永遠の存在。〜ウルネロ視点〜
我は大抵の事では感情が高ぶらないと自負していたが…この状況は流石の我でも平静を保てん。
人間嫌いと言われる狂暴な狼のグドゥガに跨がって森を全速力で駆け抜けるとは考えもしなかった。
空でも同じく人間嫌いな鳥類最強の神鳥サリファに乗った友人達。
(それに…目的が明白では無いというのがまた驚きなのだ。)
今、我々が目指しているものについて説明しろと言われても良く分からないと答えるしかない。
だが…我は確かに渇望しているのだ。
本能が求めるその「何か」を見付けた時、我は満たされるのだろう。
いつからか上空にいるあの男を普通にヴァンと呼んでいたが、我はあの男を前はそう呼んでいなかったと思うのだ。
「ヴァン」と呼んだ時、違和感が凄すぎてかなり悩み唸った。
「このグドゥガって本当に信用して良い訳?!僕達どこに連れてかれてるの?!」
「分からん!だが、行ってみるだけの価値はあるのだ!魔術師もそう思って来たのだろう?!」
「あーっもう!!僕がこんな非論理的な行動をするなんて信じらんない!!!」
後ろでギャーギャーと騒ぐ魔術師の言葉に我も何度も頷く。
全く分からない状態で「何か」を探すという行動を取る魔術師とは本当に意外なのだ。
この男は論理的な行動を大切にし、如何に自らの王子を守る事が出来るのかが何よりも最優先。
そんな彼が王子に報告もしないで、訳も分からずグドゥガに乗って森を走っているのだ。
驚くなという方が無理な話。
あの普段は静かなリオネでさえ、大きな声を出して行動を起こした。
我々は同じ「何か」を求めている。
それは必ず見付けなければならないものなのだ。
「ガウッ!!」
凄い速度で走っていたグドゥガは一鳴きすると、足を止め姿勢を低くした。
グドゥガが見詰める先を見るとそこには人がいて何かを話している。
異様な重苦しい雰囲気が遠くからでも分かった。
我もミケも息を潜め、事の次第を見守る。
(あれは…二年の生徒か…?)
黒いローブを身に纏った男の顔に我は見覚えがあった。
一見、普通の生徒だが謎が多くそこが良いと言って女子生徒達が騒いでいたのを思い出す。
顔は整っているかもしれないが、我のタイプではないとバッサリ切り捨てたのだ確か。
それに、我の今の一番の興味は「ーーー」だからな!とも言ってやっ……た。
(い…今、我は誰の名前を言ったのだ…?)
女子生徒達もその名前を聞いた瞬間にとても騒いでいた。
我にとってその人物といる事は自分の中で欠かせない事だったのだ。
求めているのは「ーーー」。
「っ、タロット…何でアロを巻き込んだの?!」
「!!」
黒いローブを着た男子生徒の隣にいて見えなかった人物が見えた時、我は息が止まった。
銀髪の人物なんて会った事も無いのに…どうしてこんなにも彼女のもとに駆け寄りたいのか。
直感で我が求めているのが彼女だと分かる。
後ろに座る魔術師からも啜り泣く音が聞こえた。
我も気を抜いたら今すぐにでも涙が出そうだ。
大抵の事では感情が高ぶらないと言った自分が情けない。
彼女は我の感情を乱す存在。
だが、それは不快なものじゃなく我に様々な楽しさや喜び等の感情を教えてくれる存在なのだ。
「………………ト……………、ワ……」
口が勝手に動いた。
その音が紡ぐのは一体、誰の名前か。
そんなの問わなくても分かる。
(あぁ…やっと無くした大切なものが帰ってきたのだ…。)
トワ・アトリエス。
我の大切な友人である彼女の事を忘れていたなどあり得ない。
ふわりと揺れる彼女の銀髪。
トワの髪は綺麗な金髪だった筈だが、あの色も勿論美しい。我は彼女が大好きなのだ。
もう忘れはしない。
この記憶は我自身のもの。
もう決して誰かに大切な者の記憶を消させるものか。
さぁ…反撃といこう。
我は一度、敵と認めたら容赦はせんぞ。
取り敢えず我はやっと会えた友人に抱き着きたいのだ。




