『リールの気持ち2』〜揺れる心〜
「……ふぅ~」
ガイルのことを考え始めてから、数日
普通にしよう
今まで通りにしよう
そう思えば思うほど
私は普通に出来なくなっていた
目が合いそうになれば
思わず逸らして
手が触れれば、変な汗が出る
肩が少し触れただけでも………
「…………っ」
思わず、押してしまう
(……ガイルも……
ガイルも悪いんだから……!)
だって…
今までと、何も変わらない態度なのに
目が優しい
微笑むことも、前より多くなった
手が当たれば、そのまま握ってくる
そして、先日は………
「…………」
ガイルを押したつもりが
自分のほうがバランスを崩してしまった
「きゃっ……!」
倒れそうになった私を
ガイルが抱きとめる
「…………」
「…………」
そのまま
何も言わずに、抱き締められた
「…………っ」
息の仕方が分からなくなった
心臓が、うるさい
身体が熱い
何か言わなきゃと思うのに
声すら出てこない
結局私は……
その場で、完全に呼吸困難になった
「…………」
そんなことが
ここ数日の間に何度もあった
今までなら…
何とも思わなかったこと
頭を撫でられることも
手を差し伸べられることも
ガイルに触れられることも
全部………
「兄貴みたいな人だから」
そう思っていた
でも———
ガイルの気持ちを
知ってしまった今は
同じことをされても、何かが違う
「…………」
誰かを好きになる
誰かに、好きになってもらえる
それは……
奇跡みたいなことだと、誰かが言っていた
私は……
ガイルをどう思っているんだろう
兄貴のような…
頼れる存在?
家族のような…
大切な存在?
でも……
「…………」
何かが、違う気がする
ガイルが笑うと嬉しくて
少し触れられただけで、心臓がうるさい
側にいるだけで
息の仕方も分からなくなって…
抱き締められれば
息も出来なくなる
こんな、こんな気持ち…
「…………」
これが何なのか、まだ分からない
だからこそ
ガイルの気持ちを知った今
大事に、大事に答えを出さなきゃいけない
ガイルは
答えを急がないと言ってくれた
だったら私も…
ちゃんと、自分の気持ちと向き合わなきゃ
「……ふぅ……」
小さく息を吐いて
私は自分の胸に手を当てた
「…………」
「……おい、リール」
コツン……
後ろから、頭を小突かれた
「……きゃっ!」
驚いて振り返る
そこには
少し困ったような顔をしたガイルがいた
小さく息を吐く
「……俺は、バケモンか」
「い、いや……違っ……
ごめん……」
思わず、俯いてしまう
すると……
クシャッ
頭を撫でられた
「……いや、悪ぃ
俺のせいだな」
ガイルは首の後ろへ手をやる
「…………」
少しだけ困ったように視線を逸らしてから
「……お前を困らせたいわけじゃねぇ」
静かな声だった
「…………だから……」
一瞬、言葉を探すように黙る
そして……
「……もういい、忘れろ」
「…………え…」
ガイルはそれだけ言うと
私の横を通り過ぎていく
「……ガイル?」
呼び止める間もなく
そのまま二階へ上がっていった
「…………」
階段を上っていく背中を見つめる
「……忘れろ……って」
ぽつりと呟いた瞬間
ズキッ……
胸の奥が、鋭く軋んだ
…呆れ…られた……?
答えは…いらない…?
つまり…それは———
もう…好きじゃなくなったってこと…?
そう考えた途端
胸の奥がまたズキッと痛んだ
「…幻滅…されたのかな」
胸へ手を当てる
さっきまでとは違う
今まで感じたことのない
ざわざわした感情
そして…胸の痛みが広がっていく
「……っ……ガイル……」
名前を口にしただけで
涙が溢れそうに…なった。




