朝の目覚めは大事です。
「トトー!僕、大きくなったよー!!」
「………………?!?!?!」
緊急事態発生。
朝起きたら我が子レインが少年に成長してました。
(昨日まで一歳児くらいだったよね?!)
トトー!って私の名前を呼びながら、よちよち駆け寄ってくる姿は可愛らしくて私の癒しだった。
これから、レインがどんな姿に成長するのか楽しみだわなんて母親気分でいたのに…早すぎる!アルバム作る暇も無かった!!
「ほ、本当にレインなの…?」
「えへへっ、トトの魔力は僕に凄い力をくれるの!これでやっとトトを妖精界に迎えられる!」
「妖精界?迎えられる??ん??」
寝起きの頭ではレインの言うことへの内容理解が及ばず、混乱しながらも喜ぶレインの顔を見る。
そして思う。
あ、この子ガチの美形だと。
今までも愛らしい顔をしていたレインだけれど、成長したことにより更に可愛さと美しさに磨きがかかっている。
十二歳くらいの少年に成長したレインの容姿は、ふわふわした髪の毛が肩まで伸び、顔立ちも幼いながら何か色気の様な雰囲気を醸し出していた。
「皆にね、僕が成人したらトトを妖精界に連れてきてって頼まれたの。
僕の力が安定してないと人間を妖精界に入れちゃ駄目なんだって」
「その…皆って誰?」
「妖精だよ!ね!皆!」
レインが両腕を横に広げて「おいでー!」と呼び掛けると、部屋中に急に現れた妖精達。
驚きすぎてベッドから落ちてしまった…。
『落ちたー』
『ねー落ちたねー』
『トワったらおっちょこちょいー』
『おっちょこちょいだー』
クスクスと笑う妖精達を私は床に座りながら、見ているしかなかった。
レインは大慌てで私を持ち上げたって…持ち上げた?!嘘ん?!
しかも、余裕でお姫様抱っこされてる!
余裕が無くて気付かなかったが、レインは私よりも身長が高くなっていた。
親抜かすの早すぎじゃありませんか?
「レ、レイン?私なら大丈夫だよ?」
「僕が心配なの!もうっ皆!驚かせちゃ駄目じゃないか!」
『王様プンプンー?』
『王様トワのこと好きだからプンプンー』
『ごめんなさーい』
『プンプンやだー』
キャーと楽しそうに飛び回る妖精達。
土の妖精だからか、茶や緑といった髪の色や瞳の色の子が多かった。
妖精はかなり自由な性格と聞いていたけれど、本当に自由だ。
今も、私の服や髪を弄ってくる子もいる。
『やっとトワと話せたねー』
『ねー王様やっと成人ー』
『嬉しいねー』
『お祝いだねー』
「そうだね!今日はトワと君達がやっと話せた日だもんね!お祝いしなくちゃ!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってレイン。貴方、成人したの?」
「うん!そうだよ!!」
ほら!と見せられたのは額にある複雑な花の模様。
私の手にあるレインとの契約の証と似ている。
妖精は額にその模様が現れると成人と見なされるようで、妖精王もそれは一緒だと言う。
レインは私をベッドに下ろすと詳しく説明してくれた。昨日まで一歳児だったのが信じられん。
「僕が成人して力が安定しないと妖精達も姿を見せられないし、妖精界への入り口も作れないんだ。
妖精達がずっとトトと話したいって言ってたからやっと叶えることが出来たよ」
「そうだったんだ…えっと、トワです。よろしくね?妖精さん達」
『よろしくー』
『王様の薔薇、見付けてくれてありがとー』
『良かった良かったー』
『王様生きてるー』
妖精は実体を持たない。
普段は人間の目には見えず、たまに妖精達が気紛れに実体化するのを奇跡的に見る人がいるくらいだ。
「妖精を見た者は幸せになる」と言い伝えがあるけれど…今の私は奇跡どころか普通に見えてしまっている。
妖精達が言うには、妖精がずっと実体化するには主となる妖精王がいなくては出来ないらしい。
なので、土の妖精達はレインが成人するまで実体化をしなかったと言う。
実体化にはかなりの魔力を使うんだとか。
『妖精界行こうよー』
『トワ案内するー』
『僕もするー』
『私もするー』
『じゃあ皆でするー』
早くーとツンツン私の髪を引っ張ってくる妖精達。
昔…って言っても、最近だけどレインが生まれたばかりの頃を思い出した。
(今日はヴァン君と一緒に寝てなくて良かった…ベッドから落ちる姉なんて見せられないわ。)
それに、起きたら突然、たくさんの妖精達がいるのにはかなり驚くだろう。
ヴァン君の驚いた後に呆れる表情を思い出し、ふふっと笑ってしまう。
いつもは落ち着いたヴァン君が慌てる姿は可愛いのだ。
(ヴァン君に妖精達のことを話したらどういう反応するかな?
リリィとハヤテも驚くかな?ん?そういえば、二人はどこだ?)
一緒に寝ていた筈のリリィとハヤテの姿が無く、辺りを見回してもいない。
キョロキョロとしていると一人の妖精が私の目の前に飛んで来た。
『犬さんと鳥さんは廊下ー』
『僕達に吠えるからー』
『トワとお話したいから出したー』
『出したー』
「廊下に出した?!」
「ごめんね、トワ。妖精達は独占欲が強くてリー達と喧嘩しそうだったから一度、出て貰ったんだよ」
「今も廊下?」
「うん、物凄く怒ってるだろうな。リーには可哀想なことしちゃった…」
ショボン…とするが、レインよ。
ハヤテは良いのかい。ハヤテは。
妖精達の魔法でやったのか、扉は木と草で出来た紐で固く閉ざされていた。
二人が体当たりしても開かなそうだ。
「妖精さん、リリィもハヤテも私の大切な友達なの。二人を中に入れてくれる?」
『トワの言うことなら仕方無いねー』
『仕方無いよー』
『開けるよー』
『うん開けよー』
紐が消えていったと同時に開く扉に、扉の前にいた妖精達は勢いで飛ばされ私の胸に泣き付いてきた。
それを入って来たリリィとハヤテが吠えるか鳴くかすると思ったが、予想を上回った二人。
『ちょっと!アタシ達の主人に何してんのよ!
噛みつくわよ?!』
『そうやそうや!離れろって言うとるやろ!!』
「…………………」
二人とも、めっちゃ元気だね。
混乱した頭ではそんな的外れな感想しか思い付かなかった。




