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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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『俺が俺になった訳12』〜独占欲〜

リールが回復したと聞いて

ザックとジレンもすぐにやって来た。


快気祝い…

なんて大袈裟なもんじゃねぇが……


気付けば

食卓にはリールの好物ばかりを並べていた


「…………」


笑って、喋って、食ってる


どれも、ほんの十日前までは

当たり前だった光景だ


なのに


「…………」


ちゃんと………ここにいる


そう思うたび―――

何度もアイツを抱き締めたくなった


「…………チッ」


……重症だな、俺も


……………………………


全員が帰ったあと

俺は一人、厨房で片付けをしていた


その時


〘リール~

 落ちるなよ~〙


外から、ボクの声が聞こえた


「………ふん…」


(また、ボクんとこ行ったのか)


手を止め、窓から外を見る


「……ったく」


俺も外へ出ると

ボクの枝を伝って上へ登った


「……リ…」


声を掛けようとして

思わず…止まった


「…………」


月明かりの下

リールが一人、夜空を見上げていた


二つの月から降り注ぐ青白い光が

黒い髪を静かに照らし

風が吹くたび長い髪がさらりと揺れる


「…………」


(……綺麗だ)


何の迷いもなく、 そう思った


もう少しだけ……

このまま見ていたくなった


「…………」


「今日は……満月かな」


「……そうだな」


「…………」


「…………え?」


リールがゆっくりこっちを見る


「ガ、ガイル!?いつの間に!」


「……さっきだ」


驚いて目を丸くするリールを見て

なんだか、胸の奥が温かくなった


「全然気付かなかった……」


「……ふん」


俺は何でもないような顔をして

リールの隣へ腰を下ろした


「歩いて歩いて……

 でも、なかなか帰れなくて


 途中で座り込んだんだけど

 その日は小雨が降っててね」


リールは月を見上げたまま

懐かしそうに話している


「寒くて怖くて……泣いてたら

 兄貴が肩を抱いて温めてくれたの」


「…………」


「その時のこと、思い出しちゃった」


そう言って、リールは小さく笑った


「…………」


……また、兄貴か

俺が何をしても

兄貴と重なるらしい


「…………チッ…」


最初は、それでもいいと思ってた


コイツが俺のそばで笑ってんなら

ここを居場所だと思ってくれんなら


兄貴だろうが何だろうが

それでいいと思ってた


だが…それじゃ足りねぇ…


「…………」


リールが笑えば、抱き締めたくなる


泣いてりゃ、涙を拭ってやりてぇ

怒ってんなら、俺にぶつけてほしい


誰にも言えねぇことも

誰にも見せられねぇ顔も


俺にだけは、全部見せてほしいんだ


十日間、目を覚まさなかった時…


もう一度、俺の名前を呼んでくれんなら

何だっていいと思った


なのに……

いざ目を覚ましたら


もっと…もっと――


その気持ちがデカくなった


……俺を、俺だけを見てろ


そう思った


「…………」


……欲ってやつは、キリがねぇな


大事なもんなんて

二度と作らねぇ方がいいと思ってた


守れなくて、失えば

消えねぇ痛みが…一生残る


だったら最初から何も持たなきゃいい


そう思ってたはずなのに、な


「…………」


隣を見る


月明かりに照らされたリールが

何も知らずに夜空を見上げている


「…………」


ああ……もう、遅ぇんだ


とっくに………

俺の大事なもんになってやがる


デリー……


お前が言ってたのは

こういうことだったのか


大事な奴ができるってのは……


こんなに怖くて、不安で

それでもって、なんだか心配になんだ


面倒だが―――


それでも……


そばにいてほしい

そばにいてぇって思うもんなのか


「…………」


俺は…兄貴になりてぇんじゃねぇ…


コイツにとって

たった一人の男になりてぇんだ


俺のことだけ考えて

俺だけを…見つめてほしい


「……リール」


「んー?」


月を見上げたまま

リールが間の抜けた返事をする


「…………」


俺は肩を抱く腕に力を込めた


今、言わなかったら…

また俺は、言えなくなる気がした


今しかねぇ…


そう思った


「……ガイル?」


リールが、こっちを見る


月明かりに照らされ

俺たけを真っ直ぐ見つめる瞳


「…………」


「……お前が好きだ」


リールの瞳が一瞬揺らぐ


そして…


「……私も好きよ」


一瞬、息が止まった


だが―――


「兄貴みたいに守ってくれて

 ガイルといると、ここが温かくなるの」


胸に手を当てながら

リールは嬉しそうに笑った


「…………」


…はぁ…また、兄貴かよ


情けねぇな

会ったこともねぇコイツの兄貴にまで

…嫉妬するなんざ


これが恋ってやつなのか

悪くねぇ…


「…………」


だが――

もう、それでいいとは思えねぇんだ


兄貴みてぇに安心する奴


兄貴みてぇに守ってくれる奴


そんなもんじゃ

もう足りねぇんだ


「…………」


俺は…

リールに好きだと思ってほしい


お前が触れたいと思うのも


抱き締めてほしいと思うのも


そばにいてほしいと願うのも


全部……俺であってほしいんだ


リールの全部を…

俺のもんにしてぇんだ


「…………」


だが…コイツの鈍さは

お墨付きだ


もう、言葉だけじゃ足りねぇな…


「……そうじゃねぇ」


「……え?」


肩を抱いていた腕に力を込める


驚いたリールの顔が近づく


(……気付いてくれよな)


今度は……

ちゃんと俺の意思で、触れる


そして俺は……


リールの唇に自分の唇を重ねた

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