〘ドーンザワ商店よ♡〙
男を見送った後
私は散らばった木くずを拾い集めながら
ガイルへ声を掛けた。
「棚と扉、後日直しに来てくれるって
話がついて良かったね」
ガイルは面倒臭そうな顔のまま
無言で瓦礫を拾い集めている。
「ねぇ」
ふと店の入口へ視線を向ける。
「このお店の名前って…なんて言うの?」
看板を見上げながら尋ねた、その時
〘ドーンザワ商店よ~♡〙
突然、大きな声が響いた。
(……ん?)
私は思わず辺りを見回す。
けれどそこにいるのは
私とガイルだけだった。
「ね、ねぇ…… 今の聞こえた?」
そう尋ねると
ガイルは盛大に嫌そうな顔をした。
まるで
『出やがった……』
とでも言いたげな顔で。
そして何も言わず、顎で上をしゃくる。
「……上?」
看板へ視線を向けた瞬間…
〘どーこ見てんのよぉ♡〙
看板の文字が、ふわりと光り始めた。
〘アタシよぉ♡ ア・タ・シ♡〙
「…………は?」
光はゆっくりと人の形を作っていく。
男とも女ともつかない 不思議な人影。
その光る人形は
ふわふわと宙へ浮かぶと
一直線にガイルの方へ飛んでいった。
〘ガイちゃん!!
相変わらずアンタは愛想がないのよ~!〙
ガイルの周りをクルクル飛び回りながら
看板は大袈裟に両手を広げる。
〘あんな対応するから
変人だ何だって誤解されんのよ~?〙
「……ガ、ガ、ガイル?」
私は看板とガイルを交互に見る。
「看板…… え、なに……話した?」
頭が追いつかない。
「あ、あの…… どちら様?」
パニックになりながら尋ねると
〘きゃ~~~♡〙
光る人形が嬉しそうな声を上げた。
そして………
ぎゅうっ!!
「わっ!?」
いきなり抱き締められる。
〘リールちゃん♡ って言ったわよね~♡〙
光る人形は頬をすり寄せるようにしながら
上機嫌で続けた。
〘あなた最高よぉ♡〙
〘ガイルに物怖じしないで
ちゃんと言い返すし~♡〙
〘そ、れ、に♡〙
看板はピシッと店の入口を指差した。
〘よく弁償の話を出したわねぇ♡〙
〘あれ、アタシ感動しちゃった♡
あなたのこと好、き、よぉ♡〙
「……は、な、れ、ろ!」
ガイルが額に青筋を浮かべながら
私と看板を無理やり引き離した。
バリッ!
「わっ!?」
〘やーだー♡〙
看板はケラケラ笑う。
〘なによぉ♡ ヤキモチ~?♡〙
「違ぇ!!」
〘ガイル~♡ アタシはあなた一筋よぉ♡〙
投げキッスを飛ばしながら
今度はガイルへ抱きつく。
「あー……っ!!」
ガイルは頭を抱えた。
「うるせぇ!!
まだギンのことが終わってねぇんだ!!」
〘あら♡ そうだったわねぇ♡〙
(ギン……?)
私は首を傾げた。
(誰?)




