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楽になりたかっただけなのに、熊みたいな男に拾われました!~物と話せる不思議な店で人生やり直します~  作者: かゆると


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『俺が俺になった訳5』〜トドメを刺したのは〜

「…………ハッ

 デリーに限って……ねぇよ


 ありえねぇ……

 絶対に……」


グルルルルル……


ドシン……


ドシン……


血の臭いを撒き散らしながら

魔獣がゆっくりとこちらへ近付いてくる


隊長は歯を食いしばり、俺の肩を強く掴んだ。


「嘘じゃない!!


 いいか、ガイル!

 今、他の隊員を救えるのは……お前だけだ!」


血を吐きながら、それでも叫ぶ。


「デリーの亡骸は……

 俺が……必ず連れて帰る


 だから今は退け!!」


隊長は震える腕に力を込める


「これは……

 隊長命令だ!!」


「………………」


隊長の手を、ゆっくりと肩から外す。


「……生憎だが」


小さく息を吐く


「俺は今日、非番なんでね」


隊長を真っ直ぐ見据えた。


「……アンタの言うことを聞く道理はねぇよ

 ……俺は、必ずデリーと帰る……!!」


ガバッ!と立ち上がる。


剣を握り直し

魔獣の注意を隊長から逸らすように

その巨体の前を駆け抜けた。


……その時だった


魔獣の脇をすり抜けた、一瞬

紫色のミサンガが目に入った。


「……っ!!」


間違いない


ミリーが


「お守りだから」


そう言って

デリーと俺にくれたミサンガだった。


「デリー………!!」


魔獣の横から回り込もうとする


だが、巨大な腕が行く手を塞ぐ。


近づけない


あと少しなのに。


「邪魔だ……!

 邪魔だコラァァァァァ!!


 さっさと、くたばりやがれぇぇぇぇ!!」


怒りのまま、俺は真正面から魔獣へ突っ込んだ。


グアアアアアオオウ!!


咆哮とともに振り抜かれた腕が

俺の身体を吹き飛ばす。


「チィッ……!!」


宙で身体を捻り、どうにか受け身を取る。


地面へ叩きつけられる寸前

再び伸びてきた魔獣の腕へ、しがみついた。


グアアア!!


グオオウ!!


俺を振り払おうと

魔獣が激しく腕を振り回す。


「ぐっ……!」


振り落とされないよう必死に耐えながら

俺はデリーへ視線を向けた。


その時―――


ピクッ……!


「…………!」


デリーの手が、微かに動いた。


(……今……)


見間違いじゃない


確かに、動いた。


「…………」


生きてる…!


デリーは

まだ、生きてる…!


「……ぜってぇ……」


剣を握る手に力を込める。


「ぜってぇ、生きて……

 俺はデリーと帰る!!」


グアアアアア!!


「クソ野郎!!

 邪魔すんじゃねぇぇぇぇ!!」


魔獣の腕へ剣を突き刺す


そのまま一気に引き抜き………


「うらぁぁぁぁ!!」


ザシュ――!!


振り抜いた刃が

魔獣の手首を切り落とした。


ギャアオオウ!!


ギャアアアア!!


魔獣が悲鳴を上げ

地面を這うように、のたうち回る。


「はぁ……はぁ……!」


(…!!今だ!!)


俺は魔獣の背後へ回り込むと

その身体を駆け上がった。


背中に突き出た無数の棘


その一本に―――


デリーがいた。


「……!!…デリー……!」


すぐにでも助けたい


だが、先にコイツを殺さなきゃならねぇ。


俺は魔獣の頭頂部まで駆け上がり

剣を逆手に構えた。


「はぁ……はぁ……」


切っ先を、頭へ向ける。


「これで……」


手に力を込めた。


「これで、終わりだ!!」


振り上げる。


「くたばりやがれぇぇぇぇ!!」


そのまま剣を突き立てようとした


その瞬間……


ガシッ……!!


「…………!?」


腕を掴まれた。


「な……」


振り向くと

そこにいたのは……


「デリー……!!」


棘からどうにか身体を抜いたのか


血まみれのデリーが、俺の腕を掴んでいた。


「お前……!!

 動くんじゃねぇ!!」


「ヒュー……ヒュー……」


呼吸のたびに、喉が嫌な音を立てる。


「ぐっ……は……」


口元から血を流しながら

それでもデリーは笑った。


「お……俺が……」


「喋んな!!」


「トドメ……刺すって……」


「デリー!!」


「……約束……したろ」


「…………!」


デリーの手が、俺の剣へ伸びる。


震える指で柄を握り……


グッ……


ゆっくりと、握り直した。


「…………」


俺は、止められなかった


昔から、そうだった


俺が傷を負わせて

最後は、こいつが終わらせる。


何度も


何度も


そうやって、二人で戦ってきた。


デリーは震える腕で剣を持ち上げる。


そして………


「……くたばれ」


グサッ――!!


刃が、魔獣の頭頂部へ深々と突き刺さった。


ギャアアアアアアア――!!


魔獣の断末魔が、山中に響き渡る。


やがて、その巨体から力が抜け…


ズズン……!!


地面へ沈んだ。


「…………」


魔獣は、動かなくなった。

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