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悪役令嬢?…いや、ご遠慮したいです。 作者:桜 さつき
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初対面で氷点下は謎。

ヴァン君がアトリエス家に来てから二週間と三日。
その間にハルト様の訪問は二日に一回の周期であった。それなのに、だ。

ハルト様が来た日は必ずと言っていい程、ヴァン君は用事が出来るし、ヴァン君が暇な時はハルト様が来ない。
何、二人とも喧嘩したの?と聞きたいくらいの縁の無さだ。


「ヴァン、私に婚約者がいることは知ってるわよね?」
「……………………………あぁ」
「?その婚約者の方よ。あの馬車に乗っているのは」
「…なるほど、ね」


婚約者の話になるとヴァン君は物凄く機嫌を悪くする。
しかも、相手が王子だと知るとなおのこと。
もう一度聞くよ?貴方達、喧嘩でもしたの?

会ったこと無い筈よね?何で??


気になったが、ヴァン君の手を引っ張って馬車の止まった所までお出迎えする。
いつもはハルト様が温室か私の部屋に来てくれるのだけれど、今日は久々に私からのお出迎えだ。

御者の人と挨拶を交わし、扉が中から開くとワサッと私の顔は大きな花束に埋もれた。
苦しくて死ぬッス…ハルト様。


「ははっ、驚いたか?モアの花だ。トワに似合うと思って持ってきた」
「一昨日ぶりですわね…ハルト様。モアの花、ありがとうございます。
部屋に飾らせて頂きますわ」
「トワの喜ぶ顔が見れて良かったよ。それで?隣にいる者はトワの義弟か?」


花を渡され、頬にキスをされる。

挨拶だと分かっていても最初にされた時はかなり恥ずかしかった。
中身、前世二十五歳と現世八歳の三十三歳の良い大人でも心臓バックバクだ。
というか私…三十路越えてるやん。え、マジか。

………み、見た目はほら。ぷりちーな八歳だから。詐欺じゃないぞ。断じて違うぞ。


「えぇ、そうですわ。義弟のヴァンです」
「ヴァン・アトリエスです。挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません。
俺の、姉がいつもお世話になっているようで…ハルト様には感謝しております」
「ハルト・トレアスニカだ。僕の、トワをいつも支えてくれている様だね。トワから君の話をよく聞くよ」
「それはそれは。嬉しいお言葉ですね」
「こちらこそ」
「「はははははははは」」


二人とも「俺の」「僕の」と強調しているが、当たり前のことなのに何故、強調する必要が?

しかも、さっきから妙に空気が寒い。
今はまだ春の筈なんですけど…笑顔で握手を交わす二人に話し掛けられない。怖くて。


「トワ、侵入者が出たという報告が来たのだが大丈夫だったのか?
君が心配で夜も眠れなかったよ…無事で良かった。
来るのが遅くなってしまい、申し訳ない…」
「ご心配をお掛けして申し訳ありません、ハルト様。
この通り、私は全く怪我などしておりませんわ」
「それは良かった。君が一つでも怪我をしていたら今頃、相手を血祭りにしているところだ。ははっ」
「…怖」
「何か言ったかい?ヴァン殿」
「いいえ別に何も」


だから、怖いって二人。
しかもハルト様、「血祭り」って言葉を笑顔で言うんじゃありません。
刺激が強すぎますからね。

このままじゃ埒が開かないと思い、ハルト様を家へと連れていくが、そこはハルト様。
義弟がいても構わずに手を繋いできた。
あまりにも自然な動作で、気付いたら手が取られていた。

そのまま歩き出そうとすると、繋いでいなかった方の手をヴァン君に掴まれる。


「…ヴァン殿。三人ではトワが歩きにくいのではないかな?離したらどうだい?」
「気にしないで下さい、ハルト様。いつも手を繋いで歩いているんです俺達。
ハルト様も手を繋ぐのはまたの機会が良いんじゃないですか?」
「「はははははははは」」



何で氷点下の空気になってるのか知らないけど、私を挟んで喧嘩は止めて欲しい。

結局はそのまま三人で手を繋いで家へと向かったが、極寒の寒さは変わらなかった。


そうして無事に、…ではないなヴァン君とハルト様の初対面は終わった。

いつにも増して帰るのを渋るハルト様を説得するのが大変だった。

最後に私から頬へのキスを条件に帰って貰ったが…何故にキス?
別にもう恥ずかしいとかそういう初な気持ちは無いから良いんですけどね。
私からのキスとか得ないぞ王子よ。良いのか。


そして、ハルト様問題が解決したと思ったら今度はヴァン君問題が発生。

今は温室で薬を調合しているのだが、いかんせん、前の椅子に座ってこちらを睨んでいるヴァン君が気になる。


「な、何ですのヴァン…?そんなに見られたら気になりますわ…」
「何で最後にキスなんかしたんだよ…」
「…だって、ハルト様ったらあのまま残る勢いだったんですもの」
「あいつ…俺の方見てドヤ顔してたし…」
「え?ごめんなさい、聞こえなかったわ」
「ただの独り言」



椅子から立ち上がったヴァン君はそのまま私の腰に抱き付いてきた。
ギュゥゥゥゥと力を入れてくる腕を軽く撫でると後ろから溜め息が聞こえる。

ヴァン君は考え事をする時、私に抱き付いてくる。
理由を聞いたら安心するからだそうだ。
可愛いですよね、本当。


「ふふっ、また悩みごと?今回はすぐに解決出来そう?」
「今度はかなりの長期戦。しかも、相手は物凄い手強い」
「そうなの…大変ねぇ…」
「………俺の大半の悩みはトワだからな」
「えぇ?!何ですって?!」


今、義弟から聞き捨てならない発言が聞こえたのだが空耳ではないよね?!
悩み私?!そんなショックすぎる!!

聞いても、独り言だから気にすんなって言われてしまった。気になりますってかなり。


「ヴァン~!何で教えてくれないんですの?!
私、気になって薬の調合が出来ませんわ!」
「悩みって言ってもトワの悩みは良い悩み。俺がしたいから悩んでるだけ」
「良い悩み?一体、何ですの?」
「そんな難しく考えんなって。良い悩みは良い悩みなんだよ。分かったか?」
「………分かりましたわ」


六割くらい納得出来てないけど。

取り敢えず、「良い」悩みらしいのでポジティブに考えておくことにした。
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