平和と平凡が一番。
「トオォォォワアァァァァァ!!!!」
「ギブギブギブギブ!!!」
大広間に響き渡る声。
この感じ久しぶりだな、背骨大丈夫かな、息止まりそう、暑苦しいな、など。
お分かりでしょうか皆様。
熱烈な歓迎と包容をしてくるこの方を。
そうです。お久しぶりです。
私のお兄様、クオン・アトリエスです。
「また可愛くなったなぁぁ!あぁ…トワの匂いと体温…癒される。可愛いぞトワ!!」
「あらあら、クオンったら相変わらずねぇ。トワちゃんが大好きなんだから。うふふっ」
「母さん…トワの顔色が青白くなっているのは気のせいだろうか…」
学園の修理や王宮での事が片付いたので私も心配を掛けた家族に会いに帰って来たのだれど…兄の暴走癖をうっかり忘れていた。
兄さんは魔法で私の事を忘れていた事があまりにもショックだったらしく、再開してからずっと泣いて抱き締めてくる。
こう言ってはなんですけど…会わないうちにまた変態度が増したな?人の匂いと体温を堪能しないで頂きたい。
「お帰りトワ!今日は泊まって行きなさい!いや、一ヶ月くらいいても良いからな!俺も家にずっといるからな!!」
「何を言っているんだ馬鹿者。すまないトワ、旦那が迷惑を掛ける」
「まだ俺はトワを抱き締めてい「黙れ」
「た、助かりましたわ。ありがとうございますカラン姉様」
兄さんの耳を引っ張って私を助けてくれたのはイケメン奥さんカラン姉様。
その格好良さに惚れ込んで私は親しみを込めてカラン姉様と呼んでいる。もう大好きです。
やっと兄さんの暴走も落ち着いて、お母様とお父様には私から抱き着く。
数ヶ月ぶりの家族との再会はやっぱり嬉しくて、お父様のぽちゃっとボディーに癒される。
「私、今でも貴女の事を忘れていたなんて信じられないわ。お帰りなさいトワ」
「…………さて。それで、君達が今回の事件の関係者達だと聞いたが、本当かい?」
お父様が見た先にはリュードとタロット、そしてタタとナナがいた。
どうしても私の家族と話がしたいと頼まれ、今日の訪問は私だけじゃなく彼らも一緒に来たのだ。
騒いでいた兄もピタリと静かになり、彼らを見ていた。その目は私に向けられた優しいものとは違う見定める様な鋭いもの。
お母様だけが笑顔を浮かべていた、が。
それでも、最も極寒ブリザードが吹き荒れているのはお母様なのは気のせいではない筈。
「今日はトワさんの事でお話があって参りました」
「リュード君…だったね?国王様から話は聞いているよ。組織を指揮していたのが君の様な若者だったとは驚いたよ」
「貴方達は自分達が行ってきた事についてはどれくらい理解し向き合っていますか?」
「一生を懸けて償う覚悟が出来ています。私達は無関係であったトワさんだけでなく、多くの人を巻き込みました」
床に座り、お母様とお父様の目を見て話すリュードとタロット。
彼らが膝の上で握り締める手は力を強くし過ぎて震えていた。タタとナナも決して目を反らさない。
私達が許しても大人達は違う。
彼らのした事は国にとっても社会にとっても大きな出来事だった。
「貴族という存在が幼い君達を暗い道へと導いてしまった。本来ならば、正しく子ども達を導かなければならない大人。
それが君達を苦しめる存在となってしまった…」
「そうね、過ちを犯したのは大人も一緒。けれど、それはそれ。これはこれ。
うふふっ…歯を食い縛りなさい貴方達?」
「「「「っ!!」」」」
お父様の隣にいたお母様が一歩前へ出た。
そして、パンパンパンパンッ!!と四回の良い音が聞こえた。お母様が手に持っていたのは扇子。
折り畳まれた扇子の角で四人の頭を叩いたのだ。
あれが結構痛い。
昔、パーティーが暇でヴァン君と庭でサボって遊んだ時にかなり泥だらけになって、今の様に扇子の角で叩かれた。
「娘に関する記憶を無くされた事は確かに怒っていました。そして、貴方達の目が濁っていれば容赦無くいくつもりでしたが…貴方達の目はまだ輝いています。それだけで十分ですよ私は」
「僕も妻と一緒だ。君達は自分達の罪にちゃんと向き合っている…その瞳を二度と濁さない様に努めていきなさい」
「次に俺の大切な妹に何かしたら扇子の角じゃ済まないから覚えておけ」
四人の反応は思った通りかなり戸惑っていた。
最初はあんなに怖い顔をしていた私の家族が急に笑顔になるんだもんな。
我が家は切り替えが早い。
カラン姉様も予想出来ていたのか、兄さんの頭を撫でていた。良く我慢したなって意味だろう。
ほら…兄さん、シスコンモンスターだから…さ。
自意識過剰とかじゃなく本気で。
良く抑えられていたと思うよ今回。
「うふふっ、堅苦しい空気は止めにしてお茶にしましょうか。サナ、アリン、お菓子と紅茶の準備をお願いしても良いかしら?」
「「かしこまりました奥様」」
「君達も床にいないで椅子に来なさい。一緒に食べようじゃないか」
調理室に向かったサナとアリンの後を追って、私も紅茶の準備を手伝った。
私が紅茶好きというのを知っている二人は紅茶の下準備を私に任せてくれる。
サナとアリンともゆっくり話をしたかったからちょうど良い時間だ。
大広間に彼らを置いてきちゃったけど…お母様とお父様がいるし大丈夫か。
兄さんが暴走してもカラン姉様がいるしね。
「トワ様を思い出した時は涙が止まりませんでしたよ私!本当に良かったです!!」
「こら、サナ。調理室で騒ぐのではありません」
「むぅ…アリンも嬉しいくせにー!トワ様、こう見えてアリンも凄く喜んでますよ?!」
「ふふっ、分かってるわサナ。アリンは恥ずかしがり屋さんなのよね」
「そうなんですー!!」
「ち、違いますトワ様!っ、寂しかったのは当たってますが…」
「「キュンッ」」
思わずトキメキを口に出してしまった。
それくらい久しぶりのアリンのデレが可愛いかったです。
話しながら準備をしていると、用意したクッキーを掴む小さな手が見えた。
静かに近寄って服を掴んで持ち上げると逃げようとする可愛い彼ら。
いたずら好きな彼らは甘い食べ物も大好物だ。
「貴方達の分は他に用意したわ。籠に入れてあるからレイン達にも持って行ってあげて」
『うわわっ!トワにバレちゃったー!!』
『クスクスッ、バレちゃったねー』
『ありがとー!!』
「ちょっと皆。お菓子はもう少し待つって約束だろう?ごめんね、トト」
「いやいや、大好物は待てねぇだろ。遊びに来たぜトワ」
「ふむ。パウンドケーキが良いぞよ」
いつの間にか調理室には妖精達が溢れ、いつもの賑やかなものになっていた。
(あはは…これは大広間より先に妖精達へのお菓子が先だな。)
彼らの為に用意したお菓子が入った籠を持って私は外へと向かった。




