念には念を。用心には用心を。
開会式を終えたので、ここで「聖ルナシエ魔法学園」について少し説明したいと思う。
この学園はマトだけが通うことを許可されている歴史ある由緒正しい学園として有名だ。
十六歳から十九歳までの三年間を全寮制で過ごし、その後は国が管理する機関で働くか家を継ぐかという選択肢を用意されている。
広大な土地とレンガ造りの巨大な校舎、大理石の廊下にステンドグラスの窓。
優秀な人材を発掘するのを目的として国が全力で金銭面をサポートしているから学園内は目が飛び出る程の豪華さ。
マトなら誰でも入学許可を貰える為、この学園には平民から貴族まで色々な人達が集まっているのでかなり私的には楽しい場所だ。
普段は行けない町の話とか聞き放題だし。
最近、聞いた話で最も惹かれたのが町のパン屋さんの話。
出来立てホヤホヤのパンが本当に美味しいらしく是非とも食べてみたい。
そんな感じのありがたい情報たくさん下さる方の名はウルネロ・カーチャルちゃん。
新入生代表者の一人である。
ゲームでは主人公のサポート役の立場だった子で、話してみると凄く面白い子なのだ。
「我は町の花屋が好きなのだ!たくさんの種類が売っていてな。とても綺麗なのだ」
「町のお花屋さんですか…素敵なんでしょうね!」
「町には珍しい花がたくさん売ってるって聞いたことがあるわ。一度、見てみたいわね」
宰相の一人娘さんのウルネロちゃん、通称ウルちゃんはたまに家を抜け出して町に出掛けているらしい。
色々なことを知ってるウルちゃんから聞く話はどれも面白くて、私とリオネちゃんは彼女の話を毎回楽しみにしている。
ちなみに開会式から一週間経ってからは、この三人でいることが日常的になっていた。
ここにハルト様とミケ君が加われば、いつも一緒にいるメンバーの完成。
そして、皆様。
忘れちゃいけないリオネちゃんのお兄様であるランジェ様を覚えているであろうか。
私のお兄様と同じ二十歳になったランジェ様は無事にデルトロ家の当主となられました。
このまま婚約者の人と未来の主人公ちゃんとのバトルが始まるのかと思っていたら、びっくり仰天。
まさかまさかのランジェ様は婚約者を全て断っていたのだ。
ゲームでは婚約者がいた筈なのだけれど…ここにきて「ズレ」が生じたらしい。
「今度、ラン兄様がトワに会いに来ると言っていました!学園の警備確認が一段落したらしいです!」
「おぉ、リオネ君の兄上か!かなりの美男子だと噂されておるな。トワ君とは仲が良いのか?」
「ランジェ様とはよくリオネの話で盛り上がるのよ。リオネの可愛さを語る会ね」
「ふはは!可愛さを語る会か!良いではないか!」
「ううっ…恥ずかしいのでやめて下さい!」
婚約者のことはゲーム内容と「ズレ」が生じてしまったが、ランジェ様が学園関係の仕事をするのは変わらなかった。
学園の警備状況の最高取締役で、優秀なランジェ様だから出来る仕事だ。
よく学園内を歩いている為、前と変わらず会えば必ずリオネちゃんの報告会をしている。
最近は仕事が忙しそうで、なかなか会えなかったけれど一段落したと聞いてほっとした。
四日前に見たランジェ様の顔が疲労感満載だったからだ。
この数日間、働きづめでリオネちゃんも凄く心配していた。
私に会いに来るとは…余程、リオネちゃんの報告会がしたかったんですね。分かります。
「…そういえば、今日まで休んでいた例の特魔生が明日から登校するらしい。
さっき職員達が話しているのを聞いたぞ」
「特魔生がですか?一体、どんな方なんでしょう?」
「…、」
ゴクリと唾を飲み込む。
その「特魔生」が来た瞬間から原作が始まる。
特魔生、正式名所は特別魔法生徒。
お察しの通り主人公だ。
(後はヴァン君が来たら完璧…か。)
このままゲーム通りに進めば、ヴァン君はある理由があって学園に通うことになる。
そしたら登場人物達が全員揃う。
闇属性の魔力を持つ彼女。
その特別な力がこれからの物語を大きく動かしていくのだろう。
(…主人公と対になる光属性も近いうちに現れるし、用心しなくちゃだな。)
その二つの属性が揃ったら新しい物語の幕が開く。裏組織が動く合図だ。
イベントが盛りだくさん過ぎて目が回ってきた。
「…明日が楽しみね」
一体、どうなることやら。




