永遠の感謝。〜ランジェ視点〜
「そうと決まれば新しいドレスのデザインを考えなくてはですわ!」
俺が今まで見てきた中で一番の笑顔でリオネは部屋へと駆けていった。
あのいつも静かで跳び跳ねるなんてことをしたことが無い子がだ。
(…本当に、トワ殿には感謝しなければだな。)
俺の妹は少し人と接することを苦手とする。
家族以外と話す時は俯いて話すのが当たり前だった。
そんな妹がトワ殿と会ったことで、話すことを楽しいとまで言ったのだ。
「トワ・アトリエス」という名は国でも有名だった。
齢八歳にして薬師の肩書きを持ち、その技量は素晴らしいものだと言われていた。
彼女の調合した薬を何度か使ったこともあり、名を知っていたが最も彼女に興味を持ったきっかけが幼なじみのハルトだった。
あいつは昔っから自分の感情を押し殺す癖と人と一線を引く癖があった。
幼なじみの俺でもハルトの本当の笑顔を見たことがなかったのだ。
だが、あいつに婚約者が決まった日から急にハルトの雰囲気が変わった。
周りの人間は驚きながらも、その理由を口々に話していた。
「あのアトリエス家のご令嬢様が王子を変えたのだ」と。
俺はあんなにも心を閉ざしたハルトを変えられたご令嬢はどんな人物なのだろうかと考え、そして妹に会わせてみたいと思ったのだ。
ハルトが毎日のようにアトリエス家に行っているのを知っていたので、俺は同行を頼んだのだが…何度言ってもあいつは首を縦に振らなかった。
どうやら余程、俺を婚約者に会わせたくないらしかった。
そこは俺も諦めずに何度も何度も言って、やっとのことで同行を許して貰えた。
そして、初めて会ったトワ殿は噂通りの容姿と頭脳を持っている人物だった。
「…あれからリオネは随分と明るくなったんだ。全てはトワ殿のお陰だな」
「はぁ………やっぱお前にトワを会わせるんじゃなかったよ」
「何故だ。別に何も問題無いだろう」
「ありありだっての!お前が笑うとか普通だったらありえないからな?!」
「?意味が分からない。俺は笑っているだろう?」
「いやいや、笑ってないからな?お前は大抵、無表情だからな?」
「?!」
「今、知ったみたいな顔すんなよ…」
アトリエス家に行った三日後、俺は王宮へと訪れていた。
ハルトに妹の最近の様子を話すと驚きの事実まで聞いてしまった。
俺は笑ってなかったのか…無表情だったとは思わなかったな。
(しかし…ハルトは何故、そんなにも俺とトワ殿を会わせたくないんだ?)
いくら考えても分からない。
「とにかく…俺抜きでトワには会うなよ。ランジェ」
「む。それは困った。明日、リオネとともに行く予定なのだが」
「はぁ?!明日?!僕が用事ある日に限って何で明日なんだ?!」
「すまんな。妹が楽しみにしているから日を改めることは出来ん」
「こんの馬鹿真面目!!」
妹は勿論、何故か俺自身もトワ殿と会うのを楽しみにしているという気持ちは話さない方が得策だろうと判断し黙っておく。
「トワ・アトリエス」とは実に興味深いご令嬢である。




