗っていた蟲車は屋敷の中に入れれられた。中と言っても屋根の下では無く、敷地にある庭のような場所だった。
周りには蟲車ばかりが並んでいる。六台ほとあり、どれもこれもきれいな装飾がしてあって高そうだ。僕の乗っている物を除いて。
僕は相変わらず身体を縄でぐるぐる巻に縛られている。そしてそのまま誰にも見張られていない。いまが良い機会だ。
身体をよじって縄から抜け出そうとするがうまく行かない。腕や足を丁寧に縛られているのではなく、ひたすら全身をぐるぐると巻かれているので身じろぎするのも難しいが、その分少しでも空間が開けば一気に抜け出せる筈だ。かなりの時間悪戦苦闘していると、人の歩く音が聞こえてくる。
誰かが蟲車に乗るのだ。僕は頭をかがめて隠れる。見つかると何がまずいのか分からないが、見つかって良い事もなさそうだったのだ。
しばらくすると音の主は蟲車に乗って何処かへ行ってしまった。
そんな事を何度か繰り返していると、いつの間にか僕の乗っている蟲車だけになってしまった。日も暮れて暗くなってきている。寒くなってきた。
身体を縛られているため、動かして温める事も難しい。どんどん気温は下がって来る。かなりまずい。縛られて血があまり流れないせいか、指の感覚がもう無い。
寒さで身体が動きにくくなってますます縄から抜けられそうに無い。
近くで足音が聞こえた。僕は必死になって助けを呼ぶ。凍え死ぬよりは見つかる方がマシな筈だ。頭がうまく働かない。
「助けて!誰か!いるんでしょう!助けて!」
足音が近づいてくる。明かりも近づいてくる。顔を両手で支えられて目を合わせると、さっきの門番だった。
「冷たい。まずいな。」
さっと僕を持ち上げてくれる。何処かへ運んでくいるようだ。
「意識は有るな。君、ラストレン様に捕まったんだろう?きっとまたよくわからない一般人を捕まえたに違いないんだ。災難だったな。」
「はい…。多分…。ありがとうございます。」
僕は最近になってもう何度目か分からないが、意識を手放した。




