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嬉し涙で前が見えない。

二話目更新。三話目も頑張ります。

私がドハマりしたその携帯ゲームの名前は「FAIRY's princess〜愛するキミ〜」という恋愛ゲームだ。

絵も凄く綺麗で攻略対象の男子は全員奇跡かってくらいの美形軍団。

そして、何より話がキュン死にするくらいヤバかった。


毎日、「ふぉぉ~!!」という奇声を出しながらベッドで凄まじい勢いで悶えていたのを覚えている。


周りの女友達も殆どプレイしていたくらいの空前の「フェアプリ」ブームだった。


しかし、私は攻略対象の男子達よりも主人公ラブだった。

彼女が様々な困難に勇敢に立ち向かい、健気に可愛く頑張っている姿に何度、涙したか。


一人攻略する度にティッシュの箱がすっからかんになった。いや、本当に良いゲームだった。


そして、どのゲームにも必ず悪役という者が存在する。

勿論、この「フェアプリ」にも。


性格が恐ろしい程歪みまくっている悪役。

それがこの鏡に映る「私」なのだ。



「…あの、トワ様…?どうなされましたか…?」



ずっと鏡に張り付いている不審者としか言い様のない私に侍女二人は怯えながら、質問してきた。

そりゃそうだ。さっきまで普通だった令嬢が黙り込んで鏡に張り付いてるんだもんな。


はぁぁぁと長く思い溜め息を吐き出すと、侍女達はビクリと体を震えさせた。



この「トワ・アトリエス」は本当に色々な意味で凄い令嬢だった。

悪役にしておくのが勿体無いとプレーヤーが良く言っていたくらいの才色兼備な人物なのだ。


しかし、見た目に騙されてはいけない。この令嬢はそんじょそこらの悪役を優に越える程の性格の悪さで現実にいたら悲鳴レベルだ。


可愛い主人公に、そんなにやる?!ってくらいのイジメをして最終的には死ぬオンリーなエンド。

攻略対象の男子達に殺されるか他の誰かに暗殺されるという未来しか「彼女」には用意されていないのだ。



「なんということだ…」

「っ、すみません!トワ様!ど、どうかお許し下さいませ…!!」

「何か至らない点があったのであれば今すぐにでも直しますので…どうかお許しを…」



一言発しただけでこの怯えよう。超傷付く…いやまぁ今までの「トワ様」の業績なんですけどね。


深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

この混乱した状態で家族に会うのは危険が大きすぎるし。

一度、整理しなくちゃだ。


取り敢えず第一に彼女達に謝らなくちゃだ…いくらなんでも、この怯え様は可哀想すぎる。



「いえ…少し、目眩がしてしまって。申し訳ないのですが今日の朝食はお断りしたいのだけれど良いかしら?

それと、今まで貴女達に辛く当たってしまってすみません…どんなに謝っても貴女達にたくさん迷惑を掛けてしまった過去は変えられないわ」

「………………ひぇ?」

「……、」



まぁ…ですよね。そうなりますよね。


ポカンと口を開けて私を見ている彼女達に苦笑してしまう。

今まで生きてきた中で謝るなんてことをしなかった令嬢が奇行した後、急に別人のようになったんだから。そりぁ驚きますよね。


でも、謝りたかった彼女達には。

私専属の侍女の二人に、いつも暴言を吐きまくっていた「トワ様」。


今思い出しても酷いことをたくさん言っていた。

二人は本来、とても優秀なのに「トワ様」に言われ続け自信を無くしてしまっている。



(今からでも遅くない…と思いたい。)



今も困惑している二人に今度は出来るだけ優しい笑みを浮かべる。

どこまでこの悪役顔が優しい笑顔を出来るか分からないけど……。



「…今更だけれど、貴女達には本当に酷いことを言ってきたわ。ごめんなさい」

「「ト、トワ様…?!」」



きっちり九十度に頭を下げて謝る。

彼女達に少しでも良いから今の「私」の気持ちが伝わって欲しかった。


ギュッと手を握って下を向いていると、ゆっくりと私の近くまで来た彼女達。

そろりと頭を少し上げると彼女達は泣いていた。

え…?泣いていた…?



「!!!!あ、あの…急に本当にごめんなさい!どうしても貴女達に謝りたかったの…」

「っ、トワ様!やっと…やっと、このように貴女様と話せることが出来て私はとても嬉しいのです!」

「えぇ、トワ様のお気持ち大変、嬉しく思います。こうして震えながらも謝るトワ様を誰が責められましょうか?」



強く握っていた私の手に二人は手を重ねてきた。

どうしよう…嬉しすぎて泣けてきた。



「…っ、ありがとう…私は今までどうかしていたわ。こんなに素敵な人達だったのに…」

「勿体無いお言葉です!トワ様!」

「これからたくさんお話してゆきましょう?トワ様」

「ふふ、そうね…!とても嬉しいわ!!」

「「……っっ」」



三人で笑い合った瞬間、私は決心した。

このまま悪役令嬢として終わるなんて絶対に阻止してやる、と。


取り敢えず、朝食抜きで頭の整理を優先したいと思います。

予想外に少しシリアス気味になってしまいました。あれ。

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