出会いは痛め。
「何これ…広っっ?!」
案内された部屋は一人部屋なのに五人くらいは余裕で住める広さだった。
高い天井と一目で高級物だと分かる家具の数々。
前世でも高校から大学までは寮生活だったが、こんな部屋ではなかった。雲泥の差過ぎる。
『ええ部屋やな!気に入った!』
『あら、このソファーも座り心地良い感じね』
「人形遊戯」が置いてくれたトランクから出てきた二人は早速くつろぎ始めていた。
私もいつまでも玄関近くにいる訳にはいかないので荷物整理を開始する。
荷物は必要最低限の物しか持って来なかったからトランク一つ分で済んだ。
え?ドレスはって?それが聞いて下さいよ。
学園で舞踏会やら何やら正装をしなくちゃいけない時には態々一着のドレスを仕立て屋さんに頼まなきゃなんですよ。
ドレスを家から持ってくるお嬢様もいるらしいけど、大体のお嬢様は新しく作るんですって。
お嬢様達の金銭感覚が狂う訳だ。
広い部屋には私の荷物は少な過ぎて違和感がありありだが、まぁ…良いだろう。
途中から一緒に荷物整理を手伝ってくれた二人にお礼の干しブドウをあげていると、ゴーンゴーンと重い鐘の音が外から聞こえた。
「あ、もうそんな時間か。整理に夢中になってたからすっかり忘れてた」
この鐘の音は開会式の始まる三十分前の合図だ。
開会式とは新入生が話したり、在校生が話したり、偉い先生が話したり…所謂「始業式」である。
普通だったら十分前に開会式場の聖堂へと集合すれば良いのだけど、複雑なことに私は新入生代表として挨拶をしなきゃならないのだ。
…ゲーム通りですねえぇはいはい。
「じゃあ、二人は留守番よろしく。暇になったら、外に散歩とかしても良いけど…くれぐれも気を付けてね」
『散歩は後でにするわ。朝から妖精界行って疲れちゃった…ふぁ』
『オレも主が帰って来るまで寝とる』
『『いってらっしゃい主様/主』』
ソファーの隅でくぅくぅと可愛い寝息をたてながら気持ち良さそうに寝てしまった二人。
いってきます、と返して扉を開けて廊下に出るとバンッと扉が何かにぶつかった。
「い"っ」って変な音も聞こえた気もする。
開けた扉から顔を覗かせて見ると、顔を両手で覆って悶えている男子生徒一名を発見した。
「?!?!す、すみません!お怪我はありませんか?!」
た、大変だ!
大事な何処かのご子息さんの顔を事故とは言え、扉で強打してしまった!!
鼻血が出てないかを確認する為に慌てて男子生徒の顔に手を触れようとするとバシンッと手を弾かれた。
「っ、この馬鹿女!いきなり何するんだ!お前のせいで僕の顔が壊れたらどうしてくれる?!」
「いや…壊れはしないかと…」
「挨拶前にこんな目に会うなんて最悪だ!!」
「え、えぇ~…」
顔下半分を手で覆いながら怒鳴って行ってしまった男子生徒。
ガーッと怒られてドーッと走り去って、反応する暇が無かった。
立ち上がって男子生徒が消えた方向へと私も歩き出す。
あんなに元気なら大丈夫だろう。
「あれ?そういえば…挨拶前って言ってた?」
あの子も私と一緒の挨拶組なんだろうか。
新入生代表の挨拶は成績上位五名がすることになっている。
私が知っているのはハルト様とリオネちゃん二人だけ。
(リオネちゃんと同級生とか…こんにちはニ度目の青春!!)
私が今、最も楽しみにしているのがリオネちゃんの制服姿。
もう絶対に可愛いって。絶対に。
あのリアル白雪姫のリオネちゃんですよ?
…そこ気持ち悪いとか言わない。
話を変えて、ハルト様は何年経っても相変わらずだ。
鳥肌もんの甘い台詞をサラッと言っちゃってる。
八歳であれだったんだから予感はしてたけどさ。
勿論、見た目も完璧イケメンに成長。
パーティーに行くと必ず周りのご令嬢達がキャーキャー騒いじゃって大変大変。
ついでに私は目線でグサグサやられてる。
(ん?…お、聖堂はここか。)
いつの間にか聖堂の近くまで歩いていたらしく、もう少しで過ぎちゃうところだった。
両開きの木製の扉を開けて中へ入ると、まず目に入ったのが天井にぶら下がる大きなシャンデリアと色とりどりのステンドグラス。
物凄く綺麗で、オルガンで奏でられている曲が幻想的な雰囲気を助長していた。
「やぁ、トワ。待っていたよ」
「お久しぶりです!トワ!」
「げっ…?!」
目線を天井から目の前へと下げると、ハルト様とリオネちゃん。
そして、さっきの男子生徒君が立っていた。
めっちゃ嫌そうな顔されちゃいました。




