たくさんの溢れる幸せ。
妖精達にお菓子を手渡していると、家の中を気にするホムラとその背中を押すスイレンが目に入った。
ちなみに「ホムラ」と「スイレン」は私が考えた火と水の妖精王達の名前だ。
火の妖精王は燃え盛るという意味を持つ火炎から付けて、水の妖精王には水に咲く美しい睡蓮の花から付けた。
名前を言った時の二人の嬉しそうな顔は本当に綺麗だった。いやぁ、美形の威力は凄いね。
「レイン、ホムラは何を気にしているの?」
「あぁ…エイエル様とユマ様の事だと思うよ。お二人は火の妖精達との関わりがあるからね」
「そうだった!私とした事が!!」
窓から大広間を覗き見るホムラは迷っている様だったけれど、お父様もお母様も彼らに凄く会いたがっていた。
火の彼らは僕達にとって大切な友人なんだと言うお父様は幸せそうに昔話をしてくれた。
今でも二人はまた会いたいと願っている。
ホムラの背中を押すスイレンと一緒に私も彼の背中を押した。
「ホムラ、何を躊躇っているの?お父様もお母様も貴方にとても会いたがっているのに。火の妖精達だって中を気にしてるのがバレバレだよ」
「だってよ…アイツらと勝手に繋がりを切ったのは俺達だし。今更、どういう面して会えば良いのか迷っちまって…」
「何ぞよ、その弱気は。お主らしくないぞ。会いたいなら会えば良いではないか。な?トワ?」「うん、お父様とお母様だよ?ホムラが会いに行ったら凄く喜ぶに決まってるじゃん!!」
うだうだ言ってないでさっさと行け馬鹿者!とスイレンが思いっきりホムラの背中を蹴った。
窓からそのまま中に突っ込んだホムラを満足気に見るスイレンの勇ましい事。
痛ぇな!!とホムラの怒号も聞こえてきた。
そして、その次に聞こえたのはお父様とお母様の驚く声だった。
「ふん…あやつは本当に素直ではないぞよ。素直なレインロゼを見習って欲しいの」
「良かった。ホムラ、ずっとエイエル様とユマ様の事を気にしてたからさ」
「ふふっ、私達も中に入ろっか」
大広間に戻るとホムラに抱き着くお母様と火の妖精達と話すお父様がいた。
幸せそうなお父様達を眺めていると、肩を軽く叩かれ振り返ればタロットだった。
彼の手首を見てみると魔力封印のブレスレットに埋め込まれた魔力を抑える宝石が光に反射していた。
(タロットの笑顔が増えて良かったなぁ…。)
王宮へ行ったのが三日前。
ずっと何かを警戒していたタロットの雰囲気はあの日からすっかり変わった。
けれど、変わらないものもちゃんとある。
「トワの家族ってなーんか不思議だねー。何だろ凄く温かいってゆーか何てゆーか」
「ふふっ、癒し効果が高いのよ私の家族は」
「確かにー居心地良いもん。俺、トワの家族大好きだーな」
変わらないもの、それは話し方だ。
最初はサロット君を忘れない為のものだったけれど今は彼の特徴になっている。
俺とサロを繋ぐものの一つだからーね、と言っていた。
私の家族を見詰めるタロットの手を握ると少し驚かれてしまった。
「きゅ、急にどーしたのー?」
「タロット…これからは一人で抱え込まないでね。今の貴方にはたくさんの味方がいるわ。勿論、私もその一人。
一緒に悩んだり楽しんだり笑い合ったりする…もうそれは友達でしょう?」
「!!はは…うん、ありがとう…ありがとうねトワ。俺、今が凄く幸せ…」
手を握り返してくれたタロット。
彼の桜色の髪がサラリと揺れ、それと優しい笑みが合わさって、とても綺麗だった。
『コイツ、ほんまに雰囲気が良くなったな。ま、オレの予想通りやったな!』
『何言ってんのよアホ鳥。最初はピーピー騒いでたくせに』
『き、記憶違いちゃうん?』
『ハイハイ、ソウデスネー』
『棒読み!!』
『僕らも混ぜてー!』
『喧嘩なら俺らの十八番だぜ!』
『騒がしい方達ですね…』
体の大きさをレインに小さくして貰ったハヤテとリリィは今日も仲良くじゃれあっていた。
それに加わろうとする妖精達。
小さな彼らの戯れに和んでいると、兄と話していたリュードが来た。
「今日はありがとなトワ。君の家族に会えて良かったよ。特にクオンさんは面白いな」
「…私のお兄様は一体何を話したの?」
「トワの話だな。どれだけクオンさんが君を大切に思ってるかが凄く伝わって来た」
「はぁぁぁ…兄がすみません…」
何があってもペースを崩さない兄に呆れていると、アリンとサナにお客様が来た事を伝えられる。しかも、私の。
はて?今日はお客様が来る予定なんてあったか?
「僕と妖精達からのトトへのサプライズだよ」
「え?」
一緒に玄関に来たレインがそう言った瞬間に扉が開き、ポンッと飛び出してきたたくさんの花で視界を覆われた。
そして聞こえてきた声に驚く。
すぐに花を前から退けて見ると、此所にいる筈の無い皆が立っていた。
「ふはっ!どうだ我の花束攻撃は!驚いたか?」
「水攻撃とかも良かったかもね」
「ミケ様…それはちょっと…」
「いや、案外良いかもね。僕そういうの大好き」
「トワが困るだろう。すまぬ、トワ」
「うーん…確かに水は困りますね…」
「アロネットと言う通りだっての。絶対ヤメロ」
勢揃いしている皆に驚きが隠せない。
家の用事や学園での仕事があると言っていた皆、それにヴァン君でさえも警備の仕事があると言われ今日は家にいなかったのに。
こんな…こんな事って…
「嬉し過ぎますわ!!」
「ひょわ?!ト、トワさん?!」
嬉しさのあまりアロネットちゃんに抱き着く。
大成功?と首を傾げるレインに私は何度も頷いた。ありがとうの気持ちでいっぱいだ。




